「いつまで寝てるのよ、起きなさい」
ジュウゴロウ「う・・・?」
もう夜か・・・。辺りが暗かったからそう思って起き上がったが、ふと目の前に人がいるのに気づいた。
ジュウゴロウ「誰だお前は!?」
慌ててたものだからボールを落っことしそうになった。傘を差し、金髪の長い髪をして、紫の服を着ている女性であるのだが、何か違和感を感じる。
「落ち着いて聞けばいいわ。私は八雲 紫、スキマ妖怪よ」
ジュウゴロウ「スキマ・・・妖怪?じゃあ今いるのはそのスキマの中か?」
紫「鋭いわね。今貴方達は私のスキマに落ちて、一旦離れ離れの状態になっているわ」
ジュウゴロウ「俺達だと?何のためにだ」
紫「知りたい?」
紫は顔を近づけて言う。生々しい女だ・・・!
ジュウゴロウ「俺達を元の場所に戻せ」
紫「嫌だったらどうなの?」
俺はボールのスイッチを押して答える。
ジュウゴロウ「叩き潰すさ」
ボールを投げ、そこから長い牙を生やすポケモンが飛び出した。氷割りポケモン、トドゼルガである。
対する紫は目の前に見えない壁を張ってトドゼルガの牙をガードしようとするのだが、牙と壁がぶつかった直後に壁は少しずつヒビが入っていく。
ジュウゴロウ「無駄だ。トドゼルガの牙は1000トンの氷山も破壊する力を持つ。おまけにこの体重じゃそいつは持たないぜ」
紫「・・・いい連れをしてるわね。まるで私の”式神”みたいじゃない」
式神?連れということは俺たちみたいにポケモンみたいな奴がいるのか?
それにこの余裕・・・何者なんだこいつは?
紫「ハッ!」
紫が手を前に出した直後にトドゼルガは後ろに吹き飛ばされ、バランスを崩してしまう。
ジュウゴロウ「戻れ!」
素早くボールをトドゼルガに向けると、赤い光線がトドゼルガを浴びてボールの中へ吸い込まれていった。
紫「その実力、確かに本物みたいね。でも結局私に適う相手じゃないわ」
ジュウゴロウ「何だと!?」
ポケモンを持たない彼女にいちゃもんつけることなのかと、俺は許せない気でいた。
紫「これから貴方は紅魔館っていう場所へ行ってもらうわ。仲間はなるべく遠くない場所に置いておくから、この世界を楽しんで行ってちょうだいね」
ジュウゴロウ(嫌な予感だな・・・)
紫「それじゃあ・・・あ、忘れてたわ」
ジュウゴロウ「今度は何だ?」
紫はニコッと笑うと、
紫「ようこそ、幻想郷へ」
と、言い残して俺にトドメでも刺そうかとするように指していた一指し指を下へ向ける。俺はこれを読んでその場から離れると、さっきいた足場に変な口が開く。これがスキマなのだろう。
紫「なんで避けちゃうのよ」
ジュウゴロウ「適う相手じゃないってのが気に食わねぇ。男を舐めるな!」
紫「あらそう・・・」
紫は遊びすぎていたのかしら、そろそろ本気になってスキマを大量に空ける。これもスイスイとかわす俺。その間に紫はどんどんとイラついてきて・・・
紫「もう面倒だからこうよ!」
今度はドデカい範囲のスキマが開いた。落ちる・・・と思っていたが。下に浮遊する何かの背中に着地した。ドラゴンポケモン、ボーマンダである。
ジュウゴロウ「たかが人間が飛べる力がないって思ったか?」
紫「・・・仕方ないわ。こういう子にはお仕置きしなきゃいけないのよねぇ」
紫は何かを取り出す。右手にはカード、左手には小型の機械だ。
ジュウゴロウ「あ!俺のトレーナーカードとポケモン図鑑!」
こいつ、寝てる間に取ってたのか!!
紫「二つに一つよ」
そういうと紫は2つとも別の方向に投げ捨てた。片方を取ったとすれば、残りは必ず失ってしまう。両方とるには、落ちなければならないのだ。
ジュウゴロウ「ボーマンダ!図鑑を取れ!」
図鑑は誰もが大切にしなければならないものだ。俺は図鑑の方へ行くように指示をし、落ちていく図鑑の下へ来ると図鑑をうまくキャッチした。カードは隙間の中へ消えていく。
紫「驚いたわね。失う運命ならその通りにするなんて・・・」
ジュウゴロウ「うるせぇっ!!このクソ女がぁっ!!」
紫「ク・・・クソ女・・・!?」
この瞬間、紫の堪忍袋の緒が切れてしまった。カードを取り出す。
ジュウゴロウ(な、なんだ!?)
紫「境符「二次元と三次元の境界」」
何かを唱えるような言葉が耳に聞こえたその瞬間、巨大な刀で切られような感覚が走って俺とボーマンダはスキマの中へ落ちていった。
紫「・・・手を焼く人間だったわね」
紫は息を切らしてそう言った。
幻想郷の世界には、紅く染まった屋敷が存在する。それは紫が言っていた紅魔館である。
そしてこの館の門には女の門番がいるのだが・・・
「zzz・・・」
鼻提灯を垂らしながら寝ていた。彼女は紅 美鈴と呼ばれる妖怪で、武術の達人だ。といいたいが、今の状況では完全忍び込まれる可能性大のケースだった。すると・・・
ドサッ ズシィーンッ!!
美鈴「(パチンッ!)誰だ!!」
鼻提灯が割れ、目を覚ました美鈴は素早く構えた。ふと気づくと、目の前に倒れている俺とボーマンダを目の当たりにする。
美鈴「これは一体・・・?イタッ!?」
突然頭に何かが振ってきて、直撃したあとに地面に落ちる。ポケモン図鑑であるが、美鈴は何も知らずに拾い上げる。
美鈴「・・・この人の物なのかな・・・?」
と思ったその時、
ムクリッ
美鈴「うわっ!?起き上がった!?」
死体が突然起き上がったと同じような感覚で美鈴は驚く。
ジュウゴロウ「イタタタタ。あの野郎覚えてやがれよ・・・!」
美鈴「(誰かにやられたようですね・・・って、こんなことしてる場合じゃない!相手は侵入者!)そこの怪しい奴!」
ジュウゴロウ「!」
俺がふと目を向けると、拳を構える女性がいるのを確認した。
美鈴「私はこの紅魔館の門番、紅 美鈴!この館に侵入するつもりなら、私が相手です!」
紅魔館の門番・・・なるほど、侵入者扱いされるのもあり得ないものではないな。いきなり現れたんだから・・・。
ジュウゴロウ「いいだろう、付き合ってやる。但し覚えておけ、俺は喧嘩では一度も負けたことはないぜ」
俺は起き上がるとオンガードポジョンの構えを取って応戦する。
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ポケットモンスターの世界に住むトレーナー達が幻想郷へやってくる不思議な物語。