第二十二章~それは天に昇る龍が如く・中編~
濃霧に包まれた涼州の街・・・、街の住人達はその手に刃物、鈍器を取って、街に潜入した不審者
三人を追いかけていた。だが、いつの間にかその三人の姿は消え、住民達は生気の無い表情でまるで
亡者の様な雰囲気を醸しだしながら、街の中を徘徊していた・・・。そしてとある一軒家の前を次々
と通り過ぎて行く・・・。だが、その一軒家の壁の一部を良く見ると、周囲に比べ盛り上がり、歪んで
見えるのであった。
「・・・まさかこうも早いうちにこれが役に立つとはなぁ・・・。」
「せやなぁ・・・、しかも効果抜群ときとるで・・・。」
「・・・さすがは撫子様、どうやら私は思い違いをしていたようだ・・・。あの方はこうなる事を分かった
いたからこそ、この布を渡したのだな・・・。」
「まぁ・・・、そもそもあたし等がこんな目に合っているのも、あの人のせいなんだけどな・・・。」
「・・・だが、それも我々を信頼しての事だ・・・。」
「・・・どっちかちゅうと・・・、おもしろがっていたような気がするんやけど・・・。」
周囲と異なる壁の正体、それは撫子から渡された家の壁の模様が入った大きめの布を凪、真桜、翠が家の
壁の前で垂らしている偽装の壁だった。そのため、横から風が吹くと布がはためくのが分かる。家の壁に
なりすました三人は周囲から人がいなくなるのをまだかまだかと堪える・・・。
一方、別行動を取っていた撫子、沙和、蒲公英は・・・。
「意外と簡単に街の外に出られたね。」
すでに街の中を通り抜け、街の城壁の外へと脱出していた・・・。
「あの三人が上手い事囮になってくれたおかげですね、きっと。」
「凪ちゃん達、大丈夫かな~。」
「大丈夫ですよ、沙和さん。あの三人でしたら逃げ切れるはずです。そうでなければ、私もあの様な
事、初めからしませんよ・・・。」
「でも撫子さんってすごいよね。あんな事を平然とやってのける・・・、でもそこに痺れる、憧れる~♪」
「なの~♪」
「うふふふ・・・、そんな事を言っても何も出てきませんよ♪」
和気あいあいな三人は、急ぎ華琳達がいる本陣へと向かうのであった。
ようやく周囲に人の気配が消えたのを確認した三人は擬装用の布を下ろす。
「何とかやり過ごす事ができたみたいだな。」
翠は両肩に乗っていた荷をやっと下ろす事が出来た時の様な感じに喋る。
「撫子様達は無事に街の外へと脱出出来ただろうか・・・?」
「うちらがこんだけ大変な目に会ったやでぇ?そうでないと、うちら報われ無いやんか?」
「まぁな・・・。それより、どうやって城に行くんだ?またこいつを使って移動するのか?」
そう言って、布を持ち上げる翠。
「・・・いや、ここは今まで通り人目の付かない道を選んで隠れながら移動しよう。これは今の様な
時に使う。多用すると、その効果も薄れてしまうものだ。」
「せやで、どきどきはらはらは大概にしといてもらわんとな~。」
真桜は広げられた布をささっと素早く折りたたむと道具箱に再びしまった。
「良し、では行くぞ。」
二人に号令をかけ、先を行く凪。そして彼女の後に付いて行く真桜と翠。目指すは街中央に建つ城。
今、この街を舞台に、街の住人全員が鬼の三人のかくれんぼが始まった・・・。
「・・・ふぅ。」
椅子に腰をかけ、項垂れたまま肺に溜まった空気を吐き出すように深い溜息をつく・・・。
俺は本陣の天幕の見張りをしている。これといった異常は無く、夕日が地平線より下へと沈もうとしていた。
後ろを振りむけば、相も変わらず霧、霧、霧・・・。その先を見ることなんか出来やしない。街の中に潜入
した五人がどうなったかなんて分かるはずも無く、もうじき夜になってしまうと言うのに何の反応も無い。
まぁ、まだ一日も経っていないのだから、まだどうこう気にする時では無いだろう。それに何より、自分の
部下三人を自分が信じないでどうするんだ。
「・・・どうしよう。信じようにも、あの三人という理由で逆に不安になっている俺が居る・・・。」
そんな事を今さら言った所で、どうしようもないのは分かっている・・・。だからこそ、俺はまた深い
溜息をついた・・・。
「あらあら、そんなにふか~い溜息なんかついちゃってぇ~。幸せが逃げちゃうわよ、一刀ちゃん♪」
「っ!?貂蝉っ!!」
突然背後から全身に寒気を伴う声が掛かり、反射的に椅子から立ち上がって後ろを振り返るとそこには
にやにやとにやけながら俺を見る貂蝉が立っていた。
「は~ぁい!一刀ちゃん♪愛するあなたに呼ばれて飛び出てじゃじゃーんッ!!!」
「俺は別に呼んだ覚えは無いぞ。」
