No.101111

真・恋姫†無双~招かれるは少年と妖精~

蒼鷲さん

初めまして、これは真・恋姫†無双とティアーズ・トゥ・ティアラのクロスオーバー作品です。本作は独自設定・設定改変等が結構入る予定です。クロスオーバーやそういうのが苦手な方は観覧しないことをお勧めします。更新は遅いでしょうががんばって進めていきますのでよろしくです。

2009-10-15 16:30:14 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3690   閲覧ユーザー数:3331

 

第一話 ~かくして異世界の少年と妖精は飛ばされる~

 

 

 

 

 

 

 ある世界、豊かな大地アルビオン島、その島に建つアヴァロン城の訓練場で二つの影が剣を交えていた。

 

 一つの影は長い金髪を腰まで伸ばしている凛々しき女性、もう一つの影は黒髪に蒼い服を着込んだ少年である。

 

 

「はぁ!」

 

 

「ふっ!」

 

 

 キン! カン!と絶え間なく響く剣の交わる音、いつまでも続くかのように聞こえたその音は不意に途切れた。

 

 二つの影が同時に立ち止まり、お互いにゆっくりと剣を落とし構えを解く。

 

 

 

「また腕を上げたな、カズト」

 

 

「いや、まだまだだよ。オクタヴィア」

 

 

 

 お互いに剣を鞘に収めながら二人は会話を続ける。

 

 

 

「謙遜する必要は無いぞ、あの頃に比べたら雲泥の差だ」

 

 

「やめてくれ、あの頃の事は正直思い出したくない……」

 

 

 

 笑いながら言うオクタヴィアに暗い表情で首を振る一刀。その表情は本当に思い出したくない事を思わせる。

 

 しかし、その表情も直ぐに切り替え、普段通りに戻る。

 

 

 

「にしても、手合わせに付き合ってくれて助かったよ」

 

 

「気にするな、私も為になったのだ。感謝するほどの事でも無い」

 

 

「今はアルサルも王の執務で忙しいみたいだし、アロウンはアロウンで面倒臭いっていって鍛錬に付き合ってくれない

 

 からなぁ……」

 

 

 

 そう、7ヶ月間に渡り繰り広げられてきた戦いがようやく終結し、エリンとアルビオンに新王国がうちたてられ

 

 て約二週間、アルサルは竜王としてアロウンと統治しており、リアンノンはその補佐をこなしている。

 

 まだ建国してばかりの為か、物凄く忙しいと朝、リアンノンと話した時に聞いていた。

 

 

 

「まあ、仕方ないな。……おっと、そろそろ子供達に剣を教える時間だ。悪いがカズト」

 

 

「ああ、分かった。頑張れよ~」

 

 

 

 挨拶を済ませるとオクタヴィアはそのまま駆けていく、それを見送ると一刀は鍛錬用の剣を元に戻す。

 

 

 

「さてと、夕方までやる事無いし如何するかな。アルサル達の執務を手伝うか、それともオガムに魔法の教授を願うか

 

 リムリス達の手伝いをするか……」

 

 

 

 そんな事を呟きながら一刀は訓練場を後にする。

 

 

 

「それにしても、最初はどうなるかと思ったけど、俺も随分とこの世界に馴染んだよなぁ」

 

 

 

 元居た世界から北郷一刀がこの世界に迷い込んで、約十ヶ月が経過しようとしていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「お~いリムリス、エルミン。何か手伝う事とかあるか~?」

 

 

「あら、カズトさん」

 

 

「あ、カズトお兄ちゃん!」

 

 

 

 あれから一刀は、まず魔法教習をお願いしようとオガムを探していたが、生憎とオガムは出掛けており留守。

 

 執務はどうやら一刀に出来る事は無いらしく、モルガンに狩りに誘われたが同行する気が起きず、その場から

 

 全力逃走。追いかけて来るモルガンを撒いた事を確認してから、そのまま調理場に駆け込み現在に至る。

 

 

 

「実は夕方まで何もやる事が無くてさ、どうせなら二人の手伝いでもしようと思ってな」

 

 

「そうですね、それなら今から昼食を作る予定だったのでご一緒に作りますか?」

 

