No.102539

~薫る空~35話(拠点:薫√vol.2)

薫る空35話。
拠点フェイズで、最初は薫から行きます(`・ω・´)

書いてみて分かったこと。
オリキャラの拠点は基本シリアスでいくかもしれないw

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2009-10-22 18:27:15 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:4650   閲覧ユーザー数:3999

 

 

~side薫~

 

 

 

 ………………。

 

 ”ん………”

 

 沈んでいた意識が浮き上がってくる。夢さえ見ないほどの深い眠りから、徐々に浅くなっていく。

 

 でも、まだ目を覚ますことはない。目の前は真っ暗で、ようやく夢を見る領域にたどり着く。

 

 自分でもあきれるほど暗い夢だ。景色なんてあったものではなくて、とてもじゃないけど笑えない。

 

 歩いてみる。足を前にだす意識。だけど、進んでいるのかはわからない。

 

 ”………っ……っ…”

 

 そんな事を繰り返していると、誰かの声が聞こえた。嗚咽の混じった泣き声。

 

 もうすこし、歩いたつもりの行動を繰り返すと、次第にその声は近くなっていく。

 

 ”っ……………ぅぁぁっ……っ”

 

 号泣。そういえるくらい、泣いていた。

 

 ”…………なにしてんの、人の夢で”

 

 あたしは話しかけてみた。暗くて形すら分からないそれに。

 

 ”――っ!………な……なんで……っ”

 

 こっちが聞きたいことを泣き声で聞いてくる。驚いているのか、振り返ったような動きが見えた。まだ、顔ははっきりと見えない。

 

 あたしはひどく沈んでいた。眠いのか、ただ落ち込んでいるだけなのか。彼女が慌てていても、ずいぶんと冷めていた。

 

 ”…………まぁ、なんでもいいや”

 

 途端になんだかどうでもよくなった。

 

 ”ぁ……ま、まってよ!”

 

 踵を返すと、彼女は呼び止めてきた。

 

 ”――ん?”

 

 ”…………なんで、ここに…”

 

 ”知らない。夢なんでしょ”

 

 やっぱり冷めていた。理由は分からない。こんなに冷え切った意識で人と向き合ったことなんて今までなかった。

 

 ”違う……。ここは……”

 

 ”違う?”

 

 ”だめ………二人ともこっちに来ちゃ……………戻って、薫!”

 

 ”え………な、何?あ、ちょ、ちょっと!?”

 

 背中を思い切り押されて、あたしはその暗い場所を追い出された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 光が広がって、瞼越しに、あたしは陽光を受ける。

 

【薫】「う………ん……」

 

 苦しみながら目を開けてみれば、そこに在ったのは天井だった。まだ眠っている体の悲鳴を聞きながら、あたしは寝台から身を起こす。

 

 変な夢。おきて最初に考えたことはそれだった。

 

 立ち上がって、天幕から出てみると、既に幾人かの兵が忙しそうに駆け回っていた。

 

 寝ぼけた頭を回転させながら、現状を把握。

 

 そうだ、汜水関を陥落させて、一時的に休暇になっているんだった。

 

 それでも、働くものがいなくなるわけもなく。

 

【薫】「はぁ………んっ…」

 

 両手を空へと伸ばして、背筋を伸ばす。ぱきぱきと骨のなる音。一気に脱力してみれば、スッキリとした開放感に包まれる。

 

【薫】「よっし…………何しようか」

 

 よく考えなくても、こんな砦で休みの日にやることなんてあるはずも無い。仕事なんて以ての外だ。

 

 しかし、実際は仕事以外やることがあるはずもない。仕方なく、あてもなく辺りをぶらつく。

 

 しばらく歩いていると、すごく空しさに苛まれる。

 

【薫】「やばい……………あたし、すんごい暇人みたいだ」

 

 呟いてみたが誰がどう見ようと、まごうことなき暇人だ。吹き抜ける風だけが独り言に答えてくれる。

 

 ボーっとしていても仕方が無い。諦めて仕事でもしようと、踵を返す。

 

【一刀】「――わっ!!!!」

 

【薫】「きゃぁぁっ!!!」

 

 振り向く瞬間、その声に驚いてしりもちをついてしまった。

 

【薫】「な………な、なに、何してんのよ!」

 

【一刀】「いつかのお返しだ。」

 

 ビシィ!っと指をこちらにさして、一刀は威張り散らしている。

 

