No.1021217

近未来文明が残る惑星 第10話

meguro さん

閲覧有難うございます。いつもよりも少し遅くなってしまいすみませんでした。第2章に向けて様々な展開になる予定です。
もし宜しければ感想やアドバイスをお願いします。

2020-02-27 19:50:01 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:418   閲覧ユーザー数:418

この作品はフィクションです。実際の人物や歴史地名とは関係ありません。

 

 

松利と那岐(なぎ)に近づく人物がいた。

雪の様な真っ白な着物を少し着崩した金髪と蛍色のグラデーションが特徴の女性、静かに鈴の音の様に柔らかな声で、2人に声を掛けていた。

 

「神様…ですよね!?お久しぶりです!私達の事、覚えてますか?」

 

松利はその女性に近づき、知人に再会したかのように嬉しそうな表情をした。

 

「……残念ですが、貴女の事は記憶にありません。人違いでは?」

「っ……そんな…」

 

不運にも人違いをしてしまったのか、松利は悲しそうに俯いた。

 

「でも、親に捨てられて身寄りのない私たちを保護してくれたのは、貴女なんです!!」

「……」

「あの、その…だから…!」

「おい、もういいだろ。俺たちを助けてくれたのはこの人じゃない。きっと同じ顔をした別の神様だ…」

 

薄っすら涙目になる松利を少し慰める那岐。

女性はふと目の前にある巨大な空洞に目を向けた。

 

「それで、あなた方はここで何をしていたんですか?このトンネルはかなりの老朽化が進んでいて、いつ崩れてもおかしくありません。危険です。」

 

女性はまるで機械の様に淡々とした口調で語る。

 

「それが…実はあの空洞の奥に人が迷い込んでしまったみたいなんです…助けてあげられませんか?」

「…方法は幾つかありますが…」

「本当!?警戒心が凄く強くて危なっかしくて、動物みたいな人なんですよ」

「あと、怪我もしてるかもしれないんだろ?」

「ああ、そうだった。」

 

リックを何とかトンネルの外に連れ出そうと、女性に知恵を求める。

 

「動物…みたいな…?分かりました。この様な救出方法ならどうでしょう?」

 

そして3人はすぐに作戦を始めた。

 

 

――――

 

 

隠れる様に瓦礫の陰に背もたれに付けて、ぐったりしているリック。

逃げた時に松利に足を撃たれ、出血と落下した際に体を打撲しているせいか、彼の体力は限界だった。

 

(このままじゃ…ここで死んでしまう。それじゃ駄目だ…瑠璃とカムイを助けに行かないと…ん?微かだけど2人とはまた別の声…仲間を呼んだのか?)

 

リックは残る微かな体力と気力で周囲の状況に耳を澄ませた。

なんとか3人がここを離れるまで、息を潜めて脱出するタイミングを探す。

 

(……声がしなくなった。他の場所に移動したのかな?…今がチャンスか?)

 

リックはもう一度気力を振り絞り、ふらつきながらも立ち上がる。

慎重に瓦礫から顔を覗かせて、追手が居ないか確認した。

 

「はあ…誰もいない。よし、大丈夫。今なら行ける!」

 

ゆっくりゆっくり足を引きずりながらも出口目指して懸命に歩く。

出口付近は風か吹いていて、晴れた青空が目に眩むほど眩しく感じた。

 

「そ、外だ…やっと……」

 

外に出れた安心もあるのか、膝から崩れる様に倒れ込むリック。落ち葉に隠れわずかに窪んだ場所に左手が落ちると勢いよく、リックの左手に縄が巻き付き向かい側の樹が大きく揺れた。そしてリックの体は高く空を舞った。

 

「…作戦通りですね。」

「はい、私の罠作成も中々のものでしょう?」

 

リックに駆け寄る松利と女性、そしてリックの状態を見て少し飽きれた表情をする那岐。

 

「…確かに動物みたいなって言ったけど…人に動物捕獲の罠を使うな…」

 

左手と左腕に縄が巻き付き、巻き付いている縄は太い樹の枝にいくつも結ばれて繋がれている。ぐったりしている様子でリックは樹にぶら下がっていた。

 

「あら?気絶していますね。…ああ…やっぱり私の撃った弾当たってたんだ…ごめんなさい。」

「コイツが幸村様が言っていた人物か…気絶しているみたいだし、怪我の様子からして早く手当てしてやった方がいい。生きて連れてくるように言われてるからな」

「…私の管理している館ならその怪我、治療出来るかもしれません…」

 

松利と那岐は女性の方に振り向く。

 

「そうなんですか?私達の隠れ家までもう少し距離がある…神様、お願いしてもいいですか?」

「了解しました。私の館まで案内します。」

 

 

 

 

一方その頃小田原では―――

 

敵軍が徐々に進軍していた。小田原の近くにある農村は敵軍の攻撃で民家を焼かれたり、逃げ惑う人々で兵士と戦い傷を負った者などいて大混乱していた。

 

「はぁっはぁっ……待ってカムイ!私達も戦わなくちゃ…!」

 

戦火の中、カムイが瑠璃の手を引いて走っていた。

あまり走り慣れていない瑠璃はすぐに疲れてしまい、地面に膝をつく。

無残に殺されてしまった人、響く悲鳴の数々で穏やかな瑠璃の精神は壊れそうだった。

 

「でも!僕たちじゃ戦えないよ!それに女性や子供は早く逃げろって言ってたし!」

 

もうリックの事を気にかけている場合ではなかった。早くこの村から脱出しないと…

そう2人は考えていた。

 

「あっ、そうだお城なら!小田原のお城に行けば助かるかもしれない……!」

 

カムイは瑠璃を立ち上がらせて、縋る思いで小田原城を目指したが――――

 

「貝さん!そんなっ……!」

 

瑠璃が悲痛な顔で見つめる向こうには、瑠璃の知人が血だらけで無残な姿で倒れていた。リックが何者かに連れ去られている所を目撃した人物でもある。

知り合いの死を見てしまい、無気力に佇む瑠璃とまた同じ悲痛な顔で涙ぐむカムイ。

 

「私の事はいいよ。もうどっち道もうすぐ死ぬ運命だしね…カムイちゃん。今までありがとうね」

「何でそんな事言うの!?お婆さんはどうするの…足が悪いなら、僕がおぶって行くよ…だから…」

 

お世話になったお婆さんを見捨てて逃げることが出来ないで、子供の様に泣きじゃくった。

 

「瑠璃っ何してんだ!さっさと逃げろ!!」

 

2人の意識を現実に戻す様な凛とした声が聞こえた。瑠璃が自分の名を呼んだ方に顔を向けると、瑠璃の兄代わりに面倒を見ていた風助が怒った表情で見つめていた。

 

「風助さん…風助さん!?手に持ってる鉈…まさか戦うの…?嫌だよ、一緒に逃げようよ!」

「はっ逃げられるものなら逃げたいよ。だが、村や大切な人を守ってこそ男だろ!」

 

喝を入れる様に瑠璃に怒鳴る風助は、カムイにも自分の想いを話す。

 

「おい、お前も男なら泣いてないで瑠璃を守れよ。俺がそうしたかった代わりにお前が、瑠璃を守ってみせろ!!」

「…はい!!助けてくれて有難う。お婆さん、風助さん無事でいてね…行こう…!」

 

はっとさせられ、覚悟を決めたカムイはもう一度瑠璃の手を強く握って、その場を後にした。後ろを振り返りずっと風助の名前を呼び続けている瑠璃を連れて、城に向かった。

 

 

 次回に続く

 


 
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