No.1020536

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第67話

2020-02-21 21:12:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1600   閲覧ユーザー数:1372

 

 

 

1月30日――――――

 

~カレイジャス・ブリーフィングルーム~

 

「そうですか…………ヒューゴが政府側に……」

事情を聞き終えたパトリックは複雑そうな表情を浮かべ

「……ちなみにヒューゴ君のように、実家の状況を知る為にエレボニア帝国に帰国した他の生徒、教官はいるんですか?」

「教官の皆様は全員今も残ってくださっていますが、ヒューゴ様以外にもエレボニア帝国に帰国された生徒の方々はいらっしゃいます。そしてその中にはヒューゴ様のように、”紅き翼”に帰還していらっしゃらない方々も含まれています。」

「そ、そんな…………」

「戻ってきていない他の生徒達もまさか、政府側についたのだろうか……?」

アンゼリカの質問に答えたセレスタンの答えを聞いたトワが不安そうな表情をしている中、ガイウスは複雑そうな表情を浮かべた。

 

「いや――――――ヒューゴ以外に戻ってきていない生徒達は皆、クロイツェン州の出身で戻ってきていない生徒達からも戻ってこれない理由を書いてある手紙も既に来ているから大丈夫だ。」

「ヒューゴ以外に戻ってきていない連中が全員”クロイツェン州”の出身って事は正規軍による”焦土作戦”で故郷が滅茶苦茶にされちまったから、その復興の為か。」

「はい。それらの手紙は全て復興の為に派遣されているメンフィル・クロスベル連合の手配によって紅き翼(こちら)に届けられています。」

「その…………それらの手紙の中にリィン達の情報については何かなかったんですか?」

パトリックの答えを聞いてすぐに察しがついて推測を口にしたクロウの推測に頷いたセレスタンの話を聞いたアリサは複雑そうな表情でセレスタンに訊ねた。

「残念ながら故郷に残って復興を手伝うことを決めた生徒達の手紙の中にはリィン達を見かけたという内容はなかったよ。」

「クロイツェン州も広大だからね。メンフィル帝国軍に所属しているリィン君達も恐らく復興には派遣されていただろうが、クロイツェン州に残っている生徒達がいる場所に派遣される確率は正直言って低いだろうから、彼らがリィン君達を見かけなかった事も仕方ないよ。」

「そうですね…………」

パトリックの話とアンゼリカの推測を聞いたアリサは辛そうな表情で呟いた。

 

「そういや、噂の”灰色の騎士”サマが今回の戦争で有名になった戦いはクロスベルでの迎撃戦での活躍らしいから、ここじゃあかなり有名なんじゃねぇのか?」

「ああ。とはいってもやはり、”クロスベルにとっての英雄”は”六銃士”と”特務支援課”だからね。幾らクロスベルでの迎撃戦で活躍したとはいえ、彼ら程の知名度はないようだ。」

「えっと………その”特務支援課”だけど、予め頼んでいた”特務支援課”の人達との接触、情報交換とできれば特務支援課の仲間にいる”工匠”の人達に依頼ができる協力関係を築く事はできたかな?」

あることを思い出したアッシュの問いかけに頷いて話を続けたパトリックの説明を聞いてあることを思い出したトワはパトリック達に尋ねた。

「はい。ただ、今は多忙らしく、”特務支援課”が拠点としている中央通りにある雑居ビルに直接訪ねた時に滞在していたら、話を聞くとの事です。」

「そっか……それで、話は変わるけど市内を巡回しているクロスベル警察の人達は随分と周囲を警戒していたけど、何か知っている事はないかな?」

パトリックの話を聞いて頷いたトワは市内を見回った際にクロスベル警察に所属している警官達がピリピリしている事を思い出してパトリック達に尋ねた。

 

「……実は僕達もその件が気になって、クロスベル帝国政府に問い合わせをしたんですが、”部外者”には教えられない機密情報との事で教えてもらえなかったのですが……」

「―――オルキスタワーから出た際に偶然タワーに戻ってこられたキュア嬢とお会いすることができまして。坊ちゃんがキュア嬢にクロスベル警察の件で何か知っている事があれば教えて欲しいと自ら頭を下げられたのです。」