【薫】「いつかって…………あんた、まさかあの時華琳にちくったの、まだ………」

 

【一刀】「俺って意外と根に持つタイp「持ちすぎでしょ!!あれいつの話だとおもってんのよ!」………最後まで聞いてからツッコめよ」

 

 ソレは一刀とあたしがまだ曹軍にはいって間もない頃。いたずらしてくる一刀との追いかけっこの末あたしの勝利で終ったあの時のことらしい。

 

【一刀】「まぁ、気にすんな。可愛い声も聞けたしな」

 

【薫】「か、可愛いって……」

 

 真顔で何を言うか。大声で驚かしてきたと思ったら、次はこれで…相変わらずよく分からない奴。

 

 

 

 

 

 

【薫】「って、あたしよく考えたら損ばっかりじゃない」

 

【一刀】「へ?」

 

 そうだ。いきなり驚かされて、変な声も聞かれて、あたしにいいことなんてひとつもない。

 

【薫】「一刀もなんかしてよ」

 

【一刀】「な、なんかって何かな………てか、微妙に笑顔が怖いんですが、薫さん?」

 

 立ち上がって、あたしは一刀のほうへ歩み寄る。一刀はじりじりと後ろへ下がるが、それ以上にあたしが早く歩くので、次第に距離は詰まっていく。

 

 なんだろう、ものすごく楽しい。

 

【薫】「何もしないなら………こうだっ!!」

 

 ある程度近づいたところで、復讐の後ろ回し蹴りを一刀に放つ。

 

【一刀】「うぉぉっ!!」

 

 ――しかし、足に何かが当たる感触はなかった。

 

【薫】「え…」

 

【一刀】「あぶねぇ~…。お前な!今ちょっと本気だったろ!」

 

【薫】「え、あ、うん………」

 

【一刀】「うんじゃない。馬鹿」

 

【薫】「あだっ」

 

 頭頂部に拳骨がふってきた。

 

【薫】「何するのよ!」

 

【一刀】「うっさい、お前ちょっとは手加減覚えろ。」

 

【薫】「あだっ!痛い!二回も殴った!!」

 

 計三回。

 

【薫】「頭悪くなったらどうするのよ~。こっちは死活問題なんだから…」

 

【一刀】「あぁ、それもそうだな…わるかっとぅわあああっ!!!」

 

 隙を突いて攻撃してみたが、また…よけられた。

 

【薫】「なんでよけんのよ!ってか、よけれるのよ!」

 

【一刀】「よけるだろ、普通!」

 

 一刀のくせに。琥珀との鍛錬、本当に効果でてるんだ。

 

 前はよけられるなんてなかったのに。

 

【薫】「うぅ~………むかつく~…」

 

【一刀】「ふふん」

 

【薫】「むっかーー!!絶対蹴ってやる!!!」

 

 逃げ出す一刀を走って追いかけて、追いついてはとび蹴り。

 

【薫】「とりゃっ!」

 

【一刀】「おっと」

 

 しかし、その蹴りは地面に突き刺さるのみ。

 

【薫】「むぅ……」

 

【一刀】「あっはっはっは。まぁ、精進したまえ薫君」

 

 ぽんぽんと頭をなでられる。

 

 屈辱の極みだが、どうしても一刀に攻撃を当てられない。

 

 

【薫】「はぁ………」

 

【一刀】「お、もういいのか」

 

【薫】「なんか馬鹿らしくなった。」

 

 立ち上がって、振り向く。

 

【一刀】「どっかいくのか?」

 

【薫】「別に~、暇だし。そこらへん歩いて回ろうと思っただけ」

 

 それだけ言って、あたしは歩き出す。なんだか最近いろんなものに振り回されて、少し疲れてるのかもしれない。ここは周囲を山が囲んでいるらしいから、少し外へ出てみようかな。

 

【薫】「………………。」

 

【一刀】「………………。」

 

【薫】「………なんで、ついてくるの?」

 

【一刀】「いや、俺も暇だし。それに外いくなら一人だとあぶないだろ」

 

 それはそうかもしれないけど………

 

 まぁ、いいか。

 

 勝手に脳内で納得して、あたしは一刀と一緒に、近くの山へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~side一刀~

 

 

 

 

 汜水関へ入城して翌日。昨日まで戦をしていたのが嘘みたいな朝だった。

 

 眠い目をこすって、あくびをしながら、俺は外へとでていた。

 

