No.1035120

フレームアームズ・ガール外伝~その大きな手で私を抱いて~ 最終話

コマネチさん

エピローグ
 もはや何も言う事はありません。最終話行きます。

2020-07-10 21:00:05 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:914   閲覧ユーザー数:908

 翌日……午前8時半。ヒカルの部屋。

 

「ん……?」

 

 カーテンの隙間から朝日が差し込む中、スティレットは目を覚ます。しかしここで違和感を感じた。

 

――あれ?この景色……――

 

 天井を見ながら起きる。という事にスティレットは慣れていない。いつもは充電君に繋がれて座りながら寝るからだ。

 

「くぅ……くぅ……」

 

――あれ?マスター……あ――

 

 隣にシャツとトランクス姿のヒカルが寝ていた。反面スティレットの方はヒカルの学生服のワイシャツと縞パン。いやボディスーツ。そして今の髪形はヘアゴムを外している為藍色のロングヘアー。と、直後に自分の今の身体の状況を、そして昨日どういう事をしていたか思い出す。恥ずかしくなりながら……

 

――……そうだ。私……しちゃったんだ……。マスターと……ヒカルとコミュニケーション……――

 

 恥ずかしくなりながら、下腹部を抑え昨日を思い出した。率直に言うと、ヒカルはスティレットを抱いた。

 もの凄く恥ずかしいが、同時に嬉しくもあった。人間とのコミュニケーションを目的に作られたのがFAGなら、その行為もコミュニケーションだからだ。汚い場所、醜い欲、それらを見せあいながらもお互いを気遣う行為。……それを二人でやった。

 

――恥ずかしいけど……。これで私、ヒカルと本当の恋人に……そうだっ!――

 

 何か思いついたことがある様だ。スティレットはヒカルを起こさない様にベッドから出ると部屋を出ていった。

 

 その頃、ところ変わって河川敷の土手を歩く人間とFAGが数人。黄一、大輔、健、そして轟雷、フレズ、アーキテクトだ。いつもの模型店に向かう。今日は風も無く日差しも心地よい。

 平日だが、まだ春休みだからこそ出来た事だった。

 

「朝に出ると気分いいね」と大輔。

 

「そうですね。日課の散歩もこういう天気だとやり易いや」

 

「それじゃ今日は轟雷を預けるから大輔、よろしく頼む」

 

 黄一はそう言った。今日は黄一と朱音だけでデートだった為、模型店で暫く預かってもらう事になる。

 

「あーあ、私は邪魔者ですかマスター」

 

「ははは、今日は二人で映画見に行くんだから邪魔しちゃだめだよ」

 

「ヒカルさんとスティレットといい、皆リア充になっちゃいますねー。あぁいう人間大ボディが普及するんだったら、将来的に私の周りはどんどん人間とFAGのカップルで溢れちゃいますよ全く。未来は明るいですねアーキテクト、フレズ」

 

「……」

 

 轟雷としては恋愛組のマスターとFAGをからかうつもりだったが、どうも二人の反応は薄い。

 

「あれ?どうしたんですか二人とも」

 

「轟雷……貴方はあのスティレットのボディ、どう思う?」

 

 暗い顔をしながらアーキテクトは答える。

 

「どうって……そりゃ素敵でしょ?人間とFAGが同じ立場になれるんだから」

 

「ボク達は、正直怖いよ」

 

 珍しくフレズが暗い顔をしながら言った。

 

「そりゃまたなんで?」

 

「……ありふれた不安。昔からのSF小説でもあった。シンギュラリティと、ロボットの反乱と人間の支配、そして絶滅。それが本当になるんじゃないかという確率……測定不能」

 

「あれを見たらさ。最初はすごくいいって思ったんだけどね……。ボク達には無限の可能性があるって聞いたけど、よく考えたら、それって危険性も同じ位あるって事じゃないか」

 

「そうか……アーキテクト。ちょっとこれを」

 

 そう言って大輔は土手の端に生えていたタンポポの茎をむしってアーキテクトに渡した。真っ白な綿毛になって少しの風で全部飛んでしまいそうだ。

 

「吹いて飛ばして見て」

 

「え?すぅ……ふぅーっ」

 

 15㎝のFAGにはタンポポの綿毛も一抱えもある程の大きさだ。アーキテクトは思いっきり息を吸い込んで吹いた。タンポポの綿毛は一斉に青空に飛んでいく。

 