「”キュア嬢”ってもしかして…………」

「姉と一緒にクロスベルに寝返ったって言うカイエンのオッサンの娘の妹の方だな。」

「それでキュア君から何か教えてもらえることはできたのかい?」

パトリックとセレスタンの話を聞いてあることが気になったアリサは目を丸くし、クロウは静かな表情で答え、アンゼリカは真剣な表情で続きを促した。

 

「ええ。……キュア嬢の話によるとどうやら近日中にエレボニア帝国正規軍の上層部がクロスベル郊外にある”ウルスラ病院”を訪問する予定があるらしいんです。」

「へ……エ、エレボニア帝国正規軍――――――戦争相手の軍の上層部がどうしてクロスベルの病院に訪問することをクロスベル帝国政府は受け入れているのかしら?」

パトリックの話を聞いて仲間たちがそれぞれ血相を変えている中アリサは困惑の表情で訊ね

「サラ教官の話によるとウルスラ病院はレミフェリア公国政府が深く関わっているという話だから、多分だけどその事実によってウルスラ病院は一種の”中立地帯”になっているからクロスベル帝国政府も正規軍の上層部の訪問を受け入れたんじゃないかな?」

「あ…………」

「それでその正規軍の上層部は一体誰の見舞いの為にウルスラ病院を訪問するんだい?」

トワの推測を聞くとアリサは呆けた声を出し、アンゼリカは真剣な表情で訊ねた。

 

「それが…………――――――ユーゲント皇帝陛下のお見舞いとの事です。」

「ええっ!?それじゃあ、ユーゲント皇帝陛下は今、ウルスラ病院に入院なさっているの……!?」

「幾らウルスラ病院がレミフェリアが深く関わっているとはいえ、よくクロスベルは敵国の皇帝を自国の領土の病院に入院させることを受け入れたよな……?」

「そのあたりは恐らくですが、エレボニア帝国政府がレミフェリア公国政府に陛下をウルスラ病院に入院できる為の何らかの交渉をし、レミフェリア公国政府がクロスベル帝国政府に話を通して皇帝陛下をウルスラ病院に入院させたかと。確か皇帝陛下と現公国元首であられるアルバート大公閣下は親しい関係という話を聞いた事があります。」

パトリックの答えを聞いたトワが驚いている中困惑の表情をしているクロウの疑問にセレスタンが静かな表情で答え

「アルバート大公閣下か……………………そういえば、ミュゼ君から生前のアルフレッド公子は大公閣下と親しい関係で、彼女も大公閣下とは旧知の仲という話も聞いたことがあるな。」

「ミュゼちゃんのお父さんが……」

「しかしそれならば、何故クロスベルはユーゲント陛下の見舞いの為に来訪する正規軍の上層部を警戒しているのだ?」

「多分だが、その見舞いを利用してスパイがクロスベルに堂々と入国、潜伏することを警戒しているんじゃねぇのか?」

アンゼリカの話を聞いたトワが目を丸くしている中、不思議そうな表情で考え込んでいるガイウスの疑問にクロウが推測を答えた。

 

「それは…………パトリック君、そうなの?」

「ええ…………会長達もご存じのようにクロスベル警察は以前”北の猟兵”達の密入国を許してしまった件もあって、その二の舞にならないように現在クロスベル警察全体が相当警戒しているそうなんです。」

「ちなみに現クロスベル警察の局長は前警察局長を務めていたヴァイスハイト皇帝陛下に指名された方との事ですから、恐らくそれも理由の一つかと。」

「ま、ヴァイス達に後を任されておきながら、スパイの侵入を許すなんてヴァイス達に顔向けできないし、自分たちに後の事を任せたヴァイス達の顔にも泥を塗っているようなものだもんね。」

「……………………」

トワの疑問に答えたパトリックとセレスタンの話を聞いたエヴリーヌは自身の推測を口にし、それを聞いたアリサは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「フム………そういう事だったら、私達の陛下へのお見舞いは難しいかもしれないね。」

「うん…………それにわたし達が陛下のお見舞いできない理由が他にもあるし……」

考え込みながら呟いたアンゼリカの言葉に頷いたトワは気まずそうな表情でアッシュに視線を向け

「俺の事は気にすんなや。皇帝の見舞いができるんだったら、俺抜きでお前達だけで見舞いをすればいいじゃねぇか。」

「それなら、俺もお前に付き合うぜ。何せ俺は内戦勃発の引き金を引いた”元凶”でもあるから、俺が見舞いに行ってもアッシュ同様気まずくなるだけだろ。」

「クロウ……」

視線を向けられたアッシュはいつもの調子で答え、アッシュに続くようにある申し出をしたクロウの提案を聞いたガイウスは複雑そうな表情でクロウを見つめた。

 