俺はこいつが調子に乗らない様に、ばっさりと切り捨てて置く。
「あらもう、一刀ちゃんったら、いけずぅ~!素直じゃないんだからっ!」
そう言って、貂蝉は俺に向かってキスを求める様に顔を近づけて来る。俺は横に避けて貂蝉から距離を取る。
「うるさいよ。・・・で、今まで姿を見せないと思ったら、今になって出て来て・・・。ここへ何しに
来たんだ?俺の邪魔をしに来たんだったら、とっと帰ってくれ。」
ただでさえ、今は心配事が多いというのに、これ以上の面倒事は勘弁してほしい・・・。
「今日の一刀ちゃん、やけに冷たいのね~ぇ。ひょっとして・・・、体の調子が良くないのかしら?」
「・・・そう思うなら、俺の体を気遣って俺から離れてくれ・・・。」
そう言って、俺は貂蝉に背中を向けて、離れようとした・・・。
「・・・知りたくない?今、あなたの体に何が起きているのか?」
貂蝉の言葉に、俺は足を止めた・・・。
「・・・お前、何を知っているんだ?」
「あなたが知りたいと思っている事は・・・。」
「・・・・・・。」
俺は周りに他に人がいない事を確かめる。
「・・・教えてくれ。」
俺がそう言うと、にやにやと笑っていた貂蝉の顔は打って変って真面目な顔になる。
「・・・今、あなたの体に起きているのは・・・。」
そして貂蝉は、俺に衝撃的な事実を告げた・・・。
「・・・・・・・・・。」
俺は何も言わず、いや何も言えず、椅子に座り直して項垂れる・・・。
「・・・・・・・・・。」
貂蝉も何も言わず、悲しそうに俺を見下ろしていた・・・。
「・・・治す、方法は無いのか?」
「ある事にはあるけれど、今のままではどうする事も出来ないわ。」
「どうすれば、いいんだ?」
「・・・外史喰らいの暴走を、止める事。」
「それが出来れば、何とかなるのか・・・?」
「そうしない事に、方法は無いらしいわよ・・・。」
つまり、やるしかないって事か・・・。
「・・・この事は、まだ誰にも・・・、華琳にも言わないでくれ。」
「それが一刀ちゃんの望みなら・・・ね。」
そう言って、貂蝉はいつものにやけ顔に戻った・・・。
「北郷ぉ!北郷っ!!いるなら返事しろ!!」
重い空気をぶち壊すかのように、向こうの方から春蘭の大声が聞こえてくる。
「春蘭?ここだ・・・!俺はここだ!!」
俺は椅子から立ち上がると、手を振って自分の居場所を春蘭に教える。
「おぉ、ほんご・・・っ!?」
俺に気が付き、俺の方を見た春蘭は強張った表情に変わる。・・・あぁ、もしかして俺の後ろにいる
貂蝉が目に入ったのか?そう思っていると。春蘭は物凄い勢いで俺の所にやって来る・・・。
「き、貴様は・・・、いつかの肉達磨!!何故貴様が北郷と一緒にいる!」
顔を真っ赤にしながら春蘭は声を荒げて喋る・・・。一方、貂蝉はそんな春蘭を見て、嬉しそうな
表情で腰をくねらせる・・・。
「あらぁ、春蘭ちゃん!ひっさしぶりじゃないの~!常連のあなたが最近来てくれないから、
どうしちゃったのかと心配していたんだ・か・らっ!」
語尾を強調する貂蝉。春蘭のこめかみに血管が浮かぶのが見て分かった。
「誰が常連だ!?誰がっ!第一、勝手に私を真名で呼ぶな!!叩き斬るぞっ!!」
春蘭は腰の剣に手をかける。
「きゃぁ~!!助けて、一刀ちゃ~~ん!!」
そう言って、貂蝉は俺の背中に隠れる。こいつ、春蘭で遊んでいるな・・・。
「それより春蘭、俺を呼び来たんだろ?何かあったのか?」
後ろの貂蝉はスルーして、春蘭が俺を呼びにきた理由を聞く。
春蘭の話によれば、沙和と馬岱が撫子さんを連れて戻って来たそうだ。俺は春蘭と一緒に
華琳達がいる天幕の中へと入った。
「華琳様、北郷を連れてまいりました。」
「ありがとう、春蘭。・・・一刀。」
「ここにいるよ。」
華琳に呼ばれ、春蘭の後ろからひょっこりと出て顔を見せる。するとその場には華琳の他、秋蘭、軍師三人
季衣、流琉もいあわせていた・・・。そして・・・、
「あ、隊長なの~。」
「お~!」
沙和と馬岱は俺を見つけると、俺に手を振る。
「お久しぶりです、一刀様。」
撫子さんは相変わらずの頬笑みで俺に一礼する。
「・・・凪達はどうした?」
俺は凪達の姿を探すが、この天幕にはいなかった。
「それについては撫子達から聞くつもりよ。・・・さて、霞は本陣周囲の警護に回って貰っているから、
これで一応全員集合しているわね。撫子、あなたが見て来た事を話して頂戴。」
華琳がそう言うと、撫子さんは縦に頷き、話し始める。
そして話を始めてから数十分後・・・、撫子さんの話が一通り終わった所で小休止。
「つまり、凪達はあの霧の原因を調べる為に、まだ街の中で動いている?」
