No.1012913 英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~soranoさん 2019-12-16 01:16:56 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2697 閲覧ユーザー数:2211 |
~隠れ里エリン・ロゼのアトリエ~
「まず”新Ⅶ組”とは、今から約2年後にトリスタとは逆の位置にある帝都近郊の都市――――――”リーヴス”に建てられる”トールズ第Ⅱ分校”の学級の一つよ。」
「ト、トールズの”分校”ですか?」
「しかもその”新Ⅶ組”はオレ達”Ⅶ組”の後輩に当たると言っていたが…………もしかして”旧Ⅶ組”というのはオレ達の事か?」
レンの説明を聞いたエリオットは戸惑い、ガイウスは目を丸くして訊ねた。
「ええ。ちなみに旧Ⅶ組が通っていた”本校”である”トールズ士官学院”は帝国政府――――――いえ、”鉄血宰相”の意向によって完全に軍事学校と化したそうよ?」
「何ですって!?」
「ハハ…………宰相殿ならやりそうだね…………それよりも、もしかしてその”第Ⅱ分校”の設立には私が関わっているのかい?」
驚愕の事実を知った周囲の者達がそれぞれ血相を変えている中サラは厳しい表情で声を上げ、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子は表情を引き締めてレンに確認した。
「うふふ、さすが”Ⅶ組”の設立者だけあって察しがいいわね。――――――ちなみにその頃のオリヴァルト皇子は鉄血宰相達帝国政府によって”ヴァンダール家”の代々の使命であった皇族の守護職の任が解かれた事でミュラー少佐も当然護衛から外された事で、オリヴァルト皇子の政治的立場も非常に弱いものになった為、”最後の悪あがき”として本来のトールズの意志を受け継がせる為にも”トールズ第Ⅱ分校”を設立したそうよ。」
「……………………”本来の歴史”でもヴァンダール家の使命はオズボーン宰相達によって解かれていたのか…………」
本来の歴史でもヴァンダール家の使命が解かれている事を知ったミュラー少佐は複雑そうな表情で呟き
「で、”トールズ第Ⅱ分校”の設立には当然帝国政府の思惑もあったお陰で無事設立されたそうよ。まあ、その思惑というのがいかにも鉄血宰相らしい思惑だったけどね。」
「…………オズボーン宰相達は一体どのような考えがあって、第Ⅱ分校の設立を許可したのでしょか?」
意味ありげな笑みを浮かべて答えたレンの答えが気になったアルゼイド子爵は真剣な表情で訊ねた。
「ちょうどセドリック皇太子が入学する事になると同時に徹底改革される事になった”トールズ本校”。そこで受け入れられない厄介者や曰く付きをまとめて使い潰す為の”捨石”。――――――それがトールズ第Ⅱ分校に求める帝国政府の思惑よ。」
「す、”捨石”って…………!」
「しかも皇太子殿下が入学する時期にトールズを徹底改革するという事は、まさかとは思うが本来の歴史の皇太子殿下はオズボーン宰相寄りの考え方をされているのでしょうか?」
不敵な笑みを浮かべたレンの答えにその場にいる全員が血相を変えている中アリサは信じられない表情で声を上げ、ユーシスは重々しい様子を纏って呟いた後レンに訊ねた。
「うふふ、鉄血宰相寄りの考え方どころかその頃の皇太子はすっかり鉄血宰相に心酔していて、新たなる”鉄血の子供達(アイアンブリード)”の一員になっていたそうよ?」
「なっ!?皇太子殿下が…………!?」
「…………セドリックは昔から宰相殿に憧れているフシはあったが、まさか本来の歴史の約2年後には”子供達”の一員にまでなっていたとはね…………」
本来の歴史のセドリック皇太子の状況を知った事で再びその場にいる全員が血相を変えている中ラウラは驚きの声を上げ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で肩を落とした。
「話を第Ⅱ分校の件に戻すけど、第Ⅱ分校に集められた生徒もそうだけど教官陣も”厄介者”か”曰く付き”の人物でね。Ⅶ組の担当教官として赴任したリィン・シュバルツァーも当然その一人よ?」
「ええっ!?リ、リィンがⅦ組の”担当教官”に…………!?」