「取り合えず、病院を訊ねてダメ元でお見舞いができるか聞いてみませんか?」

「そうだね…………幸いクロスベルの”特異点”の最有力候補の場所はレン皇女殿下達から教えてもらっていて、探す手間は省けて時間は多少あるから、まずは病院に行ってみようか。」

そしてアリサの提案にトワは静かな表情で頷いた。その後カレイジャスを後にしたトワ達はバスで病院へと向かった。

 

 

~ウルスラ病院~

 

「さて、病院に着いたのはいいが……問題はどうやって、病院側も秘匿している可能性が高い皇帝の見舞いができるように頼むかだな。」

「た、確かに言われてみればクロスベルの戦争相手であるエレボニア皇帝が入院しているなんて事実、病院側でも限られた人達しか知らない可能性は高いでしょうね。」

「うん、それを考えると多分受付の人もユーゲント皇帝陛下がウルスラ病院に入院しているなんて事実は知らないと思う。せめて皇帝陛下の主治医か担当の看護師が誰かわかればいいんだけど…………」

病院の入口に到着したクロウは病院を見上げて苦笑しながら呟き、クロウの言葉を聞いたアリサは疲れた表情で答え、トワは真剣な表情で考え込んでいた。

「あら、もしかして貴方達が”Ⅶ組”の方達かしら?」

するとその時トワ達の背後から現れたセシルがトワ達に声をかけた。

 

「ど、どうして私達の事を……!?」

「フッ、貴女のような美しい女性に知ってもらえるなんて、私達も知らぬ内に有名になったものだね。」

「えっと………貴女は一体……」

セシルが自分たちの事を知っていることにアリサが驚いている中、アンゼリカは静かな笑みを浮かべ、アンゼリカの発言に仲間たちと共に脱力したトワは我に返ると真剣な表情でセシルに訊ねた。

「ふふっ、始めまして。看護主任のセシル・パリエ・ノイエスです。貴方たちのことはリウイさんやヴァイスさん達から聞いていたわ。」

「へ…………」

「おいおい…………何でただの看護師の姉ちゃんがエレボニアの戦争相手の国の皇帝達を”さん”づけで呼んでいやがるんだ?」

「……もしかしてセシルさんはメンフィル・クロスベル連合の上層部の関係者なのだろうか?」

セシルの口から出てきた驚愕の人物の名前にアリサは呆けた声を出し、アッシュは困惑し、ガイウスはエヴリーヌに訊ねた。

 

「ん。セシルはリウイお兄ちゃんの側妃の一人だよ。」

「ええっ!?リ、リウイ皇帝陛下の……!?」

「何でそんなとんでもない立場なのに、看護師をやってんだよ……!?」

エヴリーヌの答えを聞いたアリサは声を上げて驚き、クロウは困惑の表情でセシルを見つめた。

「フフ、ここではなんだし、落ち着いた所で話をしないかしら?」

困惑や驚きの表情で自分を見つめているトワ達の様子に苦笑したセシルは場所を変える提案をした。

 

その後セシルの提案に応じたトワ達は病院内にある看護師達が待機している部屋に案内された。

 

~看護師待機室~

 

「リ、リウイ皇帝陛下のかつての側妃の転生者……!?」

部屋に案内され、セシルから事情を聞いたアリサは信じられない表情でセシルを見つめ

「そ、そういえばリベール王国を訪問した際にクローディア王太女殿下の話に”槍の聖女”のように、リウイ陛下のかつての側妃だった方が生まれ変わって”槍の聖女”のようにリウイ陛下と結ばれた話があったね……」

「ああ…………確か転生前の名前は”シルフィア”と”ティナ”で、”槍の聖女”が”シルフィア”の転生者だから、貴女は”ティナ”という人物の転生者なんですか?」

あることを思い出したトワの言葉に頷いたアンゼリカは考え込みながらセシルに確認した。

 