「はい。」
俺の質問に撫子さんは二つ文字で返す。
「確かに大人数で動くよりかは幾分か効率は良いかもしれないが・・・、果たしてあの三人だけで
大丈夫なものだろうか?」
「大丈夫ですよ。」
秋蘭の疑問に撫子さんは6文字で返す。
「ま、あなたがそう言うのなら、大丈夫なのでしょうね。」
華琳は撫子さんの言葉を肯定するように言う。本当に信頼しているんだな・・・。
「しかし華琳様、一番に気掛かりなのは街に五胡がいない・・・と言う事です。」
桂花は華琳にそう告げる。確かに桂花の言うとおり、街に五胡がいないというのは意外な事だ。
更に話を聞くと、事態はさほど単純なものでは無いようだ・・・。
「確かに今まで散々こちらにちょっかい出してきたと言うに、何もせずおめおめと帰って行くとは
あまり素直に喜べんな・・・。」
と両腕を胸の前で組んでうんうんと頷く春蘭。
「ですよね~。なんか気味が悪いですよね~。」
春蘭に続く季衣。
「何かの策なのでしょうか?」
季衣の横にいた流琉はそう言って桂花に尋ねる。
「そうでない事を祈りたいけど、恐らくそう見た方が良いかもしれないわね。あの霧の事と言い、街の
様子と言い・・・、いずれも単なる偶然の重なりで片づけるのは少し出来過ぎているわ。」
「やはり、五胡が関係していると?」
撫子さんは桂花に聞く。
「もしそうだとすれば、気掛かりはあの霧が何なのか・・・と言う事になるわね。五胡の仕業とも
取れるけど・・・。」
桂花はそう言っているけど、俺が思うに外史喰らいが関与しているんだと思う。五胡がどういう国かは
知らないけど、連中と何かしらの繋がりを持っている事は間違いないはずだ。だとすれば、あの霧は外史
喰らいが意図的に発生させているのかもしれない・・・。
「霧って・・・そんな簡単に起こせるものなのかな~?」
沙和は頭に?を浮かべて言う。
「きっと水の入ったお鍋を何処かで炊いているんだよ!沙和ちゃん!」
「あっ!なるほど~、季衣ちゃん頭いいの~♪」
「鍋が100個あっても足りない気がするけどな・・・。」
とりあえず二人のボケに突っ込みを入れて置く・・・。
「その辺りの疑問解決は凪達の努力次第でしょうよ。」
「華琳様、念のためにもう一度誰かを街に潜入させましょうか?」
稟が華琳にそう告げると、華琳は少し考える。
「・・・今はまだそうするべきでは無いでしょう。何より、もうじき夜になってしまう。動くのであれば、
明朝。明日、改めて今後の方針を立てましょう。」
「御意・・・。」
稟は華琳に一礼をする。
「撫子。あなたも長期潜伏で疲れているのでしょう。今日は天幕でゆっくり体を休めて置きなさい。」
「ありがとう、華琳。では私はこれで・・・。」
華琳にそう言ってその場から歩きだす撫子さん。俺の横まで来ると、彼女は足を止めて俺の顔を見てくる。
「あら、一刀様・・・随分とお疲れの顔ですね。」
「え、そうかな・・・?」
俺、そんな顔をしていたのか。そう思って、手で自分の顔を確かめる。
「お疲れでしたら、一緒にお休みになりませんか?同じ天幕の下で。」
「え・・・。それって、あなた・・・。」
誘っているのか、この人・・・。そう思っていると、撫子さんは俺の腕を手に取ってさり気なくその
豊満な胸の合間に挟んで来る・・・。うぅ・・・、いかん、この感触に顔がにやけてしまう。
「撫子っ!」
華琳の一括に俺も思わずびくっと反応してしまう。
「きゃー・・・、助けて一刀様ー・・・。」
そう言って、俺の背中に隠れる撫子さん。この人、華琳で遊んでいるな・・・。
「・・・まぁ、とりあえず、だ。沙和、撫子さんを天幕に案内してやってくれないか?」
「分かったの~。」
沙和は撫子さんと一緒に天幕を出て行く。
「ふふっ・・・どうやら、彼女に気に入られたようだな、北郷。今度は如何様な手で陥落させたのだ?」
そう言いながら秋蘭が俺に近づいてくる。
「全く・・・、お前と言う男は節度が無いにも程があるなっ!」
「春蘭、俺は別に何かしたってわけじゃ・・・。」
「まぁ、そんな節度の無い男に気を許してしまったのだよな、姉者は?」
「一言余計だ、秋蘭!!」
「華琳も華琳だよ。あの人も冗談でやっているだけなんだし・・・。」
「冗談?あなたは彼女が冗談だけで言っていると思っているのかしら?」
「・・・違うのか?」
「まぁ・・・、あなたに言った所で仕方のない事でしょうがね、魏の種馬さん?」
「・・・・・・。」
最後に華琳の言葉に俺は何も言えなくなってしまう・・・。
「・・・・・・。」
「あれ、どうしたのたんぽぽ?なんか浮かない顔しているけど・・・。」