「という事はサラはたった2年でリィンに追い抜かれて”教官”を”クビ”になったって事?」
「何でそこでわざとらしくあたしの名前を挙げるのよ!?第一トールズがあのオズボーン宰相による徹底改革されたって話なんだから、絶対自分から教官を辞めているわよ!」
更なる驚愕の事実を知ったエリオットが驚きの声を上げた後ジト目で呟いたフィーの発言にその場にいる全員が冷や汗をかいて脱力している中サラは顔に青筋を立てて反論した。
「うふふ、それに関しては”紫電”のお姉さんの言う通り、サラ・バレスタインは自分の意志でトールズ本校の教官を辞めて遊撃士に戻っているわ。本来の歴史の流れで言う今年の3月末にね。」
「へ…………という事は”本来の歴史の流れ”だとサラ教官は今年の3月末に教官を辞めているんですか!?」
「”Ⅶ組”の担当教官の癖に、俺達の卒業まで教えずに自分から辞めるとは、普段から自分勝手かつ無責任な教官とは言え、幾ら何でもあまりにも酷すぎるな。」
「うっさいわね!?それは本来の歴史のあたしで、今のあたしとは関係のない話よ!」
レンの説明を聞いたマキアスが驚いている中呆れた表情をしたユーシスに視線を向けられたサラは顔に青筋を立てて反論した。
「クスクス、サラ・バレスタインに限らず”リィン・シュバルツァー以外のⅦ組全員”も今年度の3月末までに本来2年の卒業までに学ぶ内容も全て詰め込みで学んで、トールズを”卒業”したらしいわよ?」
「オレ達まで…………」
「それもリィンを残して全員トールズを卒業するなんて、一体何があってそんなことになったのよ…………」
レンの答えを聞いたガイウスが呆けている中、セリーヌは疲れた表情で呟いた。
「そのリィン・シュバルツァーは内戦終結から鉄血宰相――――――いえ、帝国政府の思惑によって様々な要請(オーダー)を受けていたらしいから、そんなリィン・シュバルツァーを支える為にも早くトールズを卒業して自分達の力を更につけて、リィン・シュバルツァーを支える為だったそうよ?」
「リィンの為に…………」
「本来の歴史のリィンさんは何故帝国政府の思惑通りに動いていたのでしょうね…………?」
「ハッ、大方ギリアスの野郎の事だからリィンが動かざるを得ない状況に追い込んだに決まっているだろうが。」
説明を聞いたアリサが複雑そうな表情をしている中、不安そうな表情で疑問を口にしたエマの疑問に鼻を鳴らしたクロウは不愉快そうな表情で答えた。
「ええ、その点に関しては”C”の言う通りよ。――――――話がまた逸れ始めてきたから戻すけど、第Ⅱ分校の他の教官陣は元特務支援課の一員であったランディお兄さん――――――ランドルフ・オルランド、トールズ本校卒業後『帝国の未来』を見極めるための勉強として帝国各地の 非政府組織 ( NGO ) 活動に参加していたトワ・ハーシェル、主任教官は鉄道憲兵隊所属の”不撓(ふとう)”の異名を持つミハイル・アーヴィング少佐、特別顧問としてG・シュミット博士、そして分校長は”黄金の羅刹”オーレリア・ルグィン元将軍よ。」
「ふえっ!?わ、わたしまでその第Ⅱ分校の教官に…………!?た、確かに卒業後非政府組織 ( NGO ) の活動に参加する事も進路の一つとして考えていましたけど…………」
「クッ…………教官服姿のトワも是非見たかったよ…………!その点に関しては本来の歴史の私に嫉妬してしまうよ…………!」
「し、しかもシュミット博士までそのトールズ第Ⅱ分校に関わっているなんて…………」
「…………博士の事だから間違いなく目的は自分の”研究”関連でしょうね。」
「鉄道憲兵隊のミハイル少佐というと…………西部での活動の時に協力してくれた彼か。」
「彼に関しては間違いなく宰相殿達帝国政府からの”監視役”だろうねぇ。リィン君やランディ君もそうだが、何よりも”分校長”が帝国政府が最も警戒すべき人物との事だしね。」
「…………まさかあのオーレリアがその第Ⅱ分校とやらの分校長とは、私も今の話を聞いた時は正直驚きました。」
「フフ、あの将軍が士官学院の分校長になるなんて、一体本来の歴史では何があったのか個人的には気になるわね。」
