幽州を統治してから1ヶ月目の夜、俺は眠れず部屋に置き忘れた煙草を取りに、自分の執務室に向かった。
(ん、人の気配・・・今は深夜、人などましてや俺の執務室に人などいないはず・・・)
俺は慎重に部屋のノブに手をかけ、開けてみる。
誰もいない・・・確かに人の気配がしたはず。
俺は執務室の明かりをつけ、辺りを確認するが誰もいない。
ふと、執務机の上に紙が置いてあった。
おかしい・・・確かに俺は書類を片付けたはず。
机の紙を持ってみるとその紙は封筒だった。
俺は裏を見たとき驚きを隠せなかった。
裏には英語で『Kazuto Hongou 』と書かれていた。
しかもコイツはこの筆跡は!!
俺は慌てて封筒を開け手紙を取り出す。
内容も英文で書かれていた。
『二人だけで話がしたい、明日、20時に、近くの森で待つ
ソリッド・スネーク』
「そんな・・・馬鹿な!?!?!?!?」
俺の動揺は凄まじいものだった。
だってそうだろ、死んだはずの師匠からの手紙。
しかも、次元を越えて遥々、幽州の俺の執務室に届いたんだ。
しかも、英文で師匠の直筆・・・
ありえない・・・が・・・ありえない事が立て続けにおこっては信じてしまいそうになる。
真意を確かめてみるか・・・
翌日・・・
俺は、一通り執務を終わらせ、自分の部屋に戻り、自分のトランクからスニーキングスーツを取り出し、着替える。
CQCナイフを後腰のナイフの鞘に入れ、白鷹を右レッグホルスターに収め、マガジンをポーチに収める。
ホワイトコートを着込み、誰にも気づかれないように外へ出る。
体内通信は勿論カットした。
暫く歩いていると、森の入り口に差し掛かる。
俺は白鷹と白牙を引き抜き、同時に構え全集警戒をしながら森へと入っていく。
小川の辺に差し掛かった時、視界に蘭の花畑が広がっていた。
全集警戒を怠らず開けた中央まで進む。
「待たせたな・・・」
突如、聞き覚えのある、力強い老人の声が月夜の静寂を切り裂いた。
その声は静かでありながら、とてつもない力を秘めていた。
「そんな・・・貴方はあの時死んだはず!? どうしてだ!? 師匠!?」
俺はまさか? と言う感情と、やはり! と言う感情がない混ぜになっていた。
「ある仙道に無理やり生かされた。いや・・・ここにいるのは魂の自由を奪われた。人形だ」
「人形?」
「そう、そして・・・お前を殺す目的で作り出された人形だ」
そういい師匠は『パトリオット』を片手で構え、CQCナイフを左手に持ち構える。
(なんて闘気だ!! 本当に紛い物かよ!?)
「お前に技術を教えた、知識を教えた、戦うすべを、俺の過去さえも・・・俺はお前を息
子と思いその持てる技術と知識をお前に授けた。後は俺の命を、お前が奪え、自分の手で・・・
どちらかが死に、どちらかが生きる。生き残ったものが後を継ぐ、俺達はそういう宿命・・・
伝説を継いだものは新たな戦いへと、終わり無き戦いへ漕ぎ出して行くのだ」
「さあ・・・行くぞ!!!!」
俺達の戦闘は始まった。
師匠はパトリオットを片手で乱射し、5.56mmの弾幕の壁を作り上げる。
「クッ!?」
俺は全力で横っ飛びしながらかわし、白鷹を乱射するが、此方も綺麗にかわされ、パトリオットのお返しを大量にもらう。
俺は5.56mmで体を傷だらけにしながら何とか除ける。
「その程度か? 一刀!!」
そう言い、一気に俺の視界から消える。
(嘘だろ!?)
俺は辺りを見回したが、それが隙になった。
師匠は俺の右側面から接近し、俺の右脇に腕を通し右肩を押し、右足を同時に払った。
俺は受身も取れないまま勢いよく背中から地面に叩きつけられた。
「がは!?!?!?!?!?!?」
肺の中の酸素が一気に吐き出される。
俺は一瞬意識を飛ばされながらも立ち上がり、パトリオットの銃口から逃れる。
逃れた直後、多数の5.56mmの弾丸が俺の寝ていたところに吐き出される。
「糞!!!! 手加減なしかよ!?」
俺は師匠の左側面に移動し、左の手の甲を外側に捻り上げようとするが、パトリオットのグリップ底部で後頭部を叩かれ、鳩尾に膝蹴りをもらい、襟を前側に力の限り引っ張られ、同時に左足を払われ、うつ伏せに倒される。
「グフ!?!?!?!?」
俺は悪あがきとばかりに、足払いをするが、顔面に蹴りをもらい転げるように吹っ飛ばされる。
「グファ!!!!!!?????」
師匠は突如こう言った。
「諦めたほうがいい・・・」
俺は師匠の言葉に鼻血を垂らしながら答えた。
「悪いが・・・アンタから諦めるということは教わってない!」
とは言うものの全然勝てる気がしないのもまた事実・・・
ふと、師匠の言葉を思い出す。
『一刀、まず、CQCの基本を思い出せ』
『相手をよく見ることだ、相手の動き、呼吸、目線をよく見ろ』
『焦るな、焦りは失敗を招く』
『決して諦めるな、諦めは死を招く』
俺は鼻血をぬぐい、逆手に持った白牙を前に突き出し、白鷹を腰付近にやる。
俺は師匠に一気に正面に近づき、白牙を師匠の左首目掛けて振るう。
勿論師匠はよける。
俺はその体制から師匠の襟を掴み、左脇から右手を通し、二の腕で師匠の左腕を持ち上げ、左膝を鳩尾に叩き込む。