 今日は一部を覗いて幹部クラスは皆休みをもらっている。だからといって天幕の中でごろごろしているのもどう

 

かと思い、外へ出てはみたが。

 

【一刀】「……なにすっかな」

 

 暇だった。

 

【一刀】「………ぉ」

 

 しばらくボーっとしていると、前方に薫の姿を発見した。

 

 すると、頭の中にこの前の事が浮かび上がる。

 

 

 ―――”驚かないで………来るよ、敵が”

 

 

 頭を振って、一度思考を中断。

 

【一刀】「薫…………。」

 

 気がつくと俺は、薫の名を呟いていた。

 

 考えるのをやめたとはいえ、どうしても気になる。

 

 薫から目が離せない。気になってしょうがない。

 

 話しかける?……どうやって。

 

 直球で聞いたところで拒絶されるに決まっている。だけど、じゃあどうする。

 

 考えて、考えて。俺が取った行動が――

 

【一刀】「――わっ!!!!」

 

【薫】「きゃぁぁ!!」

 

 われながら、なんと幼稚な。

 

 小●生か。

 

 しかし予想通り、薫は少し怒り気味に食いついてきた。

 

 それにしても、言い訳もかなり苦しいものになってしまった。いくらなんでも時間が経ちすぎていたか。

 

 薫から蹴りをもらうが、予想以上に体が軽くて、あっさりと回避できた。

 

 

 仕返しに、小突いてみる。

 

【薫】「あだっ」

 

 頭のてっぺんを押さえて、薫はうずくまる。

 

 む、ちょっとかわいいぞ。

 

 その後、二度三度小突いてみる。

 

【薫】「あだっ!痛い!二回もなぐった!」

 

 やはり、うずくまる薫はどこか小動物的なものを思わせた。

 

 さすがにやりすぎたか、薫は俺を追いかけまわし、蹴りつけようとするが、すべてよける。

 

 通じないことを悟ったのか、薫は曇った顔で踵を返して、何処かへ向かう。

 

【一刀】「どっかいくのか?」

 

 とっさに聞いてしまった。

 

 薫は暇だから、そこらへんを歩くだけと言った。

 

 だけど、俺はまだ薫と話をしないといけないような気がしたから。断りを入れることもなく。

 

 最初こそなんでと聞かれたが、特に拒絶はされなかった。

 

 OKだと勝手に理解して、俺は薫の後についていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山へ入ると、木の葉の影に包まれ、空気は少し寒いくらいだった。

 

【薫】「………………」

 

 隣を歩いている薫を見ると、少し震えているような気がした。

 

 まあ、肩からばっさり袖が無いような服ではここは寒いだろう。

 

【一刀】「ほら」

 

【薫】「……え」

 

 あからさまに震えが大きくなってきているものだから、俺は見ていられず上着をかけた。

 

【薫】「なんで、あんたが寒いんじゃ……」

 

【一刀】「前にも言ったが、俺は暑がりだ。涼しいくらいだよ。」

 

 ほんとは少し寒いけどな。

 

【薫】「なんか既視感」

 

【一刀】「まったくだ。」

 

 暗めの山道を歩いていると、少し足が疲れてきたのか、薫の歩くペースが落ちてくる。

 

【一刀】「大丈夫か?」

 

【薫】「うん」

 

 軽く答えてはくれるが、実際はつらくなってきているんだろう。

 

【一刀】「ん」

 

【薫】「………え……手?」

 

【一刀】「ほら、つかむんだよ」

 

【薫】「あ、うん」

 

 少し強めに言うと、薫は俺が差し出した手を握った。

 

 そのまま二人で上っていくと、前のほうから水の音が聞こえてきた。

 

 さらさらとしたものではなくて、大量の水が落下する音。

 

 歩を少し速くして、俺達はその場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

【薫】「わぁ………」

 

【一刀】「滝…か」

 

 予想はついていたが、目の前にするとその迫力に気おされそうになる。

 

【薫】「すごいね…」

 

 物理的に見れば、水が落ちてきているだけなんだが、それがどこか神秘的にも見えるのが人なのかもしれない。

 

 多くの水しぶきをあげて、水は上から下へと落ち、そしてまた下流へとながれていく。

 

 霧のように広がった水滴が、周囲を白い色に染めていた。

 

【一刀】「どこか、座るか」

 

 適当に大きめの岩の上に腰をかける。

 

【薫】「ふぅ…」

 

【一刀】「なんだ、やっぱ疲れてたのか」

 