「ええ。とはいっても、私の場合はリアンヌさんと違って”ティナ”としての記憶があるだけで、人格は”ティナじゃなくて、セシル・ノイエスそのもの”よ。」

「ちなみにティナはこっちの世界だと”癒しの聖女”とか呼ばれているティアのお母さんだよ。」

「”癒しの聖女”…………混沌の女神(アーライナ)教と同じ異世界の宗教である癒しの女神(イーリュン)教の”聖女”だったよな……?」

「う、うん。その…………セシル皇妃陛下はどうしてこちらの病院で看護師を?」

苦笑しながら答えたセシルの説明と説明を補足したエヴリーヌの話を聞いて考え込みながら呟いたガイウスの確認の言葉に頷いたトワはセシルに訊ねた。

「”セシル”でいいわよ。病院内でも普通の看護師と扱ってもらえるように伝えているし。私は”ティナ”としての記憶が蘇るまでは、元々この病院で看護師をしていたのよ。それで”影の国”の件が解決してからは”ティナ”としての記憶が蘇ったのよ。」

「そんな事情が……」

「つーか、”転生者”とかオカルトにも程があるだろ……」

セシルの答えを聞いたアリサが驚いている中アッシュは疲れた表情で呟いた。

 

「あの…………先程セシルさんは”看護主任”と仰っていましたよね?もしかしてセシルさんはこの病院に入院なさっている”エレボニア帝国にとって最も重要な人物”の事についてもご存じなのでは……?」

するとその時あることに気づいたトワは真剣な表情で訊ね

「…………ええ。実は”Ⅶ組”の皆さんが来たらその方から案内するように頼まれていたのよ。」

「え……た、”頼まれていた”って事はもしかして、意識が戻っておられるんですか……!?」

トワの疑問を聞いた表情を引き締めたセシルの説明を聞いてあることに気づいたアリサは驚きの表情で訊ねた。

「ええ。とはいっても今も予断は許されない状況だけど。今日お見舞いにいらっしゃるヴァンダイク元帥閣下がお帰りになったらご案内したいのだけど……どうかしら?」

「パトリック君の話にあった”見舞いに来る予定のエレボニア帝国軍の上層部”は学院長だったんですか……」

「そ、それよりも……」

セシルの問いかけを聞いたアンゼリカが真剣な表情を浮かべている中、トワは複雑そうな表情でアッシュに視線を向け、トワに続くようにアンゼリカ達もそれぞれアッシュに視線を向けた。

「ああ―――案内してくれや、姉ちゃん。」

そして視線を向けられたアッシュは少しの間考え込んだ後決意の表情を浮かべて答えた。

 

その後ヴァンダイク元帥の見舞いが終わるとトワ達はセシルの案内によって”とある人物”が入院している研究棟にある特別な病室に案内された。

 

~研究棟~

 

「――――――失礼します。」

「うむ、入るがよい。」

部屋の中から聞こえた男性の許可の声を聞いたセシルは扉を開けてトワ達と共に声の主である男性――――――ユーゲント三世のベッドに近づいた。

「―――――――――」

ユーゲント三世を見たアッシュは僅かに辛そうな表情を浮かべて顔を俯かせた。

 

「よく来てくれたな―――トールズの”Ⅶ組”よ。このような姿で済まないがまずは再会を寿ぐとしよう。」

「陛下……」

「未だ人事不省と聞き及びましたがお目覚めになられていたとは……」

「よ、よくぞ御無事で……本当にようございました!」

ユーゲント三世に声をかけられたアンゼリカは真剣な表情でユーゲント三世を見つめ、ガイウスは重々しい様子を纏って、アリサは安堵の表情でユーゲント三世に声をかけた。

 

「ああ、再びそなたらに会えた事、余も女神達に感謝している。」

「――――――本来は面会謝絶だが特例として10分まで許可する。ノイエス主任、何かあったらすぐ報せるように。」

「はい、セイランド教授。」

ユーゲント三世が静かな笑みを浮かべてトワ達に答えると窓際で状況を見守っていた主治医のセイランド教授に指示をした後部屋を出ていき

「エヴリーヌはリウイお兄ちゃんやヴァイス達の”お情け”で生かしてもらっている弱っちい王様なんて興味ないから、そこのソファーで休んでいるから話が終わったら声をかけて。」

セイランド教授に続くようにエヴリーヌはトワ達に声をかけた後近くにあったソファーに寝転がって眠り始め、それを見たトワ達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

(エ、エヴリーヌさん!さっきの発言もそうですけど、その態度も陛下に対してあまりにも不敬ですよ……!?)

(いくら何でも、本人を目の前にあんな事を言った上でそんな態度をとるとか、さすがに”人として”どうかと思うぞ……?)

