No.101956

真・恋姫†無双~江東の花嫁達~(番外六)

minazukiさん

番外編です。
今日、ニュースを見ていたらオリオン座流星群が見えるそうなのでふと思いつきで書いてみました。

皆様も流れ星に願いをのせてみてはいかがでしょうか?

2009-10-19 23:15:10 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:12973   閲覧ユーザー数:9948

(番外六)

 

「尚華?」

 

 夜の庭に出て星を眺めている孫登こと尚華に声を掛けたのは雪蓮だった。

 

「雪蓮様」

 

「何してるのよ?」

 

 酒瓶を持ってゆっくりと歩いてくる雪蓮を尚華は迎えて夜空を一緒に見上げた。

 

「父上様が以前、よくこうして夜空を見上げていたのを思い出してみていたのです」

 

「なるほど。それじゃあ、あそこに座って星見酒といかない?」

 

「私は呑んだらダメだって言われていますから雪蓮様だけが呑んでください」

 

「氷蓮なんて隙あらば呑んでいるわよ?」

 

 そう言っている間にも、部屋の中から一刀の大声と氷蓮の笑い声、そして彩琳の悲鳴が聞こえてきていた。

 

「ね?」

 

「姉上様……」

 

 さすがに呆れたのか尚華は軽くため息をつき、ベンチへ行き雪蓮と一緒に座った。

 

「たまにはいいでしょう?」

 

 しっかり杯を二つ用意している雪蓮にもはや観念した尚華は一杯だけという条件で雪蓮の酒を受ける事にした。

 

「それにしてもいい夜ね」

 

 夜空に散りばめられた星々の輝きを見ながら雪蓮はゆっくりと酒を飲んでいく。

 

「雪蓮様」

 

「な~に?」

 

「父上様から以前、流れ星のお話を聞いたことがあるんです」

 

「流れ星?」

 

「それを見つけて願いを三回唱えれば望みが叶うそうです」

 

「へぇ~」

 

 一杯目が終わり二杯目を注ぐ雪蓮。

 

「それで庭にいたわけ?」

 

「はい」

 

 尚華は両手で一口だけ酒を呑むとそれを膝の上に置いて空を見上げる。

 

 どこからか虫の音が聞こえてきて風情を感じさせる中で雪蓮はある星を見つけた。

 

 それは光り輝く一つの星に幾多の星々がまるで寄り添うかのように周りで薄っすらと輝いていた。

 

「ねぇ尚華」

 

「はい?」

 

「もしその流れ星に願いをするとしたら何にするの?」

 

 優しく穏やかな表情で、月明かりに照らされている愛する人の血を受け継ぐ少女を見ると、その少女はこう答えた。

「秘密です」

 

 どこか嬉しそうに言う尚華。

 

「え~~~~~。言いなさいよ」

 

「では雪蓮様はどのような願いをしますか?」

 

「私?」

 

 雪蓮は自分が望む事は何か、それをほんの少しだけ思い出そうとしたがなかなか出てこなかった。

 

「私の望みはほとんど叶ったかな」

 

「え?」

 

「だって愛する人と結ばれて子を宿して、毎日が賑やかで幸せ。私の母様が目指した世の中になったわ。これ以上望むものがあればそれは贅沢よ」

 

 何もかもが満たされている雪蓮にとって願うことは特にないと思った。

 

「あ、でも」

 

 だが完全にないというわけではなかった。

 

「そうね。これは望みというべきなのかわからないけれど、一度でもいいから天の国で一刀とデートしたいかな」

 

 未だに女性としての魅力に磨きがかかり尚華が思わず見惚れてしまうほど、雪蓮の微笑みは幸せだった。

 

「父上様の故郷ですか」

 

「きっと私達の知らないいろんなものがそこにあると思うの。でも、そんな中で私は一刀と一緒にいて笑って泣いて時には喧嘩もするけど、とても幸せな毎日を送りたいかしら」

 

 雪蓮はゆっくりと酒の呑み夜空を眺めた。

 

 と、その時だった。

 

 一筋の光りが夜空を駆け抜けていった。

 

 すると、一つ、また一つと流れ星が同じ方向へ駆け抜けていく。

 

「尚華、早く願いなさい」

 