【薫】「そりゃちょっとは疲れるよ」

 

 笑いながら、薫は答えてきた。

 

【一刀】「ま、結構上ったしな」

 

【薫】「意外と外からみると、そうでもないんだよね。こういうのって」

 

 まぁ、確かにそうなんだが、それを言ってしまうと終わりのような気がする。

 

【薫】「不思議だよね。こういうとこ来ると、自然と疲れがなくなるみたいになるんだもん」

 

【一刀】「マイナスイオンだったっけ、でてるんだよな。本当かは知らないけど。」

 

【薫】「何?それ」

 

【一刀】「あぁ、そっか。まぁ、俺もよくわかってないんだけどさ。本当にそれが原因かも調べたわけでもないし。」

 

【薫】「うん?」

 

 薫はよくわからないという顔で覗き込んでくる。

 

【一刀】「いや、やっぱりなんでもない」

 

【薫】「そか」

 

 薫は視線をもどして、滝のほうを眺めている。

 

 こうしてみれば、普段どおりなんだよな。

 

 綺麗な赤い瞳は、今日も何かを捉えているように、輝いている。

 

 あの金色の瞳…。一瞬薫なのかすら疑ったほどに、あの時の薫は別人のようだった。

 

 薫、お前は……………

 

【薫】「ねえ、一刀」

 

【一刀】「っ…ど、どうした?」

 

 薫のほうを見ていたのがばれたのかと身がすくんでしまった。

 

【薫】「最近のあたし、変だったりするかな…」

 

【一刀】「え?」

 

【薫】「夜の間…とか。なんか変な事してないかな」

 

【一刀】「ちょ、ちょっと待て……どういうことだよ。」

 

【薫】「あ、うん…。」

 

 まくし立てるように、俺に問いかけて、薫は深呼吸した。

 

 少し落ちついたのか、今度は静かに話し始めた。

 

 

 

 

【薫】「あたし、最近夜になると記憶がとぶんだよね」

 

【一刀】「夜?」

 

【薫】「うん。それがここ2,3日の事じゃなくて、結構前からおかしくなってて。」

 

 結構前。という事は、あの時以外にも薫にはなにかあったのか。

 

【薫】「…………………急に意識が飛んで、目が覚めたら一刀の部屋にいたり、外にいたり。」

 

【一刀】「え………それってお前」

 

 朝に薫が俺の部屋にいることはそこそこあったが、あの頃から薫は自分に異変を感じていたということか。

 

【一刀】「じゃあ、薫が俺の部屋にいたのは…」

 

【薫】「知らない…。あたしは行った覚えはないんだもん」

 

【一刀】「そう…なのか」

 

【薫】「うん」

 

 二人が黙っても、静寂は滝の音がかき消してくれる。

 

 静かになり過ぎないことがずいぶん救いに思えた。

 

 薫は、夜になると、記憶が飛ぶ。

 

 なら、あの日。夜襲を受けた時も記憶はないんだろうか。あれだけはっきりと会話していたのに。

 

 

【薫】「………………やっぱり、気持ち悪いよね」

 

【一刀】「え?」

 

 突然言い出した薫の言葉はずいぶん、震えた声だった。

 

【薫】「自分で思うもん。意識なくなって、何してるかもわかんなくて、気づいたら一刀の横にいて……何がなんだか…………あたし…」

 

【一刀】「ほら。」

 

【薫】「ん…………。」

 

 薫の思考が暴走する前に、俺は肩ごと薫を引き寄せた。

 

【一刀】「しっかりしろ、軍師様。覚えてないもんは仕方ないだろ。俺の寝台に入ってた事は、迷惑なんて一回も言ってないだろうが。まぁ、後処理は困るが、別に嫌だとはおもってないし、それに……」

 

【薫】「嫌じゃ、ないんだ」

 

【一刀】「………………変な意味じゃないぞ。勘違いするなよ」

 

【薫】「しないよ、馬鹿」

 

 俺は何を言っているんだ。それがいいたいわけじゃないだろうが。

 

 …………いや、もともと言いたいことなんてあったかも微妙だが。

 

 

 

 

 

 

【薫】「最近、一刀に慰められてばっかりだね」

 

【一刀】「薫が弱いトコ見せるからだろ」

 

【薫】「一刀が弱いとこ見に来るんだよ」

 

 結論、どっちでもいい。俺で慰められてるっていうなら、それもいい。

 