黙って何か考えごとをしている蒲公英に話しかける季衣。
「うん・・・、ちょっと姉様の事が気になっちゃって。」
「と、言いますと?」
どういう事か蒲公英に尋ねる流琉。
「姉様・・・、本当はお城に行きたくないんだと、蒲公英は思うんだ。」
「え?」
「そうなんですか?」
二人は意外そうな顔をして蒲公英の話を聞く。
「あのお城・・・叔母様が死んだ場所だから。姉様、二年前にお墓参りに行ったきり、涼州にさえ
足を踏み入れようとしなかったから・・・。」
「あれ、そうなの?でも、たんぽぽは毎年来ているよね、馬騰さんのお墓参りに。ぼくはてっきり
いっしょに来ていて、たまたますれ違っているんだとばっかり思ってたよ・・・。」
「たんぽぽが誘っても何か理由を付けてどっかにいっちゃうから・・・。」
「やっぱり、馬騰さんの事を今も引きずっているんですかね。」
「他にもあると思うけど、一番の原因はそれだってたんぽぽは思っている・・・。」
「そっか・・・、確かに華琳様と話をしている時の翠ちゃん、やけにとげとげしい態度を取るのも
それが関係しているのかな~?」
「・・・でも、それならどうして翠さんはここに来たんでしょうか?」
「姉様、このままじゃ駄目だって思ったんだよ。桃香様を見て・・・。自分もちゃんと前を向いて
行かなきゃいけないんだって・・・。今の姉様、心がどこにも向いていないような気がするんだ。
曹操さんを許して前を見ようとするのに、でも曹操さんを憎んで後ろを見てしまう・・・どっち着かず
な、そんな感じ・・・。きっと、そんな中途半端な自分に決着をつけるために。」
「そうかぁ・・・。」
「翠さん、早く決着つくといいですね。」
「うん・・・。」
それから数刻後、ようやく俺は天幕から外を出ると再び見張りに戻る。
辺りはすでに夜になっていて、今日は新月なのか月が出ておらず、代わりに数えきれない数の星達が
輝いている。
「・・・・・・・・・。」
辺りは寝静まった中、俺は一人考えごとをしながら夜空を眺めていた。
「寝ずの番御苦労さまです、一刀様。」
「あ・・・、撫子さん。」
そこにやって来たのは撫子さんだった。
「お隣よろしいですか?」
「あ、はい。どうぞ。」
丸太を半分に切って作った簡素な長椅子に座っていた俺は横に詰めてもう一人分の余裕を開ける。
そこにするりとすり抜ける様に座る撫子さん。
「休んでいなくていいんですか?」
そもそも彼女は天幕で休んでいたはず、どうしてこんな所にいるんだ?
「はぁ、そうしていたのですが・・・、先程の一刀様の様子が気になってしまって・・・。」
俺は撫子さんの横顔をうかがう。星の光が彼女を程良く照らし、神秘的な雰囲気を醸し出す・・・。
そして彼女の瞳は憂いを帯び、その瞳に俺の精神は吸いこまれそうになる・・・。
「あの、撫子さん・・・?」
ただじっと俺を見ている彼女の真名を呼ぶ。だが、彼女は何も言わず、俺に顔を近づけていく。
「・・・・・・!」
そして彼女の唇と俺の唇が重なる。彼女の温もりと柔らかさが唇を通して分かる。彼女に為されるが
ままに、俺は長椅子に押し倒される・・・。
「な、撫子・・・。」
「私に身を委ねて下さい・・・。私がこの身をもって、あなたを癒して差し上げます・・・。」
俺に圧し掛かる撫子さん。彼女の豊満な胸が俺の胸ではじける・・・。その魅惑に俺はのめり込み
そうになった・・・だけど・・・。
「そう・・・、でもその前に。」
「・・・?」
「その手に隠しているモノをどうにかして欲しいんですけど・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
ビュンッ!!!
「ふっ・・・!」
ドガッ!!!
「・・・っ!」
俺は上に圧し掛かっていた彼女を強引に押し除のけ、彼女から離れると腰の刃を鞘から抜き取る。
「優しい顔をして、中々に乱暴なのですね、一刀。」
押しのけられ長椅子から落ちた撫子さんは長椅子を支えに立ち上がる。その手には何か針の様なものが
指と指の間から飛び出していた。あれで俺を殺そうとしたのか・・・。
「寝台の上でもさぞかし乱暴に振る舞うのでしょうね・・・。」
そう言って、項垂れていた顔を上げる。長い黒髪の合間から見える彼女の視線は氷の様に冷たく、頬笑み
が似合う彼女の姿などそこに無かった・・・。
「目的はやっぱり俺の命か・・・。誰の命令なんだ!」
「・・・それを、あなたにお話しする必要はないかと思います。」
あっさりと俺の質問を切り捨てると、何処から取り出したのか自分背丈ほどの長さの棍棒を両手に取って
俺に襲いかかる。
ブゥオンッ!!!