 

「丁度いい、手伝わせてもらうよ」

 

 

「わーい、じゃあ一緒に作ろう! カズトお兄ちゃん」

 

 

「じゃあ、俺は―――」

 

 

 

 楽しいひと時の始まりである。一刀はリムリス、エルミンと楽しく会話を交わしながらも

 

 スープ、鶏肉の香草焼き、サラダetcと手際よく次々と料理を一緒に作り上げる。その手つきは非常に

 

 慣れており、まるで熟練の料理人に見えるほどであった。

 

 

 

 

「よし、エルミン 盛り付けるから皿の準備お願い」

 

 

「了解!」

 

 

 

 エルミンがテーブルに並べていく皿に次々と出来上がった料理をスムーズに盛り付けていく一刀。

 

 

 

「ふふ、相変わらずお料理上手ですねカズトさん」

 

 

 

 同様に皿に盛り付けをするリムリスが微笑む。

 

 

 

「まあ、師が良かったからこれ位は当然さ。料理の腕はまだまだリムリス師匠には及びませんけどね」

 

 

「でも、カズトお兄ちゃんの料理は本当に美味しいよ~」

 

 

「ハハ、ありがとうエルミン。でも、エルミンも早く上達しないとな」

 

 

「もっちろん! いつかカズトお兄ちゃんやリムリスを追い越してやるんだから!」

 

 

「楽しみにしてるよエルミン」

 

 

「そうですね、期待していますよエルミン」

 

 

 

 お昼の平和な時間は、こうしてゆっくりと過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「ラスティ~、仕事は捗ってるか~?」

 

 

「ああ、カズトじゃん。順調だよ~ ほら、これ! 完成した建国記念金貨だよ」

 

 

 

 リムリス達と昼食を作り終えて、皆と昼食を食べ終わると、一刀は自分の部屋で一休みしてから

 

 妖精族の鉱山妖精ラスティの工房へと足を運んだ。

 

 

 

「おお、もう出来たのか!」

 

 

 

 手渡された金貨を掲げて眺める一刀、金貨にはアロウンとアルサルの肖像画が刻まれており

 

 そのデザインはまさに『建国記念』に相応しい出来栄えであった。

 

 

 

「かなりいい出来栄えじゃないか、流石はラスティだな」

 

 

「ありがとカズト、それはカズトにあげるよ。とっておいて」

 

 

「サンキュー、大事に取って置くよ。っと、あれはもう終わってるか?」

 

 

 

 手渡れた金貨を大事に仕舞うと、一刀は昨日ラスティに頼んでおいた件を尋ねる。

 

 

 

「もっちろん、さっき終わった所で、そこに置いてあるよ。って言っても、相変わらず刃毀れ一つ無かったけどね」

 

 

「ハハハ……でも、本当に助かるよ。偶には本格的な手に手入れをしてやらないと刀に申し訳ないからな」

 

 

 

 そう言いながら、一刀は壁に立てかけてある愛刀『ファスラネス』を手に取り、少しだけ鞘から刃を抜き刀身を

 

 見る。そして満足したのか、そのまま刃をを再び刃を鞘に収め腰に挿した。

 

 

 

「何時も何時も悪いな、ラスティ。お礼に、今日はこの後予定があるから無理そうだけど……明日辺りにでも

 

 とびっきりのお菓子を作って振舞うから楽しみにしててくれ」

 

 

「カズトの作るお菓子はリムリスに匹敵するほど美味しいからね、期待してるよ」

 

 

「ああ、期待しててくれ。それじゃ、引き続き仕事頑張れよ」

 

 

「了解! カズトもがんばってねー」

 

 

 そんな会話を交わして、一刀はラスティの工房を後にして、武器庫へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ラスティの工房を後にしてから、一刀は真っ直ぐと武器庫を目指していた。

 

 

 

「これなら約束の時間には十分に間に合うかな」

 

 

 

 この城塞都市アヴァロンはかなりの広さを誇り、先ほど一刀が居たラスティの工房から今目指している

 

 武器庫までは結構離れている。其れを踏まえて、一刀は時間的に余裕を持って武器庫を目指していた。

 