説明の中で自分の名前まで挙がった事にトワが驚いている中アンゼリカは悔しがり、驚きの表情で呟いたマキアスの言葉を聞いたアリサは複雑そうな表情で推測し、ある人物に心当たりがあるミュラー少佐はその人物を思い浮かべ、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子に続くようにアルゼイド子爵とクロチルダは苦笑しながら答えた。
「――――――話を続けるわ。内戦後のエレボニアは共和国や結社、そしてそれらに連動するかのように帝国の領土内で動き始めている多数の猟兵団。当然帝国政府はそれらに対する警戒レベルを上げたけど、同時に一部の地域の警戒レベルが低下したから、第Ⅱ分校に体裁として”特別演習”という形でその警戒レベルが低下した地域に向かわせる事で第Ⅱ分校を”抑止力”として利用していたらしいわ。――――――まあ、最初の演習地の初日から早速”実験”の為にその地を訪れていた結社に”脅し”として第Ⅱ分校が襲撃されたらしいから、”抑止力”になっていないと思うけどね♪」
「しょ、初日から結社に”脅し”の為に襲撃されたって…………」
「私達や君達の”特別実習”なんて比べ物にならないくらいのハードさだねぇ。」
レンの説明を聞いたエリオットは表情を引き攣らせ、アンゼリカは疲れた表情で呟いた。
「で、成長した”旧Ⅶ組”は第Ⅱ分校の演習地に”まるで示し合わせたかのように偶然助太刀して、その後に帝国政府が結社の件関連でリィン・シュバルツァーに指示をした要請(オーダー)に協力した”らしいわ。クスクス、一体誰が関係者以外情報が制限されている第Ⅱ分校の演習地を知って、それを旧Ⅶ組に連絡したのでしょうねぇ?」
「そ、それってもしかして…………」
「ハハ…………状況から考えてその人物というのは私の事だろうねぇ。」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの問いかけを聞いてすぐに察しがついたトワは目を丸くし、オリヴァルト皇子は苦笑していた。
「ちなみにキーアが”識って”いる限りでは”特別演習”は4回あったそうでね。1度目の場所はサザ―ラント州セントアーク地方で、その時にかけつけた旧Ⅶ組メンバーはトールズ卒業後帝都の音楽院に入学して専門的なレッスンを集中的に受けて1年という短期間で卒業してプロの音楽家として帝国各地を巡業していたエリオット・クレイグ、卒業後父親と共に修行の道に入って19歳という若さで”アルゼイド流”の”皆伝”と同時に”師範代”の資格を得た後武者修行も兼ねて各地にある練武場を回っていたラウラ・S・アルゼイド、そして卒業後サラ・バレスタインやトヴァル・ランドナーの指導のもとで若干16歳で”正遊撃士”の資格を取得して遊撃士としての活動で帝国各地を回っていたフィー・クラウゼルよ。」
「僕がたった1年で音楽院を卒業するなんて…………」
「ほう…………?本来の歴史の流れの私はそのような早さでアルゼイド流を”皆伝”していたのか…………」
「ふふっ、ならば其方は本来の歴史の流れよりも早く”アルゼイド流”を”皆伝”するように精進するべきだな。」
「父上…………はい…………!」
「”遊撃士”…………わたしが?」
レンの話を聞いたエリオットは目を丸くし、ラウラは興味ありげな表情をした後アルゼイド子爵の言葉を聞くと明るい表情を浮かべて頷き、フィーは不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。
「2度目の場所はクロスベル。その時にリィン・シュバルツァーに協力した旧Ⅶ組メンバーはトールズ卒業後実家の運営を手伝う道を選択して、顧問として復帰した祖父や使用人に支えられながらマネジメントを学んでシニアマネージャーとしての資格を得た後、ARCUSⅡと魔導杖部門の責任者に就任したアリサ・ラインフォルト、卒業後父とは異なる道に進むことを考えて帝国の政治学院へと進んで僅か1年で必要単位を修得後、19歳という異例の若さで『司法監察院』入りを果たして帝国各地で監察業務を行っているマキアス・レーグニッツ、そして卒業後消息不明になった蒼の深淵を本格的に探す為に故郷で秘術と帝国にまつわる歴史を”長”から学んで一人前の”魔女”として認められ、”蒼の深淵”の行方を追いつつも魔女と地精が築いた場所を探し求める旅をしていたエマ・ミルスティンよ。」
「私が”室長”に…………それに”ARCUSⅡ”は名前からして、間違いなく”ARCUS”をより進化させた戦術オーブメントなんでしょうね。」