「ぐぅ・・・ッ!!」
ガゴォオオオッ!!!
俺はその一撃を刃の腹の部分で受け止める。この一撃の重さ・・・、本気で俺を殺す気か・・・。
「くっ・・・!」
自分の一撃を受け止められた撫子さんはすかさず、棍棒の反対側の先端で下をくぐらせる様に、俺の横腹
を狙って一撃を放つが、俺はそれを足で棍棒の先端を受け止める。
「・・・っ!」
自分の攻撃が防がれて驚く撫子さん。隙あり!と言わんばかりに俺は彼女に刃の切っ先を振り下ろそう
とした時・・・。
「駄目よ!一刀ちゃん!その娘はただ操られているだけなの!」
いつからそこにいたのか。突然横から貂蝉が大声で俺に話しかける。
「何だって!?・・・ッ!」
余所見をしていた俺の鳩尾に棍棒の先が叩き込まれ、胃の内容物を吐き出しそうになる。
ドゴッ!!!ドゴッ!!!ドゴッ!!!
そこに容赦なく俺に棍棒による攻撃する撫子さん。俺は体を丸めて攻撃を受け止める。
「伏義との戦いを思い出すのよ、一刀ちゃん!あの時、あなたはどうやって倒したの?」
「な、何・・・?」
あの時は、確か・・・。左拳を奴に叩きこんでその後・・・。
「ッ!!」
ガッゴォオオオッ!!!
俺は咄嗟に刃で棍棒を受け止め、そのまま跳ね返すと撫子さんは体勢を崩し、その隙に後ろに下がって
距離を取る。
「あれをやれって言うのか!?彼女を殺せってそう言いたいのか!!」
俺は貂蝉に怒声を放つ。
「殺す殺さないかは、あなた次第・・・、でしょ~?あなたが曹洪ちゃんを助けたいと思っている
ならば、強く願いなさいなぁっ!そうすれば力があなたの想いに呼応してくれるは・ず・ッ!」
「・・・・・・。」
俺次第・・・か。露仁、南華老仙にも言われた事だ。仕方がない、ここはあいつの言葉を信じるか・・・!
「一刀ちゃん、やっちゃいなさ~い♪」
貂蝉は親指をグッと立てる。俺は縦に頷いた。
「ッ!」
いつの間にか撫子さんは俺が取ったはずの距離を詰め、俺に棍棒の横薙ぎを放つ。
「はぁあッ!!!」
「くっ・・・!」
ブゥオンッ!!!
ガギィィイイッ!!!
ブゥオンッ!!!
ガゴォオオオッ!!!
ブゥオンッ!!!
ガッゴオオッ!!!
俺は棍棒の一撃を片手で受け止めつつ、左手に意識を集中させる。体の中央で生じた力を左拳にそして
撫子さんを助けたいと念じながら、注ぎ込むイメージを頭に描き、ギュッと拳を握りしめる・・・。
「一刀様、お覚悟承知願います!」
想いと力を注ぎ込み続けると、次第に俺の左拳は青白い光に包み込まれ、熱くなっていく・・・。
ブゥオンッ!!!
「はぁあああッ!!!」
ブゥオンッ!!!
撫子さんの棍棒の振り下ろしより遅れて俺は左拳を彼女に放った。
ドゴォッ!!!