 そして、丁度中間地点の廊下を歩いていた時だった。

 

 

 

「…………ん?」

 

 

 

 ふと、後ろに妙な気配を感じ一刀はゆっくりと後ろを振り返る。其処には、白い服に蒼いローブを身に纏った

 

 女性が壁に背を預けていた。女性は、一刀を見るとそのままゆっくりと、壁から離れローブを脱ぎ

 

 一刀の前に立つ。ローブから現した長く美しい蒼髪が突然吹いた風によってなびかせられる。

 

 天女……、何故かその言葉がピッタリと当てはまる女性だなと一刀は思った。

 

 

 

「いつの間に其処に……」

 

 

 

 一刀の疑問は当然だった。何しろ先程まで全く気配がなく、女性が居る場所にはほんの数秒前まで誰も居なかった筈なのだ。

 

 アロウン達と共に戦っていき、一刀も一流として成長している。また、とある事が原因で気配にはかなり敏感なのだ。

 

 その一刀が全く気配を感じなかった。まるで、突然その場に出現したかの様に。

 

 

 

「こんにちわ。ふふ、貴方が北郷一刀ね?」

 

 

 

 しかし、女性は一刀の疑問に答える事無く、蒼い瞳に愛おしい様な感情を込め一刀を見つめる。

 

 

 

「どうして、俺の名を……? 貴女は一体……」

 

 

 

 初見の女性にいきなり名前を呼ばれて動揺を隠せない一刀、いや、それ以上に何故か女性を見ていると

 

 何故か何とも言えない気持ちになるのだ。まるで自分は女性と何処かで会ったことがあるような……。

 

 

 

「前の戦いにて、アロウン、アルサル達と友になり、共に戦い、帝国そして精霊との戦いに勝利し

 

 仲間達と共にこの世界に平和を齎した少年にして、世界に忘れ去られた宝刀『ファスラネス』に選ばれし担い手」

 

 

 

 女性はまるで踊る様にトントンっと背後に飛び、そして少しの間の後一刀にとって聞き逃すことの出来ない事を口にした。

 

 

 

「そして、別世界よりこの城塞都市アヴァロンに飛ばされた。世界に迷い込みし、異端の存在でもある―――」

 

 

「!!? 何故そこまで知っているんだ!? その事を知っているのはアロウン達だけのはず!!」

 

 

 

 とっさに腰に挿している『ファスラネス』を抜き放つ。これは一刀にとって当然の反応だった。

 

 その事実を、自分がこの世界の人間ではなく別世界の人間である事は、アロウン・アルサル・リアンノン

 

 オガム・リムリス・エルミン・スィール・エリシアと極一部しか知らなく、とある理由から他の皆には一切明かしていない。

 

 戦いが終わった後に他の仲間達にも話すつもりであったが、王国の建国に伴って皆、物凄く忙しく

 

 今まで話す機会が無かったのである。まあ、建国から約二週間が経過しているので、そろそろ皆に

 

 話せる機会が出来そうではあるが。また、上に述べた7人が一刀の秘密を知るものが他人に話したと

 

 言う事も考えられなくは無いが、生憎その7人は他人の秘密を守らない行為等は絶対にしないと一刀は断言できる。

 

 故に、その事実を当然知っている様に言うこの女性の発言を聞き逃すわけが無く、警戒を強める。

 

 しかし、女性は一刀が宝刀を構えて警戒している事に、全く気にする事無く言葉を続けた。

 

 

 

「大丈夫よ、私は貴方の敵じゃないわ。私は貴方に伝えたい事があって来たのよ」

 

 

「伝えたい事……?」

 

 

 

 女性の意図が全く掴めず首を傾げる一刀、そんな一刀を見て女性は微笑んだ。

 

 

 

「そう、北郷一刀よ。間も無く貴方の前に新たなる道の扉が開かれ、貴方は再び戦乱の渦に巻き込まれていくでしょう」

 

 

「新たなる道の……扉? 戦乱の渦って、戦いはもう終わったはず―――」

 

 

「けれど、この世界にて友と戦い抜き、彼らと共に平和を齎し、世界を救った貴方なら大丈夫だと私は信じているわ」

 

 

 