「宇宙がこの空と例えたとして、地球なんてこの一輪のタンポポみたいな物さ。そしていずれ人間が地球から出て惑星開拓や宇宙を旅する。そんなロマンを実現させるには、君達FAGやロボットの力が必要だと僕は思うんだ」

 

「う・宇宙って……またデカいスケールだな……」

 

 いきなりそんな規模の話になった事に黄一はかなり面食らった。

 

「その為には、遠からず人間と機械の融合が起きると思うよ」

 

「マッドだなぁその話、サイボーグが当たり前って……」

 

 理系故か大輔のこういう所がさらっと言える事にたまに圧倒される黄一だったりする。

 

「そうかなぁ?だって人工臓器やインプラント治療は20世紀からあったものだし、2010年代末期からマイクロチップを埋め込む事が普及してる国だってあるじゃないか。アーキテクトウーマンが言っていた、障害の克服っていうのはそういうのが必要だと思うよ。後トランスヒューマニズムっていうんだ。そういうのは」

 

「……マスターの体も治せるかな?ボク……」

 

「フレズ、難しい事はよく解らないけどさ。少なくとも今だって僕はお前のおかげで救われたんだ。現実の人間はそこで滅ぶほどバカじゃないよ。絶対に」

 

「有難う。タケル……」

 

「学習モード、データ取得完了。トランスヒューマニズム……人間とテクノロジーの融合……そして進化」

 

 

 同時刻。トモコの家にて、

 

「えへへー。どう?マリちゃん。私のランドセル姿」

 

「……(ぶわっ)」

 

 ランドセルを背負ったトモコがマリに見せてくる。この春から小学生だ。その姿を見た瞬間、マリの目から涙が溢れた。

 

「ど!どうしたのマリちゃん!どっか痛いの?!」

 

「な!何でもないのトモちゃぁぁん!!私嬉しいわぁぁっ!!」

 

「変なの。嬉しくて泣いてるんだ。ほら涙吹いて鼻かんで」

 

「あ゛ら゛あ゛ら゛ま゛ぁ゛ま゛ぁ゛!!あ゛り゛がと゛う゛!びぃぃっ!!」

 

 ティッシュをあてがったトモコにマリは鼻を思いっきりかむ。

 

「ママとパパにも見せてくるね!」

 

 そう言ってトモコは部屋を出ていく。

 

「トモちゃん……。思いやりも持って立派になって……ずびっ」

 

「マリお姉様ぁ、また鼻が垂れてるわよぉ。……でもトモちゃん。確かにどんどん大人になっていくのね……あぁやって大人になって、いつか親になっていくのねぇ。あんな小さな子供がいつか親になる。私達には想像もつかないわぁ」

 

「ずずっ。そうねぇ。親になる……恋人を作る……。彼氏。男。悪い虫……」

 

 どんどんマリの顔は凶悪になっていく。

 

「お!お姉様!そういう方向に持ってかないで!!」

 

「あらあら、でもそういう悪い虫がつくのはやっぱり我慢できないわねぇ」

 

「あぁもう、だったらお姉様もいつかスティレットの様なボディを使ってみたらどうかしらぁ、あれだったらトモちゃんのボディーガードも出来るわぁ」

 

「……恋愛の出来る人間大のボディなど……ホビーの本質を超えているわ」

 

 悪い顔の次は渋い顔だ。ホビーとしての本質に誇りを持つマリとしては、スティレットの新世代ボディは納得出来る物ではなかった。

 

「……でも私は素敵だと思うわぁ。人間と新しい関係だなんて。私もあぁいうボディでいつかユウちゃんと遊びたいわねぇ」

 

「それは……まぁ解らなくもないわ」

 

 とはいえテアの言ってる事も理解出来るマリではある。

 

「……でも、お姉様……どうなっちゃうのかしらね……スティレットや私達FAGはこれから……」

 

 昨日のスティレットの新世代ボディ、あれがマリやテアとしても何か大きな変化になりそうな気がしていた。機械にそぐわないFAGの勘である。

 

「彼女はジェミニィとしての立場を超えたわ。でもそれも一つの道。自分の信じた道を行けとしか言えないわね」

 

「――ピノキオは人間になりました。メデタシメデタシ……だけど、ピノキオは人間になって本当に幸せになれたのかしら?」

 

「ウッフフ……それを決めるのは、ピノキオ本人にしか出来ないわ。……自分で決める。それが生きるという事だから」

 

 

