天空電鉄。市内を一回りするように線路を伸ばす路面電車だ。
その天空電鉄の風天車庫に、1編成の電車が止まっている。
塗装は上半分がデザートベージュ、下半分がオリーブグリーンとなんとも渋い風合い。
この電車は遠い北国・北海道は札幌からやってきた2310形2311A-Bだ。
その2311A-Bの編成に近づいてきたのが運転士の
「車輌番号
元気よく歓呼し、始業点検を進めていき、運転台へと入る。
「パンタ上昇、ヨシ、電圧よし、主幹制御器よし、ブレーキ動作確認、圧力よし…」
テキパキと点検を進める。きりりと引き締まった佑の面持ちに、少しばかり緊張の色が見える。
やがて佑がノッチを始動段に入れ、2311A-Bはゆっくりと動き出した。
少し進んだところで2311A-Bは停車し、サウリアンスロゥピィの女性・
「おはようございます佑さん!」
「おはようございます千夏さん!」
元気に挨拶を交わす二人。千夏は車掌として今回の始業を担当する。
佑と千夏はよく同じ電車に乗務することが多く、乗客の間でも『名コンビ』として知られる。
「今日も忙しくなりそうだね」
「午前中に加えて、午後の乗務もあるからね」
と、しばらく談笑。やがて佑は運転台へ、千夏も車掌台へと移動し定位置につく。
「軌道進行」
車庫の出口にある信号機に黄色の矢印がともる。路面電車ではこれが『進行』の合図だ。
信号機の矢印に従ってゆっくりと2311A-Bは進む。すぐ近くの電車本社前電停で早くも客扱いだ。
佑と千夏の本日最初の乗務は、環状線ルートを反時計回りに進んで北上し、雪天港フェリーターミナルへと向かう運用だ。
まだ早朝とあって、人影はまばら。と、そこに乗ってきたのは見た目小学生くらいにしか見えないマシーナリーの女性。
名を
「天空駅まで」
「はい、市内料金なので160円になります」
「ミュウ博士、今日はずいぶん早いお出かけなんですね」
「いやー、
「大変ですね」
「学者だしね」
「…ご乗車の方よろしいですか?…ドア閉めまーす」
天空電鉄はまだまばらな乗客を乗せて、夜も明けきらない市内を走る…。
Tweet |
|
|
1
|
0
|
追加するフォルダを選択
お店じゃなくて電車だけど今回は番外編ってことで。
佑:https://www.tinami.com/view/748897
千夏:https://www.tinami.com/view/787556
ミュウ博士:https://www.tinami.com/view/903051