 そう言うと同時に女性の体が徐々に薄れていく。

 

 

 

「待て! それは一体どういう事なんだ!?」

 

 

「私の名は菅輅、だけど今覚えておく必要は無いわ。時が来ればいずれ私の名を聞き、会う時が来るでしょう。

 

 その時まで―――」

 

 

 

 そして、女性 菅輅は最後まで言い切る事無く、まるで幻の様に姿を消した。

 

 

 

「!……気配が完全に消えた。一体何者なんだ……」

 

 

 

 菅輅の気配が完全に消失したことを察した一刀は抜き放っていたファスラネスを腰の鞘へと収める。

 

 

 

「新たなる道への扉……戦乱の渦……か、一体どういう事なんだ」

 

 

 

 様々な疑問が一刀の頭の中を駆巡るが、此処に居る本来の目的を思い出し、直ぐにそれらの疑問は

 

 一旦胸の内に仕舞い込む。

 

 

 

「よし、急ぐか!」

 

 

 

 そして、気合を入れ急いで武器庫へ行こうと一歩を踏み出そうとした時だった。

 

 

 

「え~~~~~ん」

 

 

 

 突然、後ろの方から聞こえて来た泣き声に、一刀は踏み出すことが出来ずにそのまま泣き声が

 

 聞こえて来た方に振り向き、その声の主を確認するとやっぱりかっと溜息をついた。

 

 

 

「はあ、スィール。今度は一体どうしたんだ?」

 

 

 

 仕方なく、一刀は何時もの様に苦笑いを浮かべ声の主である女性、妖精族でアザラシ妖精のスィールに

 

 話しかけた。スィールと呼ばれた女性は一刀に声を掛けられたことに気付き、駆け寄ってくる。

 

 

 

「はう! カズトさんいい所に居てくれました~ 聞いてくださいよ~ また牛さんに馬鹿にされました~」

 

 

 

「またか……」

 

 

 

「え~~ん、やっぱり私ってば不幸ですぅ~~~~~」

 

 

 

 もう何十回以上聞いている理由に一刀は軽く頭を抱える。スィールは様々な仕事を頑張ろうとするのだが

 

 掃除、洗濯などですら何故か悉くドジで失敗してしまう。そして、失敗するごとにこうしてスィールは

 

 落ち込んでしまうのである。今回も何時もの如く仕事に失敗してしまったようであった。

 

 

 

「さて、どうするかな……」

 

 

 

 何時もなら、お菓子を作って振舞ったりして慰めるのだが、今は一刀にはやることがあり、そんな時間は

 

 勿論あるはずが無い、かといってこのまま放置は一刀には出来るはずが無い。

 

 仕方なく、本気でどうするか考え始めた時、ふと閃いた。

 

 

 

「なあ、スィール。今から俺、武器庫の整理に行くんだけど一緒に来て手伝ってくれないか?」

 

 

「武器庫の整理ですか?」

 

 

「ああ、たまには別の仕事もしてみるといいと思うよ。もしかしたら気分転換になるかもしれないし」

 

 

「あう~ でも、また失敗しそうですぅ~」

 

 

 

 目に涙を浮かべながら上目遣いに見てくるスィールに、思わずクラリと来るが抑えて、一刀は大丈夫と励ます。

 

 

 

「ちゃんと俺が教えてあげるから心配することは無いよ」

 

 

「うう、じゃあお手伝いさせてもらっていいですか?」

 

 

「ああ、よろしく頼むよスィール。じゃあ、約束の時間少し過ぎてるから急いで武器庫に行こう」

 

 

「はい、私頑張ります!」

 

 

 

 そうして、一刀はスィールを連れて今度こそ武器庫に向かって走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんエポナ! エリシア! 約束の時間よりちょっと遅れた」

 

 

 

「カズトさん、約束に遅れるなんて酷いですよ」

 

 

 

「遅いよカズト! もうアタシ達は作業始めてる……って、なんでスィールも一緒にいるの?」

 

 

 

 色々な事があった為か、約束の時間に遅れてしまった一刀は武器庫に入ると真っ先に

 

 既に作業を開始していたエポナとエリシアに謝罪をした。理由はともあれ、約束に遅れ迷惑を掛けたのだから。

 