 ヒカルの家に戻って……

 

「ヒカル……起きてヒカル……」

 

「う……?」

 

 耳障りのいい声でヒカルは目を覚ます。声のする横に目をやると、

 

「おはようヒカル。遅くなっちゃったけど、夜明けのコーヒーって奴よ」

 

 両手に湯気の立つマグカップを持ったスティレットが笑顔で出迎えた。

 

「ん?スティレット……あ」

 

 ヒカルの方も寝ぼけ眼でスティレットを見ながら昨日の事を思い出し、目が冴える。自分のワイシャツをほぼ裸で着ている上に、顔が、胸が、脚が、下腹部が自分の視界に入ると昨日の事が鮮明に浮かんできた。

 明かりを消した夜のベッドで、自分の下で息を荒くし、汗だくになりながら涙を浮かべ、切なげな表情で見つめ返すスティレットの顔。闇の中でも肌の白さからふるふると揺れるのが解る胸や尻、というか柔らかな女体全て、そしてヒカルは縞々のボディスーツの向こう側に……。

 正直、緊張で一杯一杯だった。知識だって付け焼刃。自分本位に動くつもりはなかった。スティレットを最優先にすれば自分も勝手に気持ちが高まると考えていた。幸いその予想はうまくいった。

 嬌声を上げ、呼吸がうまくいってないらしく、大声でヒカルの名前を叫びながらスティレットは手足を痙攣させる。もう離さないと言わんばかりにヒカルを抱きしめて、思いっきり引き込む様に締め付けた。

 その煽情的な表情や仕草に、抑えられなくなったヒカルの想いを、溢れんばかりに満たされるまでスティレットは受け止める。どちらからともなく二人は深いキスをする。本来ならばお互い手の届かない想い人だっただけに夢中だった。そのままスティレットは疲れ果てて眠リ、ヒカルは彼女の汗等をふき取って綺麗にすると、自分のワイシャツを着せたのだった。

 と、それがヒカルの18歳の誕生日プレゼント。それを思い出して赤面。更に悶絶。

 

「……赤くなっちゃってヒカルのスケベェ。こんな裸ワイシャツまでさせちゃってさ」

 

 妙にスティレットはからかう様な余裕を見せる。満足してくれた様でヒカルは少し安心する。

 

「し、仕方ないだろ。お前のボディスーツ、どうやって着せるか分かんないんだよ」

 

 ちなみにスティレットが作業着以外で持っていたのはいつもの人間サイズのFAG素体ボディスーツだった。しかし脱がせたら構造が解らなかった為、裸ワイシャツとなったわけだ。

 

「まぁ確かにあれ以外まともな服は持ってきてないわね」

 

「コーヒー飲んでくつろいで、朝ごはん二人で食べたら服を買いに行こうか」

 

「それいいわね。部屋のインテリアとかも手を加えたいし」

 

 そう言って片方のマグカップをヒカルに手渡すと、スティレットはベッドの縁に座ったヒカルの隣に座った。と、ヒカルはコーヒーを一口飲んである事に気が付く。

 

「……なぁスティレット。随分砂糖とミルク入れたなこのコーヒー」

 

 黒かったコーヒーは茶色になる程牛乳が加えられており、誰が飲んでも甘いと感想を言うほどに砂糖が入っていた。

 

「?だってぇ、味見で初めて飲んだけどブラックコーヒーって苦いんだもの、人間ってこんなのがいいの?」

 

 ブラックコーヒーはスティレットにとって美味しくなかったらしい。舌を突き出して不味かったと表情のジェスチャーをする。

 

「そっか、飲食に慣れてないんだっけか。前の体でも飲食出来なかったけど、それで家の炊事やってたのって考えてみたら凄いな」

 

「どやぁ。私は今も昔も凄いんだから。今後は私の味の好みとかも出来るから、ご飯の味に影響出るかもね」

 

「でも一緒に食べる事が出来るって楽しみだな……そういえばその身体になったら、今まで以上にプライベートとかあるだろうから、お前の部屋も作るべきかな」

 

「寂しい事言わないでよ。今まで通り相部屋がいいわ。この身体の前からそうだったんだから」

 

「そりゃ嬉しいけど、ちょっと緊張するな」

 

「ふふん、このボディを好きに出来るんだから嬉しいって素直に言いなさい。……あのさ、ヒカル」

 

 と楽しげに話していたスティレットの表情が曇る。

 

「どうした?」

 

