No.1022059 20年の時を経て「大丈夫」に辿り着いた人間の一人として(全文)②雨泉洋悠さん
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2020-03-06 01:24:41 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:570 閲覧ユーザー数:570 |
好きでは無かった理由は至極単純なもの。
携帯がキーアイテムであったり、
二人が幸福な結末を迎えなかったり、
言ってしまえばそれは何となくであり、
つまりはそれは自分でも言語化にそれなりの時と手間を必要とする様な、
一種根源的なものとも言え、
だからこそおいそれと払しょくされるようなものではなく、
長い時間を掛けて私の中に小さくも確かなものとして、
残り続けていくことになる。
彼の監督もその籍を置いたある業界は、
しずくきずあとを穿ち、心冬を知る。
月一つ光は大気の中に。
主に二つ、葉擦れの音と鍵の音。
それは私達が触れる他の業界では中々手に取ることの難しい、
誠実な創作力に満ちている様に私達の瞳には映っていた。
それを理解するには当時の他の業界の傾向も助けになると言える。
一種硬派なものとは対照的に度を越して他者への辱めを公に喧伝するもの多く、
幾多の子女に血縁の言を宣わせしめる男子、
数年前となるが純粋に自らの力を鍛錬せしものの結果幾多の子女への甘言に終始する男子。
いずれにせよその映像表現面にも恒久の価値を自分としては見いだせず、
それらの源泉となる作品は既に遠き過去の思い出となっているのもあり、
暫しの時を経て現れたそれらに価値を見出すには十分な心的土壌が存在していた。
とは言え、それらについても自らの中には一つの蟠りが噴出の機会無くも内にて僅かずつ降り積もっていた。
当時多くの消費者は、
これからの予感に期待を寄せつつも、
幾ばくかのものはその業界へ自らの活躍の場を必然的に求め、
その場を目指さんと多くの潜在的創作者の性質を内在させ始めていた。
そして私もまた、
共に先を見据えんとした仲間との創作への第一歩を踏み出そうと歩き出そうとした。
しかし、
「ヒロインは()人で~」
その一言が、
私の心の内の蟠りの答えを容易に現出せしめた。
つまりは、私はその業界にある物語の、
多くの子女との物語の全体像では無く、
各子女個々との一つ一つの物語にこそ価値を見出していたのだ。
ゆえに、我が心の有り様の発言場所として、
その業界は不適となった。
そして私は、
また目指す場所を見失った。
→③
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