 

 

「ああ、さっき偶然鉢合わせててな。暇だったみたいだから手伝ってもらう事にしたんだ」

 

 

「……大丈夫なの?」

 

 

「私も心配だけど……」

 

 

 

 スィールのドジっぷりは仲間内でもかなり有名である。だからこそエポナとエリシアの心配も当然なのだ。

 

 

 

「大丈夫さ、俺が教えてやるし、フォローもする。だから心配しなくていい」

 

 

「はい、私頑張っちゃいますよ!」

 

 

「まあ、カズトがそう言うならアタシは文句無いけどね。しっかりスィールのサポートを頼んだよ」

 

 

「ああ、まかせとけ!」

 

 

「じゃあ、さっさと皆で片付けちゃいましょう!」

 

 

 

 そうして、4人は武器庫の整理を開始した。開始直後から、スィールのドジっぷりが発動するも

 

 一刀が迅速にフォローをして失敗を防ぎ、一刀自身もテキパキと効率よく仕事をこなしていく。

 

 もちろん、この間にスィールに指示を出したりと失敗しない為の気配りも忘れていない。

 

 そして一刀のサポートもあってか、スィールにしては珍しく一時間位経過すると、動きはまだぎこちないものの

 

 殆どドジを発揮せずに仕事をこなす様になっていた。

 

 そうしていく内に時間は流れ日が沈みかけた頃、ようやく整理も最終段階に入った時だった。

 

 

 

「ん? なんだこれ」

 

 

 

 最後の棚を整理していた一刀が、その棚の奥の方から何かを見つけ、引っ張り出した。

 

 

 

「これは銅鏡? 何でこんな物が武器庫の棚の奥にあるんだ?」

 

 

 

 こればっかりはどう判断していいか一刀には分からず、仕方なくこの武器庫の責任者であるエポナに

 

 判断をゆだねる事にした。

 

 

 

「エポナ、悪いけどちょっといいか?」

 

 

「ん? どうしたのカズト?」

 

 

 

 一刀に声を掛けられたエポナは、作業の手を止めて一刀に駆け寄る。

 

 そんなエポナに一刀は先ほど見つけた銅鏡を見せて尋ねた。

 

 

 

「この銅鏡なんだけど、これってどうすればいいんだ?」

 

 

 

 すると、エポナは銅鏡を見るなり腕を組んで首を傾げしばらく考え込んだ。

 

 

 

「ねえカズト、これ何処にあったの?」

 

 

「え? あそこの棚の奥にあったけど……エポナが仕舞ったんじゃないのか?」

 

 

「こんなのアタシは持ち込んだ覚えも仕舞った覚えも無いよ。だって、ここ武器庫だしね」

 

 

 

 エポナの予想外の反応に内心吃驚しながらも、それを表に出すような事はせずに一刀は話を続ける。

 

 

 

「じゃあ、ずっと昔からあった物じゃないのか? これ入っていたの奥のほうだったし、見た所古いから」

 

 

「それは無いよ、だってアタシがこの武器庫を管理する時、初めに全部調査・整理・配置したけれど

 

 あそこの棚の中にはそんな銅鏡なんて無かったよ、断言できる」

 

 

 

 エポナの記憶力はかなりのものであり、彼女が断言するのだから言ってる事が嘘でないのは確実であった。

 

 

 

「でも、じゃあこの銅鏡は一体」

 

 

 

「アタシにも分からないよ。でも魔力は篭ってないみたいだし―――!」

 

 

 

 後でどうするか考えようか、と言おうとしたエポナの言葉を遮るかのように

 

 

 

 

 

『この世界にて様々な種族の仲間達を友として共に戦い、数々に戦いを乗り越え成長し、世界を

 

 救いし者の一人となった異世界の少年よ、今こそ汝に新たなる外史の扉を開こう』

 

 

 

 

 

 何処からとも無く不思議な声が武器庫内に静かに響き渡った。

 

 それと同時に、突如一刀が持つ銅鏡が何の前触れも無く光を放ち始める。

 

 

 

「なっ!」

 

 

「これって……」

 

 

「どうしたの!?」

 