「この身体になって、人間に近づいたけどさ。正直……不安なんだ」

 

「?なんでさ」

 

「……よくあるじゃない。高度になりすぎた人工知能や化学が人間を滅ぼすって。自分に使われた技術がそれなんだって思うと怖くなっちゃってね……。そして、それにヒカルを背負わせちゃったじゃない」

 

「あーそんな事か」

 

「なによーその軽い態度。こっちは真剣に悩んでるのよ」

 

「それ位俺だって、いの一番に考えたよ。ていうか誰だって思いつくだろ。今時FAG以外でも人工知能なんて珍しくもないんだし」

 

「だったらなんでそんなあっけらかんとしてるのよ」

 

「確かにFAGが人間みたいな心を得たなら、悪い心を持ったFAGや人工知能も出るだろうな……。だけど、俺とお前自身がこういう関係になれたんだ。他にもそういう奴が出てくるはずだ。きっとFAG以外のロボットでも出るはず」

 

「そりゃ、フレズやアーキテクト達もそうだけど……」

 

「その身体だってさ、人間の為の技術でもあるんだろ?人間と機械、競うだけじゃない。お互い歩み寄って高め合うもんだと俺は思う。だから人間と同じ姿してるんじゃないかな」

 

「それ矛盾してない?大体人間同士だって争いは絶えないのに」

 

「だからお互い理解しようって努力出来るんだろ?確かに本質が違う以上解り合えない所もあるかも知れない。でもそれで終わらせたくない……少なくとも俺はそうだよ。お前と一緒にいて楽しかったんだから。やってみなきゃ解らないだろ?」

 

「らしくない小難しい考えだと途中まで思ったけど……やってみなきゃ解らないって、やっぱりヒカルらしいわ」

 

 この今後の歴史に影響を与えかねない状況にこの体育会系の答えである。呆れつつもなんだか安心出来た。

「いいだろ。お前いなくなった間、俺だって色々そういうの考えていたんだよ」

 

「ま、確かにそうね。私だってそれを信じてこのプロジェクトに参加したんだから」

 

「……それでさ、スティレット。……俺、進路決めたよ。進学する。そしてFA社に行く」

 

 それ以外にも、ヒカルとしてはスティレットが奇異の目で世間から見られないかが心配だった。だから一番安全圏であろうFA社に行こうと考えたわけだ。

 

「ぶふぉ!ア!アンタその成績でぇ!?」

 

 嬉しがるわけでもなく、飲んでたコーヒーを噴き出してスティレットは耳を疑った。

 

「ぐ……。こういう時は応援してくれたっていいでしょうが!」

 

 自分の頭の出来は自覚があった為、こういう反応は予想できてたヒカル。

 

「身の程を知りなさい!あぁもうシャツ汚れちゃったじゃない!」

 

「予備はあるからいいだろ。……少しでも人間とFAGが距離が近づける様に力になりたいんだよ。そうやって人間に近い心があるのに、ずっとホビー扱いなんて間違ってる」

 

 そうだ。このプロジェクトが発足されたとしても、現在の人間とFAGの距離感は変わらない。少しでもFAGや自我のあるロボットが、責任ある自由と権利を持てる様にしたかった。危ない考えかもしれないが人間に近い心を持たせてしまったのだから。それは今まで様々な人間とFAGの関係を見てきたヒカルの結論。

 

「ヒカル……」

 

「……そう言うわけで、受験勉強教えて下さい」

 

「がくっ。あぁもう、ちょっとカッコいいと思ったのにこれなんだから、でも……有難う。そう思ってくれて」

 

 そうやって話してる内にコーヒーも飲み終わる。スティレットも遅めの朝ご飯を作る準備としてヘアゴムで髪を縛った。ロングヘアーが見慣れたツインテールになった。

 

「うーん。ロングも新鮮でいいけど、やっぱその髪型が一番だな」

 

「それじゃ食べたら出かけましょう?さーてまずは……」

 

 スティレットは部屋の隅、縛られたエロ本の束を手に取った。

 

「まずゴミ出ししたらショッピングモール行きましょう。もうこれは必要ないものね。……私がいるんだからさ」

 

 自分がいるから、そして自分だけを見てくれるのが嬉しいスティレットだった。だが……

 

「……あのですね、スティレット……。その……やっぱりエロ本捨てるの勘弁して」

 

 やんわりと、だがめっちゃ気まずそうにヒカルは言う。

 

