No.1005597 八幡君はシンフォギア装者東郷さん 2019-09-27 18:04:09 投稿 / 全7ページ 総閲覧数:2746 閲覧ユーザー数:2721 |
「用事があるから、今日は早く帰らせてもらうぞ」
「何を言っているの?貴方に用事なんてないでしょう。貴方はこの奉仕部の備品なのだから、ここにいるしかないのよ」
「そうそう」
「はぁ…」
相変わらずの横暴さにため息を吐く。
「お前らが俺を人間扱いしないのはこの際もう慣れたからどうでもいいが、用事があるのは本当だからな」
そう言っても、あまりいい顔をしない。
「まあいいけど、そろそろ行くわ」
カバンを持って、席を立ちあがると二人も立ち上がる。
「貴方が本当に用事があるのか見届けさせてもらうわ」
「は?何言ってんだよ」
「だって、ヒッキーなんだかんだ言って、サボろうとするじゃん」
「俺がサボった事あったか?」
雪ノ下と由比ヶ浜は何を言ってるんだ。
まるで俺がいつでもサボっているような言い草をする。
「「だって、貴方は信用出来ないから」」
「…」
そうか…。
そうかよ……。
「はぁ…」
もう溜息しか出て来ない。
何を言っても駄目なようだ。
だから、二人を押しのけ、教室を飛び出して、廊下を走る。
(今日は俺のギアが帰ってくる日なんだ。邪魔されてたまるかよ)
追いかけてくる二人を引き離しながら、下駄箱を目指す。
「比企谷!部室に戻れ!」
いつの間にか雪ノ下が平塚先生を呼んでいたようで、後ろから三人の声が追いかけてくる。
「屑谷君、今なら土下座で許してあげるわ!」
「ヒッキー!今なら許してあげるから、早く部室に戻ってきて!」
「比企谷!今ならファーストブリットで許してやる!早く部活に戻るんだ!!」
外靴を履きかえる時間も惜しいので、内履きのまま外に飛び出す。
(俺は奴隷かよ)
校門の外までは人の目があるから追いかけられなかったのだろう、校門を出た頃には三人の姿は無かった。
「ふぅ…。さっさと基地に行こう」
すんなり返してくれるとは思っていなかったが、あそこまで酷いと、明日からが怖い。
絶対に平塚は授業終了後を狙ってくるだろうし、由比ヶ浜は俺を逃さないとばかりに声を掛けてくるだろう。
それに連動して、由比ヶ浜が所属している葉山グループの面子が俺を糾弾してくるに決まっている。
部室に行けば行ったで、雪ノ下の罵倒の嵐が待っている事だろう。
「しばらく、学校休むかなぁ…」
それとも……。
『え?ゴミぃちゃんが逃げ出した?』
八幡から引き離された雪ノ下たちは対八幡最終兵器である妹の『小町』に連絡をしていた。
自分たちに不都合な内容は伏せて、“八幡が部活中にウソを吐いて逃げ出した”と言う内容を告げた。
『帰ってきたら、厳しく言っておきますので』
「それには及ばないわ。次は泳がせておいて、サボりの事実を彼に突きつけてあげるのよ」
『流石雪乃さん!妙案ですね!』
どうあっても八幡の事を信じられないのだろう。
「彼には奉仕部の備品だと言う事を一度その身にしっかりと刻み付けてあげないといけないわね」
『小町も微力ながらお手伝いします!!!!』
四人は昏い笑みを浮かべ、自分たちに傅く八幡の姿を思い浮かべた。
「遅くなりました!」
八幡が超常災害対策機動タスクフォース『S.O.N.G.』の本部潜水艦が停泊している基地に着いた頃にはすっかり日が暮れていた。
「おせーぞ!」
彼を待っていたのは腕を組んで仁王立ちをする私立リディアン音楽院高等科の制服を着た『雪音クリス』だった。
「部活の奴等に絡まれててな…」
「はぁ?お前、部活に入ってたのかよ!」
「強制入部させられてな…」
作戦司令室前で八幡とクリスはそう言い合いつつ、モニター前にいる司令『風鳴弦十朗』の下へ向かう。
「司令、遅くなりました」
「今のを聞いていたから、分かっているぞ。次から早く抜けられるようにな?」
「はい!」
「メールで送った通り、キャロル・マールス・ディーンハイムとの戦いの際に破損した君のシンフォギア『アロンダイト』の修復が完了した。試運転を行ってもらいたい」
「分かりました」
「はっはっは、固くなるな。ただ模擬戦をするだけでいい」
肩をバンバンと叩かれながら、訓練室へと向かう。
「模擬戦の相手は?」
「翼だ」
「チェンジで」
「ふひぃ……」
模擬戦と言いながら、俺は翼姉のストレス発散に付き合わされた形になり、途中から参戦した『立花響』共々地面に横たわる事になった。
「修業が足らないぞ、二人とも」
「そりゃ、翼姉の様には行かないよ…」
「やっぱり翼さんには敵わないですよ…」
そんな俺たちを切歌たちは苦笑交じりに見ていた。