 

「一体どうなってるのです~」

 

 

 

 突然何処からとも無く聞こえてきた声と光が発生した事に、スィールとエリシアも驚いて作業の手を止めて

 

 その発生源である一刀の方に振り向く。

 

 一方、一刀も本能がこれ以上銅鏡を持っていると危険だと警告しているので、銅鏡を放り投げようとした。しかし

 

 

 

「手から……離れない!?」

 

 

 

 まるで、手に吸い付いているかのように銅鏡は一刀の手から離れなかった。そうしている内にも、光は勢いを増し

 

 一刀を傍にいるエポナごと包み込もうとする。

 

 

 

「くっ! スィール、エポナを受け止めてくれ」

 

 

「ちょっとカズト!」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

 それを瞬時に察した一刀はエポナを自分から離す為にスィールに向かって突き飛ばした。

 

 そして、スィールも自分の元に突き飛ばされて来るエポナをしっかりと受け止める。

 

 一刀も、三人が無事なのを見て安心するもその安心も長く続かなかった。

 

 銅鏡から放たれた光は次の瞬間、完全に一刀を包み込んだのだ。

 

 

 

「!? カズトさん!」

 

 

「まってエリシア!!! 危険だよ!」 

 

 

 

 その光景を見て、エリシアは咄嗟に光に包まれている一刀を助けようと駆け寄り、そんなをエリシアを

 

 エポナが制止しようとするも遅かった。光は、一刀を引きずり出そうとしたエリシアを逆に取り込む

 

 とそのまま高速回転をし、数秒後何事も無かったかのように霧散する。

 

 光が霧散した後には北郷一刀とエリシアの姿は何処にも無く、また元凶であろう銅鏡も何処にも無かった。

 

 

 

 

 

 それから数分後、以上を感じた仲間達が武器庫に集まって来た。彼らが目にしたのは

 

 何故か呆然としているエポナとスィールの姿だけであった。

 

 

 

「いきなり強い力を感じて、ここから謎の光が見えたので急いで駆けつけてみたが……

 

 おいエポナ、スィール、一体何があった?」

 

 

 

 代表してアロウンがこの場で起きた事を全て知っているであろう、エポナとスィールに問いかける。

 

 

 

「……カズトとエリシアが……消えちゃった」

 

 

「はい、二人とも……光に包まれて消えちゃったです……」

 

 

 

 突然の出来事にしばらく呆然としていたエポナとスィールが、ゆっくりと二人が消えた所を指差して小さくそう言った。

 

~To Be Continued~

 

 

 

 

あとがき

 

初めまして、蒼鷲と言います。まずはこの二次創作を読んで頂きありがとうございます。

 

本作は恋姫とティアーズ・トゥ・ティアラ(花冠の大地、アニメ版)とのクロス作品になります。

 

一刀は恋姫が始まる約十ヶ月前にティアーズ世界に飛ばされ、そこで友と戦っていき

 

成長しています。ですので、一刀は原作とはかなり違いますのでご了承を。

 

また、ティアーズ世界も基本は原作と同じ流れでしたが一部、一刀が介入したために

 

さまざまな所で原作とは違う部分もあります。

 

また、ティアーズ世界のオリジナル妖精族 エリシアも一緒に飛ばされています。

 

今回はプロローグ編と言う事で一刀が恋姫世界に飛ばされるまででした。

 

次回から恋姫本編に入っていきます。感想とか頂けると凄くうれしいです。

 

では、次回第二話でまたお会いしましょう

 

 

追記

 

 

まずは謝罪を、間違えて記事削除してしまったようですorz

 

ちょっと色々変更しました。

 

まず当初の予定では、とある理由からスィールと一緒に飛ばされて物語を進めて行く予定でしたが、プロットを

 

構成して行くうちに、どうしてもスィールでは進める事が難しい状態になって行きそうなのです。

 

ですので、最終手段として、代わりにオリジナルの妖精族エリシアを一緒に飛ばすことにして、物語を進めて行くことにしました。

 

あ、因みにスィールはアロウンの嫁なのでご安心をw 私もそれ以外認めてませんw 

 

 

では、またお会いしましょう~

 

 
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