「(まあ、メンフィルの客将である彼女にとって陛下は”メンフィルにとっての敵国の皇帝”なんだから、むしろ一触即発になったり気まずい空気になったりしないだけマシと思った方だいいよ。それよりも……)―――ユーゲント陛下。ご恢復、心よりお祝い申し上げます。皇子殿下達もお知りになったらさぞお喜びになるでしょう。」

焦った表情でエヴリーヌに注意するアリサと表情を引き攣らせたクロウの指摘に疲れた表情で答えたアンゼリカは表情を引き締めてユーゲント三世に声をかけ、トワもアンゼリカに続くようにユーゲント三世に声をかけた。

 

「フフ…………この通り辛うじてだがな。―――眠っていた間に起きた事は”大方”、聞き及んでるつもりだ。ついに”黄昏”が起き、……単身メンフィルの元へと向かったアルフィンを見捨てた結果アルフィンがメンフィル側についたことも。連合との戦争―――いや全てを巻き込んだ”終わり”が始まりつつあることも。”総て”を知りながら混沌を受け入れ、若いそなたたちに苦難を強いてること―――エレボニア皇帝として謝らせてほしい。」

「あ。頭をお上げください……!って、知りながら……?」

「まさか、今の状況が起こることを前々から予想していたのかよ?」

頭を下げて謝罪するユーゲント三世の行動に驚いたトワは慌てた様子で指摘したがあることに気づき、クロウは真剣な表情で訊ねた。

「そうだ―――皇帝家に伝わる”黒の史書”によってな。」

「トマス教官の話にあったリィンが集めていたという古代遺物ですか。」

ユーゲント三世の話を聞いて血相を変えたガイウスはユーゲント三世に確認した。

 

「うむ――――――そこには”黄昏”に至る大凡のことが記されているのだ。エレボニアが歩んできた闇の歴史。騎神や暗黒竜にまつわる様々な事件。―――選ばれし者が”贄”となって”星杯”への道が開いてしまうこともな。」

「……すまなかった……オレがもっと強けりゃあ…………あんなことには……」

「アッシュ君……」

優し気な笑みを浮かべたユーゲント三世に視線を向けられたアッシュは辛そうな表情で謝罪し、その様子をアンゼリカは静かな表情で見守っていた。

「よいのだ、アッシュ。そなたには何の罪もない。全てはエレボニアの”呪い”に導かれたこと。その意味では私もそなたと同じであろう。―――大切なのは”この先”だ。ここまでは宰相や地精の長の見込み通り……だが史書に書かれていたのは”黄昏”が始まる時点までだ。ましてや史書には”百日戦役”の際にメンフィル―――異世界と繋がる事やクロスベルが共和国を呑み込んだ事も記されていなかった。この先は言うなれば”黒の史書にとっても想定外の紡がれていない物語”――――――ここからは彼らも読みきれていない”道”の筈だ。――――――内戦ではそなた達やアルフィンと共にその刃を振るってくれたギリアスの息子が目指している道やミルディーヌ公女が進めているという道も含めてな。」

「そこまでご存じでしたか……」

ユーゲント三世の話を聞いたアリサは真剣な表情で呟いた。そしてユーゲント三世はトワにある書類を手渡した。

「これは……?」

「…………それには私の知りうる”真実”の全てが記されている。機会があれば、ギリアスの息子にも教えるつもりであったのだが……」

トワに書類を手渡したユーゲント三世はベッドで体を横にさせた。

「オリヴァルトが未だ諦めておらぬ”第三の道”、そなたらならば見つけられるかもしれぬ。……そしてどうか……セドリックを取り戻して……そなたらだけの…………」

「陛下……?」

「おい……!!」

話の途中で話す事を止めて目を閉じたユーゲント三世の様子を心配したアリサが心配そうな表情をしている中、アッシュは真剣な表情で声をかけた。

 

「………………」

「……お眠りになったみたいだね。」

「相当無理をしていたんだろうな。」

目を覚まさない様子のユーゲント三世が既に眠りについた事を悟ったアンゼリカとクロウは静かな表情で呟き

「……セイランド教授を呼んでくるわね。」

それを見たセシルは部屋から退室した。

 

その後、皇帝の病室には『面会謝絶』の札がかけられ……トワたちはセイランド教授と共に一度看護師たちの控室に戻った――――――

 

 


 
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