「『司法監察院』か…………確かに内戦の件でオズボーン宰相――――――帝国政府に疑念を抱いた今の僕なら帝国に”何が起ころうとしているのか”を探る為にもその進路に進んでいたかもしれないな…………」
「私は姉さんや魔女と地精が関係する場所を探す旅を…………」
「…………アタシ達に関しては今回の件がなかったら、この世界のアタシ達も本当にそうなっていた可能性は高かったでしょうね。」
「というか本来の歴史の流れでも、相も変わらず放蕩しておるのか、放蕩娘(ヴィータ)は…………」
「フフ、恐らくだけどその頃の私は『黒の工房』の実態やオズボーン宰相の正体を探っていたのでしょうね。――――――実際、あの内戦の後は今回の戦争が起こらなければそのつもりだったもの。」
本来の歴史の流れの自分達の事を知ったアリサ達がそれぞれ考え込んでいる中、セリーヌは静かな表情で呟き、呆れた表情をしたローゼリアに視線を向けられたクロチルダは苦笑しながら答えた。
「3度目の場所はオルディス地方で、リィン・シュバルツァーに協力した旧Ⅶ組メンバーは担当教官だったサラ・バレスタインを含めた残りの4人よ。ちなみに4度目の場所は帝都(ヘイムダル)で、その時は新旧Ⅶ組が全員で協力した――――――以上よ。」
「ちょっと!?何であたし達の事についての説明だけ省略するのよ!?」
「まあ、残りの面子を考えればわざわざ説明を聞かなくてもどのような進路に進んでいるのか、大体は想像できると思うがな。」
「サラ教官は遊撃士に復帰、ユーシスは実家である”アルバレア公爵家”での領主関連の仕事、ミリアムは情報局としての活動、そしてオレは共和国と帝国の関係が更に悪化した事で、故郷や家族を守る為にノルドで活動…………といった所だろうか?」
そしてアリサ達と違って更に説明を省略したレンの話にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中サラは文句を口にし、ユーシスは静かな表情で答え、ガイウスはレンに確認した。
「大体は合っているけど、ガイウスお兄さんに関しては本来の歴史の流れではここにいる誰もが予想もしていなかった未来が待っていたのよ?」
「へ…………ガ、ガイウスが?」
「一体本来の歴史の流れのオレにはどのような未来が待っているのだろうか?」
レンの答えを聞いたエリオットが困惑している中ガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。
「本来の歴史の流れのガイウス・ウォーゼルは”とある出来事”で瀕死になって死ぬ直前になってしまった人物から”あるもの”を受け継いで、とある組織での”特別な存在”になったそうよ。その特別な存在とは――――――守護騎士(ドミニオン)第八位で、渾名は”絶空鳳翼”との事よ。」
「ハアッ!?」
「ド、守護騎士(ドミニオン)という事は本来の歴史の流れではガイウスさんはトマス教官と同じ存在に…………」
「本来の歴史の流れではオレがトマス教官と同じ守護騎士(ドミニオン)に…………一体本来の歴史では何があったのだ…………?」
「ちょ、ちょっと待ってください!ガイウス君が守護騎士(ドミニオン)になる話にも驚きましたが、その話の流れ通りですと本来の歴史では”現在生存している第八位”が死亡する直前にガイウス君に聖痕(スティグマ)を受け継がせたのですか!?」
驚愕の事実を知ったセリーヌは仲間達がそれぞれ驚いている中思わず声を上げ、エマは信じられない表情でガイウスに視線を向け、ガイウスは呆け、トマスは慌てた表情でレンに確認した。
「ええ。ちなみにその”現在存在している第八位の守護騎士”――――――確か”渾名”は”吼天獅子”だったかしら?本来の歴史ではその人物はノルド高原で”第七”の防衛戦を突破した共和国軍の船がノルドの民の集落を襲った時に、故郷を守る為に戦っていたガイウス・ウォーゼルをかばって致命傷を負った後さっきも説明したように息を引き取る直前にガイウス・ウォーゼルに自身の”聖痕”を託したらしいわ。」
「そのような事が本来の歴史では起こっていたのですか…………この世界ではメンフィル・クロスベル連合によって共和国が滅亡した事でその可能性がなくなりましたから、”第八位”の件に関して零の御子に感謝すべきかもしれませんね…………」