「ぐっ!?」
師匠が苦しげな声を上げ、くの字になる。
俺はそれを逃す事無く、俺の方に襟を引っ張ると同時に、左足を払った。
師匠はうつ伏せの状態で地面に叩きつけられる。
「ガッ!!??」
俺はすぐさま白鷹を構えて発砲、師匠はそれをとこに回転しながらかわすが、脇腹に弾がヒットする。
「クッ!!」
掠り傷だがあの師匠に弾丸を当てることが出来た。
俺は浮かれる事無く師匠に接近、左拳を突き出す。
それを師匠はかわし、俺の左手を両手で外側へ捻る。が、
俺は師匠の左間接に右手を通し、外す。
怯んだ隙に、左手首を回し、師匠の拘束から逃れる。
隙が出来た師匠に俺は左手を左肩に伸ばし、左肩を掴む。
右手で師匠の右腕を掴み、後ろへ倒すと同時に足払いを行う。
師匠は受身を取れず。地に叩きつけられた。
「ぐわああ!!!!!!」
俺は師匠に白鷹を数発打ち込む。
狙いを付けない射撃、だが、師匠の腹に2発、右胸に1発当たる。
「グフ!?!?!?!?」
師匠はすぐさま立ち上がり、パトリオットを乱射するが、先ほどのような命中精度は無い。
「・・・強くなった・・・」
師匠の言葉はどこか嬉しそうだった。
お互いもう余力は殆ど残ってない・・・コイツで最後だ・・・
俺はパトリオットの弾幕を回避しつつ、師匠に近づき白鷹の引き金を引こうとするが、師匠に白鷹のスライドを後に引っ張られ作動しない、スライドストップを外され、マガジンキャッチボタンを押されマガジンが地に落ちる。
そして、師匠はスライドを前側に引っ張る。
スライドは本体から離れ、グリップだけになる。
俺はすぐさま、白鷹を捨て、白牙を振るが師匠に白牙を奪われ、投げ捨てられる。
その時、師匠に大きな隙が出来る。
白牙を弾いた手を掴み捻り上げ、右腕で師匠の首を上へ締め上げ、足払いと同時に後へ倒す。
物凄い音と共に地面が砕け、人間位の大きさのクレーターが出来た。
「ッッッッッ!!!!」
師匠は痛みで声が出ないらしい・・・
心身ボロボロだ、『氣』を使う暇すら与えてくれなかった・・・
俺は師匠に近づく・・・
「・・・ようやく・・・ようやく開放される・・・傀儡で無くなる・・・
・・・これを離すな」
「愛国者・・・何故これを・・・」
「俺は・・・仙道の手により傀儡になった・・・だが・・・! 俺は俺の意思で戦いたか
った・・・お前と戦い、お前に殺され、開放されたかった・・・
ありがとう・・・一刀・・・俺を解き放ってくれて・・・
俺は・・・ようやく無にかえることが出来る・・・
全てには始まりがある・・・始まりは1ではない・・・世界は0から生まれる・・・
そうだ・・・俺を消してもゼロは消えない・・・
この世界にお前と愛紗ともう一人・・・そう、お前の嘗ての親友・・・この世界にこの3
人を呼んだもの・・・≪ゼロ≫を殺さない限りは・・・」
「≪ヤツ≫も≪テン≫もこの世界に来ているのか!?」
「ああ・・・ずいぶんお前に固執していた・・・
いいか、ゼロを倒せ! それが俺がお前に与える最後の任務だ!!」
「最後に、質問したい、≪ゼロ≫とは何者で何処にいるんだ?」
「≪ゼロ≫はいずれお前達の前に立ちはだかる・・・存在しない存在・・・
全ての始まりにして・・・全ての終わり・・・外史を否定する強硬派のリーダーだ・・・」
左慈達のリーダーか・・・
「左慈達も出てくるのか?」
「あいつ等は消えた・・・お前達の勝利によって・・・
・・・言うべきことは言った、さあ・・・俺を殺せ・・・」
俺はパトリオットを構える。
師匠は微笑みながらこう言った。
「ありがとう・・・一刀・・・」
銃声が辺りに響いた。
そして、師匠はこの世界から光になって消えた・・・
某所
「どうやら・・・失敗したみたいだな・・・」
金髪に青い目と黒いコートを着た男が語りかけてきた。
「・・・・・・・」
沈黙する白い法衣を着た男。
「まあ、当然か・・・消え逝く魂を無理やり定着させればそうなる・・・
伝説の男とはいえ、所詮、紛い物、紛い物ではあの男は殺せんよ」
白い法衣を着た男が不意に口を開く。
「では、お前は奴を殺せるかな?」
黒いコートを着た男は顔に獰猛な笑みを湛えながら言う。
「俺しか出来ない、他の奴では死体の山を築くだけだ」
「そうか・・・期待しているぞ、≪テン≫」
「フン、まかせろ・・・≪ゼロ≫」
俺は、フラフラになりながら森を抜ける。
右手にはパトリオット、左手には師匠のCQCナイフが握られていた。
ふと顔を上げると、愛紗がいた・・・
「お疲れ様でした・・・一刀様・・・」
「ああ・・・今日は・・・疲れた・・・」
愛紗は泣きそうな顔をしながら言う。
「もう朝日が昇っています・・・
それと、一刀様・・・もうこんな無茶はしないでください・・・」
「ああ・・・出来る限り気を付ける・・・・・・」
そういい、俺は愛紗の胸に顔を埋めた。
「・・・・・・・・・お休みなさい、一刀様・・・・・・・・・」
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恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。