「は、はい」

 

 二人は慌てて両手を重ねて瞼を閉じて願いを心の中で唱えた。

 

「流星群かぁ」

 

 祈っていた二人は願いを唱えることを中断して後ろを振り向くと一刀や蓮華、冥琳、氷蓮などといった『家族』全員がそこにいた。

 

「まさかこの時代で見られるとは思わなかったな」

 

 一刀は両手をあわせて瞼を閉じてこう言った。

 

「いつまでもみんなといられますように」

 

 その言葉の意味を瞬時に理解できたのは雪蓮だけだった。

 

「一刀を独占できますように♪」

 

 雪蓮は面白おかしく願いを言うと周りから非難の声が上がった。

 

「独占はどうかと思うわよ」

 

「そうです、一刀は私達全員の大切な人です」

「なら貴女達も願いなさいよ」

 

 雪蓮のそう言われた蓮華達は一刀と同じようにそれぞれの願いを口にしていく。

 

「一刀ともっと一緒にいられますように」

 

「旦那様がいつまでも元気でいてくだされますよに」

 

「一刀と美味い酒をもっと呑めますように」

 

「恋殿~~~~~!」

 

「このバカ旦那がこれ以上、暴走しませんように」

 

 聞けば聞くほどおかしな願いも聞こえてきたため一刀と雪蓮、それに尚華は苦笑いを浮かべる。

 

「父上様」

 

「うん?」

 

「私も願いました」

 

「お、どんなのを願ったんだ?」

 

 娘が何を願ったのか気になる一刀に尚華は手招きをして近くに来てもらった。

 

「それはですね」

 

 一刀の耳元に顔を寄せていき、こう囁いた。

 

「ずっと父上様と母上様、雪蓮様達と幸せに暮らしたいです」

 

 そう言って尚華は一刀の頬に不意打ちの口付けをした。

 

「しょう……か?」

 

 頬を紅く染めた尚華の表情は微笑みに満ちていた。

 

「「「「「あ~~~~~!」」」」」

 

 だがこういう時に限って見られるのはもはやお約束になっているらしく、その場にいた全員に見られていた。

 

「一刀ったらとうとう娘に手を出したのかしら?」

 

「な、なんでそうなるんだよ。ただのスキンシップだろう?」

 

「知らないわよ!」

 

「パパ~私もしてあ・げ・る♪」

 

 氷蓮が飛びつき同じように頬に口付けをしていく。

 

「こ、こら、子供がそんなことをしたらダメよ」

 

 注意しながらも隙をうかがう蓮華。

 

「はいはい、ここは公平に一人ずつってことでどう?」

 

 雪蓮の提案に全員が一瞬の考えもなく即答した。

 

「「「「「わかりました「わかった」」」」」

 

「あ、あの、俺の意見は?」

 

「あら、そんなものあったかしら♪」

 

 何とか回避しようとする一刀に雪蓮はしっかりと退路を絶つ。

 

「とりあえず今日は無礼講よ♪」

 

 正妻の許しが出たため誰もが遠慮することなどなくなった。

 

「酒も持ってくるかの」

 

「では何か作りますね」

 

 もはや宴会へなだれ込んでいく一行は屋敷の中に入っていった。

 そして雪蓮は心の中でこう思った。

 

(一刀、ずっと愛しているわ)

 

 星降る夜、一刀達の屋敷はそのまま夜遅くまで灯りが消えることはなく賑やかな時間が流れ星と同じく流れていった。

(座談)

 

水無月:というわけで急遽、番外編をお届けいたしました。

 

雪蓮 :流星群ってたしか夜中から明け方だったかしら?

 

水無月:確かそうだったはずです。最近は何かと物思いにふけることがあるのでふと見上げると気持ちがいいですよ。

 

雪蓮 :あなたの願いはあるの?

 

水無月:願いがありすぎて困っています。雪蓮さんはどうですか?

 

雪蓮 :愚問でしょう♪

 

水無月:あ~そうでしたね。失礼しました。

 

雪蓮 :星を見ながら呑むお酒も一興よ。

 

水無月:そうですね~。皆さんもこの機会に流れ星を見つけてはいかがでしょうか?

 

雪蓮 :それじゃあまたね♪


 
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