先に一撃を入れたのは撫子さんではなく、俺だった。
「ぐふっ・・・!」
下腹部にめり込んだ俺の拳に嗚咽を漏らす撫子さんの体から青白い炎の様なものが上がるのと一緒に
黒い何かが、よくを凝らして見るとそれは序列化した黒い文字だった・・・。その文字が彼女から抜けだし、
青白い炎に焼かれ次々と消滅する・・・。文字が完全に抜け出し、炎に焼かれるとその炎も消える。
そして撫子さんは気を失い、俺にもたれ掛かってくるのを受け止める。
「やった・・のか?」
俺は貂蝉に尋ねる。
「ええ。カッコ良かったわよ、一刀ちゃん♪」
そして華琳達がこの事態に気付き、駆けつけて来たのはその直後だった・・・。
俺は事の一部始終を撫子さんが眠っている天幕の中で華琳達に話した。
「そう・・・。まさか撫子が・・・。」
俺の話を聞いて、信じられないと言う顔をしながら華琳は椅子に腰をかけ、眠っている撫子さんの顔を
見ていた・・・。
「きっと、撫子さんは早い時期から外史喰らいに操られていたんだと思う。そう考えれば、五胡の今まで
の動きにも説明が付く。」
「魏領内を歩き回っている彼女なら、そういった情報を知る事が出来るものね・・・。」
「では、五胡と外史喰らいは裏で繋がっている?」
やや疑問形で話す秋蘭。
「そう見て間違いないと思う。撫子さんから得た情報を外史喰らいが五胡に流していたんだ。」
「なら、今回の件もそうだと言うのか?」
頭をひねりながら喋る春蘭。
「撫子が関係している以上、外史喰らいが動いているのは確かな事・・・。それにしても一刀、さっきの
話からしてあなたは撫子を疑っていたようね・・・。どこで疑い始めたのかしら?」
「沙和の話を聞いていて、街の人間達の様子が変だったって言うのに、彼女だけがまともだったのが
どうも変だなと思って・・・。」
「成程・・・。確かに疑うべきだったかもしれないわね。私とした事が・・・。」
「じゃあ、撫子様が凪ちゃん達を囮にしたのも誰かに操られていたからなのかな~?」
「・・・そうかもしれない。凪達をはめる為に、外史喰らいがそう仕向けたのかもな。」
沙和の言う通りなら、街の中にいる凪達は非常に危険な状況にいる事になる。
「「「・・・・・・・・・。」」」
「・・・?」
何だ、三人揃って黙ってしまったぞ・・・。
「もし、そうでなくても・・・きっと彼女はそうすると思うわ。」
「どうして?」
「どうもこうも・・・、それが彼女なのだよ、北郷。」
「うむ・・・。」
何だそれは・・・。彼女はそこまでにフリーダムなのか?俺は眠っている撫子さんを見る。
「まずは撫子が起きるのを待ちましょう。彼女から敵の事を聞き出して・・・。」
「残念だけど、彼女は起きないでしょうね。」
華琳の話を遮って天幕に入って来たのは貂蝉だった。
「また貴様かっ!!一体何をしに来たんだ!!」
貂蝉が入って来るや否や怒る春蘭。
「おや貂蝉ではないか。」
一方で知り合いに久し振りに会ったような感じで声をかける秋蘭。
「あら~、秋蘭ちゃん♪」
「しゅ、秋蘭・・・。お前、この金肉達磨を知っているのか?」
「・・・?姉者も知り合いでは無いのか?」
「誰がこんな気持ち悪い奴と知り合いなものか!!いくらお前でもそれは聞き捨てられないぞっ!」
「・・・そうだったのか?私はよく貂蝉の店を利用しているのだが・・・。確か今日姉者が穿いている
下着も彼女(?)の店で買ったものだったはずだぞ。」
気のせいか・・・、彼女の部分が若干疑問形になっていたような・・・。
「な、何だと!?本当か、秋蘭!!」
「あら~ん、春蘭ちゃん♪さっきはあんな事を言っていたけど、あれって照れ隠しだったのね。
うふふ~、このて・れ・や・さ・ん・♪」
「えぇ~いっ!!気持ちの悪い喋り方をするなぁっ!!!そこになおれ!今度こそ、その身を三枚に
おろしてやる!!」
そう言って春蘭は腰の剣を鞘から抜こうとする。
「止めろ、春蘭!気持ちは分かるが落ち着けって!」
俺は本気で貂蝉を三枚おろしをしようとする春蘭を抑え込む・・・。
「止めなさい、春蘭。それはともかく、さっきの話、どういう事かしら?」
華琳は脱線した話を戻そうと貂蝉に声をかけると、貂蝉は華琳に顔を向けた。
「彼女は・・・、いえ彼女の魂は今この体に無いの。空っぽなのよ。彼女の魂は、彼女を操っていた人
の手の内にあるの。・・・恐らく、彼女から情報を引き出せなくするために、向こうがやったのでしょう
ねぇ~。」
「・・・つまり、撫子は一生眠り続けると?」
「その人が彼女の魂を解放するか、もしくはその人を倒さない限りはぁ・・・。」
操る・・・か。今度の外史喰らいの『分身』は人を操る事が出来るって事か?そうだとすれば五胡や街の
住民達はその分身によって操られているのか・・・?