「ノーザンブリアにとって”恩人”でもあるあの”吼天獅子”が本来の歴史の流れではガイウスを庇って死ぬことになっていたとはね…………」
レンの説明を聞いたトマスとサラはそれぞれ複雑そうな表情を浮かべた。
「”吼天獅子”、だったか。何故その守護騎士(ドミニオン)は自身の身を犠牲にしてまでオレを庇って”聖痕”とやらを託したのだ…………?」
「さあ?それこそ女神――――――いえ、”零の御子のみぞ知る”、よ♪」
ガイウスの疑問に対して肩をすくめた後小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えにその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「で、肝心の”新Ⅶ組”のメンバーだけど一人目はユウナ・クロフォード。内戦終結後ルーファス・アルバレア率いる征伐軍によって電撃的に占領されて帝国領となったクロスベルの出身よ。ちなみにルーファス・アルバレアはクロスベル占領後クロスベルの”総督”に就任して、ルーファス・アルバレアがクロスベルの総督を務めている事で、ユーシス・アルバレアは”領主代行”としてクロイツェン州を纏めていたそうよ。」
「ええっ!?ル、ルーファスさんがクロスベルの”総督”に!?」
「兄上…………」
新たなる驚愕の事実を知ったエリオットが驚きの声を上げている中ユーシスは複雑そうな表情でルーファスを思い浮かべた。
「二人目は皇族の守護職の任が解かれた事で皇太子の専属護衛から解かれて今後自分はどのような道に進めばいいのか迷っていた所に兄ミュラーの勧めを受けて”本校”の入学を取り止めて第Ⅱ分校に入学したクルト・ヴァンダール。」
「クルトが…………確かにそのような状況であったのであれば、俺はクルトにそのような勧めをしたのかもしれないな。」
レンの話でクルトや自分まで出たことに目を丸くしたミュラー少佐は静かな表情で本来の歴史の自分の考えをすぐに悟って納得した。
「そして3人目は”情報局”の指示によって生徒として派遣される事になった”黒兎(ブラックラビット)”アルティナ・オライオン。ちなみに”黒兎”は内戦後リィン・シュバルツァーの行動監視兼サポートの為に、リィン・シュバルツァーが要請(オーダー)で行動する時は毎回リィン・シュバルツァーのパートナーとしてリィン・シュバルツァーと共に行動していたそうよ。」
「本来の歴史の流れではアルティナちゃんまで”Ⅶ組”の一員だったんですか…………」
「歪められた歴史である今の状況でも、リィン君達の傍にいるのですから、形は違えど彼女がリィン君の傍にいるという事はひょっとしたら、リィン君と彼女の”縁”は深いのかもしれませんね…………」
本来の歴史の流れではアルティナまで”Ⅶ組”の一員であった事を知ったアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エマとトマスは複雑そうな表情でアルティナを思い浮かべた。
「で、”新Ⅶ組”メンバーは後に”旧Ⅶ組”の”白兎(ホワイトラビット)”と”C”のように別の学級から移動してくる人達が二人いてね。その内の一人はトワ・ハーシェルが担当していたクラスの生徒であり、当時は名前と正体を偽っていたミュゼ・イーグレットよ。」
「ふえっ!?ほ、本来の歴史のわたしが担当していたクラスの…………?しかも名前が”ミュゼ”でファミリーネームが”イーグレット”という事はもしかしてその人物って…………」
「間違いなく私達が知るミュゼ君――――――ミルディーヌ公女の事だね。」
ミュゼの事を知ったトワは驚いた後困惑の表情を浮かべ、アンゼリカは静かな表情で答えた。
「最後の一人はラクウェル出身にしてランドルフ・オルランドが担当していたクラスに所属していたアッシュ・カーバイドよ。」
「”アッシュ・カーバイド”…………その名前は確か”ハーメルの遺児”の一人にして”呪い”によって皇帝陛下を銃撃した…………」
「まさか本来の歴史の流れではアッシュまで”Ⅶ組”の一員だったとはね…………という事は本来の歴史の流れではアッシュが”呪い”によって皇帝陛下を銃撃しなかったのかしら?」
アッシュの事を知ったアルゼイド子爵が真剣な表情をしている中複雑そうな表情で呟いたサラはレンに訊ねた。