いつものS.O.N.G.の光景だった。
俺の居場所は“あそこ”ではなく、“ここ”なんだと改めて感じる。
「……あぁ、楽しいなぁ」
「?」
小さく呟くと、隣に倒れている立花はこちらを見て、不思議そうな顔を見せた。
「なんでもない」
「そっか」
俺は立花にそう言うと、何故か顔を赤くしながらそっぽを向いた。
(は、反則だよぉ…。その柔らかい笑顔は…)
この楽しい空間にいると、あの不愉快な空間に行くのが嫌になる。
(明日から、どうなる事やら)
何故、あの高校の人間は人間としてレベルが低いんだろう。
他の同じ年代の人間を見ても、ああ言う人間はそうはいないだろうな。
そんなことを考えていると、おじさんが全員に帰るようにと通達した。
「じゃあ、またね」
「おう」
「明日は遅くなんなよ?」
「善処する」
立花、雪音、翼姉、暁、月読と別れ、俺は家に帰る。
「あ、自転車、学校だ…」
いつもは自転車で通ってるから忘れていたが、ここから自宅までは徒歩で一時間以上ある。
「はぁ、帰ったら十時か」
帰ってからのスケジュールを頭の中で組み立てながら、街を歩く。
ただ面倒なのは妹の事である。
恐らくあいつも自分が何か言えば、俺は唯々諾々と従うと思っているんだろう。
まあ、ただ単にごねられるのがめんどくさいから従っていたが、最近はやれ「どこそこに連れて行け」「お義姉ちゃん候補を大事にしろ」「今すぐプリンが食べたいから買ってこい」だの五月蠅くなってきていた。
挙句の果てにはこちらの予定も考えずに勝手に予定を入れ、行かないと言えば「お父さんに言いつける」だの「そんなんだからゴミぃちゃんなんだよ」と罵倒してくる。
秘匿性の高い場所にいるから何も言えないとは言え、ここまで言われ続ければ、愛想も尽きよう。
「なんでこう……、俺の周りの人間は………はぁ…」
あの後、帰宅した俺は何を言われるのかと身構えていたが小町は「遅かったね」とだけ言って、部屋に戻っていった。
いつもなら「なんで遅いの!遅くなるなら連絡してよね!」とか言われるが、今日に限って問い詰められなかった。
「……嫌な予感がするな」
うなじの辺りがぞわぞわとする。
「おじさんに話だけはしておこうかな…」
夕飯のカップ麺(秘蔵)の用意をしながら、俺はおじさんの端末に「なんだか分からないけれど嫌な予感がするので、気を付けてください」と送ると、「分かった、立花君たちの周りに護衛を配置しておこう」と返ってきた。
流石、おじさんだ。
俺もこうなりたいな。
「っと、三分経ったか」
そんな事をやっているとカップ麺が出来ていた。
「最近、小日向の監視が厳しいからな」
自宅なら問題ないだろうと食べ始めた瞬間、端末が震えた。
「ん?小日向から?」
箸をおいて、端末を見ると、小日向から『カップ麺なんか食べて、無いよね?』とメールが来ていて、思わず咽た。
「あいつはエスパーか!」
今度からまともに顔も見らんねぇな…。
そう思いながら、カップ麺を食べるのを再開する。
翌日、登校した俺は、由比ヶ浜に話しかけられないように、すぐにイヤホンをして、寝た振りをする。
だが、由比ヶ浜が俺の所に来ることは無かった。
(怪しいな。……嫌な予感がバリバリと…)
その嫌な予感は放課後になるにつれ、強くなっていった。
そして、放課後、由比ヶ浜の所に行くと俺は「今日は部活行けねえから」と伝えると教室を出た。
「もしもし、ゆきのん。……うん、予定通りね…うん、わかったよ」
見られている感覚がする。
振り向いてみても、誰もいない。
(………やっぱ、あいつらかな)
昨日の部室での出来事を思い出し、溜息を吐く。
(最近、溜息増えたなぁ)
気苦労が増えた気がする。
大体、あいつ等の所為だが。
そう責任転嫁して、道を一つ変える。
撒き方は一応緒川さんから習ったので知っているから、とりあえず言われたとおり、人通りの多い所を狙って動く。
「ちっ、人通りが多い道に移動したぞ」
「静かにしてください、平塚先生。屑谷君にバレたらどうするんですか」
「うっ、すまない」
「早く移動しないと、ゴミぃちゃんを見失っちゃいますよ!」
「そうね、現行犯で捕まえて、土下座させましょう」
「うんうん!ヒッキーには私達にこんな事させた償い?してもらわないとね!」
「比企谷には借りがあるからな!新技の実験台になってもらわんとな」
彼女たちは気付かない、自分たちが見られていることを。
「司令、見つけました。比企谷君の妹さんと学校の生徒らしき少女二人と白衣を着た女性の四名です。……はい、泳がせるのですね」
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pixiv様より転載