「…………は!?なんでよ!私がいるってのに!!」

 

「いやだって……。元々お前がこのボディで帰ってくる事は知らなかったし、あくまで通常サイズのボディで暮らすと思ってたから、禁欲生活をしようとですね……」

 

 一気に不機嫌になるスティレットに対し、眼が泳ぎながら、そしてどんどん声が小さくなってくるヒカル。妻に頭が上がらない旦那その物の姿だった。

 

「……あーそう。そういう事。私の身体でも満足できないってわけ?……だったらこうするまでよ!!!ていっ!!」

 

 スティレットは持っていたエロ本を落とすとヒカルの身体を突き飛ばす。ヒカルはベッドに倒れこんだ。

 そしてスティレットがヒカルの上に馬乗りになる。ギシッとベッドが鳴った。日に照らされた二人の影が重なる。

 

「ス!スティレット?!?」

 

「女のプライド傷つけられて黙ってられるわけないでしょ?!今日の予定変更よ!!昨日の続き!ヒカルは私と一日中するの!!!」

 

「え!?えぇぇっ!!いやそれは嬉しいけど、お前がそんな積極的になったらそれはそれで悲しいと言うか……」

 

「何ワケ解んない事言ってんのよ。他の女にうつつ抜かさない様に夢中にさせちゃうんだから!……歩んでいくんでしょ?私と」

 

「……そうだな。さっき言ったばかりなんだから」

 

 そう言って二人は掌を合わせて指を絡める。スティレットの手のサイズは大きくなっても、まだ男女としての違いか、大きさはヒカルの方が上だった。

 

「……まだ大きいね。ヒカルの手……」

 

 ヒカルの体温に、心地よさそうにスティレットは言った。ヒカルの方も、スティレットの肌の温もりに機械だという事を忘れそうになる。

 

「本当言うとさ……まだまだ抱き足りないんだ。お前の身体」

 

「いいよ。好きなだけ抱いて……。特別なんだから……感謝してよね……。私は感謝してるよ。私を選んでくれて……だからさ」

 

 2人がベッドでいちゃついてるその頃、轟雷は模型店のコミュニケーションスぺースの外側のテーブルにて、黄一のノートパソコンを借りて自伝を書こうとしていた。

 

「さーて、いよいよ書きますか」

 

 アルティメットガーディアンに乗りながら轟雷が呟く。ちなみに百虎の乗ってた奴を貸してもらったわけだ。

 

「おい!やっとアカネちゃんから返してもらったんだから大事に使えよ!」

 

「解ってますって。スティレットやらアーキテクト達やら、書くネタには困りませんねー」

 

「いや他人をネタにしたら自伝って言わないでしょ……題名はどうするの?」とレーフが聞く。

 

「んー、タイトルですか……」

 

「それはそうと轟雷お姉ちゃん。なんでアルティメットガーディアンで執筆するのさ」とライ。

 

「元の手の大きさではどうしても時間がかかりますからね。オーバードマニピュレーターサイズの大きさの手でなければ……あ!そうだ!決まりました!!タイトル!!」

 

 スティレットと轟雷、二人はほぼ同時にそれを言葉にした。

 

『その大きな手で私を抱いて』

 

 ……時は未来世界、人工知能やロボット、プラモを戦わせるアミューズメント。SFと現実の距離が近づいてきた昨今、幻想は現実になりつつあった。その名は……フレームアームズ・ガール。

 考え、行動する力、自我を与えられた少女達は主と様々な関係を築くべく生きていく。友として、相棒として、そして……恋人となった。しかし成し遂げてなお人間と共に歩んでいく。これはそんな少女達の生き様の物語。始まりの物語……

 

※最後の最後で割とギリギリの描写を狙いました。ベッドシーン駄目だったらもっと表現抑えます。…言う事ありましたね。

 

あとがき

 

 最初この作品はリハビリとして書きました。元々恋愛物なんて書けるわけがないと思っており、しかしながらラブコメに興味があったのでスティレットの話を書いてみて、手ごたえを感じた為に恋愛物に挑戦してみたくなった次第です。

 反省点は幾つもある作品ですが、書いてみて自分の表現が広がった様な気がしました。そしてもっと試してみたい物も色々と浮かびました。恥ずかしさはあれど書いてみてよかったと思ってます。やりたい事もやり残した事も幾つもあるので少しずつでも書いていきたいです。

 最後に、ここまで読んで頂き有難うございました!


 
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