「残念ながら呪いに侵されたアッシュ・カーバイドがユーゲント三世を銃撃する事に関しては、形は違えど同じだそうよ?」
「何じゃと?小娘、先程”本来の歴史の流れは今よりももっと酷い状況”と言ったな?という事は”巨イナル黄昏も本来の歴史の流れでも起きていたのか?”」
レンの答えを聞いたローゼリアは眉を顰めた後目を細めてレンに訊ねた。
「ええ。――――――まあ、”この場にいる人達の中の内3人が本来の歴史の流れだと巨イナル黄昏が起きる前に死亡するか、生死不明の状況”になるそうだけどね。」
「な――――――」
「何ですって!?」
「こ、”この場にいる人達の中の内3人が本来の歴史の流れだと巨イナル黄昏が起きる前に死亡するか、生死不明の状況”になるって事は、本来の歴史の流れだと僕達の中から3人も死んだか、生死がわからない状況になるんですか!?」
レンが口にした驚愕の事実を知ったその場にいる全員が血相を変えている中オリヴァルト皇子は驚きのあまり絶句し、サラは厳しい表情で声を上げ、エリオットは信じられない表情で訊ねた。
「そうよ。まず一人目は”新Ⅶ組”の活動に”旧Ⅶ組”と共に手を貸している過程で”蒼のジークフリード”と出会った事である疑念を抱いて行動に出たアンゼリカ・ログナーよ。」
「………………………………」
「ア、アンちゃんが…………!?」
「アンゼリカさんが”蒼のジークフリード”の事を知ってある疑念を抱いて行動に出たって仰いましたけど…………もしかして、アンゼリカさんの件は”黒の工房”が関係しているのですか?」
レンの答えを聞いたアンゼリカが驚きのあまり呆けている中トワは表情を青褪めさせて声を上げ、アリサは不安そうな表情で訊ねた。
「ご名答♪アンゼリカ・ログナーは帝都近郊のヒンメル霊園に眠る”C”の遺体を掘り返して”C”の遺体を調べた結果遺体が偽物である事に気づいた直後に、”口封じ”をする為に”銅のゲオルグ”によって銃撃されたそうよ。」
「な――――――」
「そ、そんな…………本来の歴史だとジョルジュ君がアンちゃんを…………」
「…………ゼリカを銃撃したのはジョルジュ――――――いや、”ゲオルグ”の意志か?それともアルベリヒが関わっているのか?」
更なる驚愕の事実を知ったアンゼリカは絶句し、トワは悲痛そうな表情をし、クロウは真剣な表情で訊ねた。
「”どっちも正解よ。”ヒンメル霊園には”銅のゲオルグ”に”黒のアルベリヒ”も同行していたそうでね。”知り過ぎてしまったアンゼリカ・ログナーを始末する必要があると判断したアルベリヒの指示とアルベリヒ同様アンゼリカ・ログナーを始末する必要があると判断したゲオルグの意志”によって、アンゼリカ・ログナーはゲオルグに銃撃され、銃撃後は遺体になったかまだ生きているか知らないけど、銃撃されたアンゼリカ・ログナーの肉体や”偽物のCの遺体”も持ち去ったとの事だから、アンゼリカ・ログナーは生死不明になったそうなのよ。」
「アンゼリカさんの件に”あの人”まで関わっていたなんて…………」
「アリサさん…………」
レンの答えを聞いて辛そうな表情を浮かべるアリサをエマは心配そうな表情で見守っていた。
「そしてユーゲント三世が銃撃された後みんなも知っているように”星杯”が出現し、新旧Ⅶ組はこの世界同様先に”星杯”に入った鉄血宰相達を止める為かつ情報局の謀によって拉致された”黒兎”を救う為に”星杯”に突入したのよ。」
「へ…………じゃ、じゃあ本来の歴史ではミリアムじゃなく、”黒兎”が”根源たる虚無の剣”に選ばれたんですか!?」
説明を続けるレンの話を聞いてある事に気づいたマキアスは驚きの表情で訊ねた。
「ええ。――――――とはいっても、本来の歴史の流れの”白兎”も”黒兎”を守る為にこの世界で起こった出来事同様”黒き聖獣”との戦いで追い詰められたリィンお兄さん達や”黒兎”を庇って命を失った事で”根源たる虚無の剣”になったそうだけどね。」
「そ、そんな…………それじゃあ正しい歴史でもミリアムが死ぬことは決まっていたって事になるじゃないですか…………」
「チッ、まさにクソッタレな話だな。」
ミリアムに関するある事実を知ったアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは悲痛そうな表情をし、クロウは舌打ちをして不愉快そうな表情をした。