「そいつが何処にいるのか・・・。お主には分かるのか?」
秋蘭はその分身の居場所を貂蝉に尋ねる。
「恐らくは・・・、あの霧に包まれた街の中にいるでしょうね。」
「ちょっと待て!今あの街には凪達がいるんだぞ!!危険では無いか!?」
春蘭の言う通りだ。もしかしたら、すでに奴等の毒牙にかかっている可能性も・・・。
「華琳・・・、俺も街に入る。」
「駄目よ。」
俺の言葉を華琳はばっさりと切り捨てる。
「だけど・・・!奴等が関わっているのなら、俺が行かないと・・・!」
「一刀、私は別に行くなとは言っていないわ。朝が明けるのを待ちなさい。朝が明けたのならば、あなた
は沙和と馬岱を連れて街へと向かいなさい。」
「華琳様・・・!」
華琳に意見しようと口を開く秋蘭。だが、それを華琳は彼女の前に手を出してそれ以上喋らせなかった。
「一刀、沙和。あなた達は明日に備え、先に休んでおきなさい。いいわね。」
「分かった。」
「分かったの~。」
華琳に言うとおりに俺と沙和は自分の天幕へと戻るために、撫子さんの天幕から出て行った・・・。
「華琳様・・・。あの様な事を言って良かったのですか?」
「仕方がないわ。あの様子だと、行くなと言っても勝手に行ってしまうでしょうよ。だったら、最初から
許しておいた方が幾分かましだもの・・・。」
「そうではなくて・・・。」
「何が言いたいのかしら、秋蘭?」
「・・・無礼を承知で発言します。華琳様、北郷の事で何か隠しておりませんか?最近の華琳様は北郷を
何処か不安気な様子で見ている時があります故に・・・。」
「・・・・・・。」
「そ、そうなのか、秋蘭・・・?」
「姉者、すまないが少し黙っていてくれないか?」
「お、おう・・・。」
「どうでしょうか、華琳様?」
「・・・・・・・・・。」
結局、華琳は黙ったままで話はそこで終わってしまった・・・。
そして翌日・・・。
「なぁ・・・、あたしの気のせいかもしれないんだが、城に近づくにつれて霧がどんどん濃くなって
いる様な気がするような・・・。」
「何や翠?お前もそう思っっておったんかい?」
「え・・・。じゃああたしの気のせいじゃないのか?」
「あぁ、どうやら私達の考えは間違っていないようだ・・・。」
そして凪は家と家の間の細い道から広い大通りに、周囲に注意しながら出て行き、足を止める。
真桜、翠も凪に後ろで足を止めた。
「この先を真っ直ぐに行けば、城の城門に辿り着く事が出来る・・・。」
そう言って、凪は霧の向こうに指をさした。
「やっとかいな・・・。何かここまで来るのに随分時間を食ってもうたなぁ~。」
真桜はうーんと背中を伸ばして、ポキッ、ポキッ、と音を鳴らす。
「隠れながら進んでいるんだ。それは仕方がない事だ・・・。」
「・・・この先を行けば、城・・・か。」
一人ぼそっと喋る。
「何や翠?まさかここに来て尻込みしとるんか?」
「ば、馬鹿にするなよ!今更そんな事するはずがないだろ!」
「よし。ならば行こう。まだ周囲に人がいるかも知れない。注意して進もう。」
「あぁ・・・行こう。」
そう言うと、翠は止めていた右足を前に出した・・・。
シュルルルッ!!!
「え・・・っ!?」
前に出した右足に違和感を感じた翠は視線を下に移し確認しようとした。
「うぉあっ!!」
だが、その前に彼女の右足が前に引っ張られ、翠は仰向けに倒れる。
「翠っ!!」
倒れた翠の手を取ろうと凪は手を伸ばしたが、彼女の体はまた前に引っ張られてしまう。
「うあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・っ!!!」
凄まじい勢いで霧の中へと消えて行く翠。彼女の声が次第に小さくなっていき、ついには
聞こえなくなってしまった・・・。
「凪!この先にあるんは・・・!」
「城だけだ・・・!」
「行くで、凪!翠を助けんで!」
「ああっ!!」
二人は翠が消えた先へと走り出した。
「気味が悪いくらいに静かだな・・・。」
沙和、馬岱と共に街に入った俺は、街の第一印象を口にすると、本陣を出る前に稟から手渡されたこの
街の見取り図を目の前に広げ、現在地と問題の城の位置を確かめ、その経路を一通り頭に入れる。
「お・・・。」
俺は咄嗟に通りの角に身を隠し、通りの向こうの様子を窺う。そこには街の住民と思われる人間が数人が
うろうろと徘徊していた。
「気を付けて、隊長。あの人達、私達を見つけたら容赦なく襲いかかって来るの。」
俺の後ろにいる沙和が小声で俺に話しかけて来る。
「分かっている。よし行くぞ、二人とも。」
「「おぉ~・・・。」」
「撫子・・・。」
「・・・・・・・・。」
眠り続ける従姉の横で座って看病している華琳。彼女の事も気掛かりであったが、それ以上に彼の事が
気掛かりであった・・・。
「・・・・・っ。」
華琳に不安が駆け巡り、その不安から両手の平が汗で湿る・・・。
―――さよなら、愛していたよ・・・かり、
「・・・っ!」