【一刀】「薫は………いやなのか?」

 

【薫】「え……」

 

 蒸し返してしまったといってから後悔したが、覆水盆に返らず、吐いた言葉は訂正できない。

 

【薫】「嫌なら………とっくに対処は出来てる。」

 

【一刀】「またずいぶんヒネった言い方を…」

 

【薫】「う、うるさいな…」

 

 別に普通の格好をしているのに、目のやり場にこまる。

 

 薫の顔を見るのは、今はつらい。かといってボーっとしていると視界に薫が入ってしまうほど、今は近い。

 

 だからといって、今水面を眺める勇気は俺にはない。

 

【薫】「い、嫌じゃないけど…………恥ずかし…でしょ…」

 

【一刀】「………………俺は結構なれたけど」

 

【薫】「な、慣れたtt――あだっ!」

 

【一刀】「――ぐはっ!」

 

 突然薫が顔を振り上げたために、薫のヘッドバットが俺の顎にクリーンヒットした。

 

【薫】「~~~っ!」

 

【一刀】「お、お前な~~………いつつ…」

 

 顎をさすってやると、じんじんして熱を持った部分があった。

 

【薫】「―――っはぁ~……」

 

【一刀】「なにしてるんだか…」

 

【薫】「あたしが言いたいことだよ」

 

【一刀】「残念ながらもう俺が言ってしまった。」

 

【薫】「むぅ、とりけせ~~」

 

【一刀】「あ、あほかっ!取り消すとか意味がわからん」

 

 襟元をつかんで首をぶんぶん揺さぶられた。

 

【薫】「もう……なんなんだよ」

 

【一刀】「こっちのセリ……あ」

 

【薫】「ふふん♪これでおあいこ」

 

 今度は勝ち誇ったように薫は笑ってきた。

 

【一刀】「なんの勝負なんだか。………って、お前のせいで話それまくったじゃないか。」

 

【薫】「別にあたしのせいじゃ・・・」

 

 どっちのせいかなんてやり取りをおよそ二十ループほど続けて、俺達はようやく落ち着いた。

 

 

 

【一刀】「まぁ、月並みな事を言えば、お前はお前だろ」

 

【薫】「………そうなのかな」

 

【一刀】「お前は、”司馬懿”で”薫”だろ」

 

【薫】「……………っ!…うん…」

 

【一刀】「え……あれ、ちょ、おい、薫…?」

 

【薫】「ん?…………っ…あ、あれ………なにこれ……」

 

 薫自身混乱しているように、顔を触っては自分の手のひらを眺める。

 

【薫】「あ、れ…なんだろ……おかしいな…」

 

 手で目をこすっても、何故か止まらない。

 

 別に悲しいことがあったわけではないのに、薫は両腕で目をこすり続ける。

 

【一刀】「薫…………」

 

【薫】「なんで……とまってよ………止まってってば……」

 

 言葉とは正反対に、それは溢れ続けた。

 

【薫】「や、やだな……。あはは、なにこれ。もう」

 

【一刀】「薫、いいよ。とめなくても」

 

【薫】「あ、あたし、別につらくもなんともないっ………なんで…」

 

 本当に理解できないように、薫は混乱する。

 

 それはまるでほんとに自分が泣いているのではないように。

 

 分からない。

 

 その意思が伝わってくる。

 

【一刀】「とめなくていから、薫」

 

 さっきと同じように、俺は薫を抱き寄せた。

 

【薫】「一刀…………あたし…」

 

 俺のシャツに顔を押し付けたまま、薫は最後に、おそらく本音だろう言葉を漏らした。

 

 

 ―怖いよ………一刀…―

 

 

 薫の涙が止まったのは結局昼を過ぎて、夕暮れ時になった頃だった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

前回の反省をふまえつつ、今回はシリアスっぽく?

まぁ、途中からツンデレ同士のイチャイチャになったかもしれませんが(´・ω・`)

 

なぜか僕の描く一刀君はいつもSっ気が強くなる。

作者に似るのかしらww

 

まぁ、その辺はおいといて。

ちょっとずつですが、今回から一刀が薫の事を知り始めます。

 

薫は薫で、徐々に一刀に懐いてきてますね。ツン…というほどでもないですが、今はそういう時期かなと作者的にはおもってますw

 

ただ、和兎の作品はいつもデレ=死亡フラグですので、その辺を気をつけていこうと思います・・・。

 

ではでは。


 
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