「で、ここからがアンゼリカ・ログナーに続く肝心の”犠牲者”の話に続くのだけど…………”星杯”出現後、帝都での異変を知ったオリヴァルト皇子がこっちでの出来事のようにカレイジャスで”星杯”に向かったのだけど…………”星杯”に到着した直後、”ある人物”が起爆スイッチを押した事で”カレイジャスにあらかじめ仕掛けられた爆薬によってカレイジャスが爆散した為、その際にオリヴァルト皇子は艦長のアルゼイド子爵やサポーターとして同乗していたトヴァル・ランドナー、そしてカレイジャスの乗組員達と共に爆死したそうよ。”」
「な――――――」
「何ですって!?」
「「…………………」」
「という事は”オリヴァルト殿下達が亡くなる事が本来の歴史の流れ”だと仰るのですか…………!?」
「しかも父上やトヴァル殿まで…………」
「そのカレイジャスを爆破したっていう”ある人物”は一体誰なの?」
更なる驚愕の事実を知った事で周りの者達が血相を変えている中ミュラー少佐は絶句し、サラは厳しい表情で声を上げ、オリヴァルト皇子は呆け、アルゼイド子爵は目を伏せてそれぞれ黙り込み、ユーシスは厳しい表情をし、ラウラは辛そうな表情を浮かべ、フィーは真剣な表情で訊ねた。
「起爆スイッチを押したのは”黒のアルベリヒ”だけど、カレイジャスに爆薬を仕掛けたのは”銅のゲオルグ”よ。」
「…………………っ!オリヴァルト殿下達の件にまで”あの人”が関わっていたなんて…………!」
「そ、それに…………本来の歴史ではジョルジュ君がカレイジャスに爆薬を仕掛けていたなんて…………」
「どうやら次にジョルジュ――――――いや、ゲオルグもそうだがアルベリヒに会った時は本来の歴史で起こった事で犠牲となった”私”や殿下達の無念を晴らしてあげる為にも徹底的に叩き潰す必要がありそうだね…………!」
レンの説明を聞いたアリサは息を呑んだ後トワ同様悲痛そうな表情を浮かべ、アンゼリカは怒りの表情で自身の両腕の拳を打ち付けて闘志を燃やした。
「そしてオリヴァルト皇子達の死、白兎(ホワイトラビット)の死と連続で起こった悲劇によってついに”鬼の力”を暴走させてしまったリィン・シュバルツァーはこっちの世界での出来事同様、ヴァリマールで”剣”と化した”白兎”を掴んだ後”黒き聖獣”を殴り殺しにしたて”巨イナル黄昏”を発動させた後、皇太子同様”呪い”に侵された身になると”黒の騎神”を顕現させた鉄血宰相によって連れ去られた。――――――これが本来の歴史で起こった”終焉の御伽噺”に続く為の”歴史の流れ”よ。」
「そ、そんな…………それじゃあ本来の歴史では皇太子殿下ではなく、リィンが…………」
「…………確かに小娘の言う通り、本来の歴史の方が”今”よりも更に酷い状況じゃし、エマ達にとってもそうじゃが”灰”の小僧にとっても”最悪の流れ”と言っても過言ではないの。」
「形は違えどリィン君がⅦ組(エマ達)と離れる事になる事に関しては同じだなんて、皮肉な話ね…………」
「ハハ…………もしクロスベルでキーア君に出会う事があれば、お礼を言っておく必要がありそうだね…………」
レンが説明を終えるとエリオットは悲痛そうな表情で呟き、ローゼリアは重々しい様子を纏い、クロチルダは複雑そうな表情でアリサ達を見回し、オリヴァルト皇子は疲れた表情でそれぞれ呟いた。
「”並行世界の零の御子”が”因果律を操作して正しい歴史を今の歪められた歴史に変えた”って、言っていたけどもしかして”零の御子”の目的は本来の歴史で起こる悲劇を避ける為かしら?」
「まあ、今の話を聞けばそう思うかもしれないけど、多分その推測は間違っていると思うわよ。――――――だって、”零の御子――――――キーアが最優先で因果律を変えると思われる対象は特務支援課とクロスベル”なんだから、リィンお兄さん達の件はその因果律を変える上での副次的に発生する影響だと推測されるわ。」
「何?何故”零の御子”とやらはその特務支援課とクロスベルの為にそれ程の”奇跡”を起こしたのじゃ?」
セリーヌの疑問に苦笑しながら答えたレンの答えが気になったローゼリアは眉を顰めて訊ねた――――――
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第56話