あの時の記憶がフラッシュバックして彼女の脳裏に浮かび上がるのを、華琳は首を横に振って掻き消そう
とする。
「何をしているのかしら、私は・・・。」
自分の心に素直になれない自分が歯痒くて仕方がない・・・。今自分がしている事は自分の心とは正反対の
事をしている。結局、自分はあの時から何も変わっていないのだと、切に感じる。分かっているはずなのに、
このままではまた、彼が自分の前からいなくなってしまう・・・。何の根拠も無かったが、心の中でそうなる
事を確信している・・・。そう思っているのに、自分はこの国を守るために、彼を犠牲にしようとしている
・・・。華琳は今、覇王と少女の間に挟まれ、ジレンマに陥っていた・・・。そんな時、天幕に桂花が血相を
変えて入って来た。
「華琳様っ!大変です!!」
「桂花、何かあったの?」
「はっ、霞の隊が西方面、東方面より五胡と思われる砂塵を発見したとの報告がっ!」
「翠~~~っ!!!」
濃霧の中に姿を消した翠の真名を叫ぶ真桜。幸いな事に周囲に街の住民達がいなかった。
「真桜、あまり大きな声を出すな。」
「分かっとるがな。せやけどそんな余裕、うちにはあらへんで。」
翠を追って城に急ぎ向かう凪と真桜。そして、次第に濃霧の向こうに大きな影が現れる。
その影は近づけ近づくほどその輪郭がはっきりとしていき、その姿が露わになっていく・・・。
「・・・っ!?」
「な、何やねん・・・、ありゃあ!!」
二人は思わず足を止めてしまう。彼女達の目に入ったのは、変わり果てた馬騰の城であった・・・。
「またいるな・・・。」
俺は家の角から通りの様子を窺うと、そこにはまたしても街の住民達が徘徊していた・・・。
「どうしようか、北郷さん。今度は隠れられそうな場所なんてないよ・・・。」
「隊長、別の道から行けないの~・・・?」
「そうしたいのは山々なんだが・・・、城に行くにはここを通るしかないんだよな~・・・。」
上手い事、あの住民達がいなくなってくれればいいんだけど・・・。なら、ここは一つ俺が囮に・・・。
「ん・・・?」
俺は通りに耳を傾ける。
「どうしたの、隊長・・・?」
「しっ・・・!黙ってろ・・・。」
俺は目を閉じて聴覚に神経を研ぎ澄ませていく・・・。霧の向こうから何か・・・、音が聞こえてくる。
何の音だ・・・?こっちに近づいて来ている・・・。
「この音は・・・。」
聞いた事がある・・・。俺はこの音を記憶の中から探し出す。決して昔の事じゃない・・・、最近聞いた
音だ・・・。・・・馬の走る足音・・・、だがこの重量感は・・・かなり大きい・・・。
「・・・まさか。」
俺はあの姿を頭に思い描く・・・。そして、その姿が完全になった時。
ブゥオオッ!!!
濃霧の中から、その姿を模した実物大が勢いよく飛び出して来た。
「・・・ケンタウロスッ!」
俺は霧から飛び出してきたそいつの名を口から零す。
ブォウンッ!!!ブォウンッ!!!ブォウンッ!!!ブォウンッ!!!
ザシュッ!!!ザシュッ!!!ザシュッ!!!ザシュッ!!!
「ぶぎゃぁ・・・!」「ぎえぇええ・・・!」「ぐぶぅ・・・!」「んげぇ・・・!」
ケンタウロスは両手に携えた大型の槍と戟を使って、通りを徘徊していた住民達を邪魔といわんばかりに
容赦なく薙ぎ払っていく。鮮血が通りを、家の壁を濡らし、無残に切り裂かれた体は地面に転がる・・・。
「二人とも、ここを離れるんだ!」
「わ、分かったの!」
「分かった!」
こっちに近づいて来るケンタウロスから逃げようと、二人に促し、来た道を戻ろうとした。
ブゥオオッ!!!
「なぁっ!!」
俺達の頭上を大きな影が通り過ぎる・・・。そして、その影は俺達より前に飛び出し、俺達をこれより
先に行かせないと、立ちはだかった・・・。俺は刃に手をかけながら、二人の前に出る。
「隊長っ!」
「行けッ!!こいつの狙いは俺だ!!ここは俺に任せて・・・早く凪達の所に行くんだ!!」
「分かったの!たんぽぽちゃん行こうなのっ!」
「えっ!でも・・・。」
「沙和っ!馬岱を連れて、早く行くんだっ!!」
翠の行方を追う凪と真桜、麒麟(一刀達はケンタウロスと呼んでいる)と再び対峙する一刀、
華琳達に襲いかかる五胡の大軍団・・・。濃霧に包まれた街を舞台に、事態は急速に変化し、
一気に収束へと向かおうとしていた・・・。そして、この戦いを裏から操っている道化師は
この事態を観客席から眺めているのであった・・・。
Tweet |
|
|
27
|
4
|
追加するフォルダを選択
こんばんわ、アンドレカンドレです。
何だか、また台風が来るようですね。そのせいか今日は雨と風が強かったです。だから学校が終わったらすぐに帰って、小説と挿絵を描いていました。正直挿絵描くの大変でして、止めようかな、なんて思ったり・・・、でもそれだと何だか負けた様な気分になって嫌なので、今回もちゃんと描きました。
と言う訳で、真・恋姫無双 魏・外史伝 第二十二章~それは天に昇る龍が如く・中編~をどうぞ!!