「ふぅ……やっと出たようじゃ」
私とアタリメ司令は、ドアを開けて暗い駅を出ていった。
といっても、まだここは地下鉄で、真っ暗なのには変わらない。
随分と広い場所だな……ここが地下とは思えない。
ドームのように広がっていて、天井からは蛍光灯が吊り下げられており、
壁にはポスターやシールが、たくさん貼られている。
右側の蛍光灯は壊れていて、コードが出ているものもある。
また、床には点字ブロック――視力を持たない者が場所を確認するためにあるもの――
というものがあり、ここが駅である事がはっきりと分かる。
「それにしても……広いところじゃのゥ……ポリュープ……」
私と同じ感想を、アタリメ司令は言っている。
だが、こんなに広いところなのに、私とアタリメ司令以外はいない。
とても、不気味だった。
そして、私がもっと不気味だと感じたのが、ぽつんと一つだけある、
目と口のような丸いくぼみと、受話器がある機械、電話だった。
私とアタリメ司令がそれに近付いてみると、リンリンという音がする。
誰かに繋がっているのだろうか。
私が電話を取ってみると、その電話は機械的な声でこう言った。
【通話者ノ ID ヲ ケンサクチュウ……】
【通話者ノ ID ヲ ケンサクチュウ……】
ID……? 私の事を知っているのか……?
しばらくすると、不思議な音と共に、その電話が「口」を開いた。
【……おはようございマス、No.10008・ポリュープ!!】
……!! 私の名前を覚えた……!!
この電話は、とても不気味だ……攻撃したいけど、ブキを使えない以上、無理だ。
【深海メトロ中央駅へようコソ!!!】
やはり……ここは、地下鉄だったのか。
深海……つまり、かつてここは海の底だったのか?
それにしても……海面が上昇したのに深海とは、皮肉だな。
【ワタシは約束の地へのツアーアドバイザー! どうぞ、お見知りおきヲ!】
この電話は、私には信用ならなかった。
だが、こいつを無視しても、何の意味もないと感じた私は、
渋々ながらも電話の話を聞く事にした。
【ココに来られたってことは……約束の地へご出発なのデスね?!】
約束の地、とは一体どういう場所だ?
私がそれについて電話に聞こうとすると、電話はこう返した。
【アラ失礼、ちょっと何言ってるか分からないご様子……。
じゃ、軽~く説明させていただきマスね!!
アナタも地下にいるなら、約束の地って名前くらい聞いたことありマスよね?】
私は首を横に振った。
【ソコは光溢れるユートピア……地下住民達の理想に満ちた花園……。
幸運なことに、約束の地に行くことができる資格をアナタは今、手に入れたのデス!
過去に挑んだのは10007名……アナタは通算、10008人目のチャレンジャーとなりマス】
……つまり、10007人の奴らが試練に挑んで散っていったという事か……?
そう考えると、私の身体が少し震えた。
【ソレはあなたにとってまたと無い、人生一発逆転の大チャンス!!
そんなワケで、この深海メトロ中央駅はその約束の地へ向かうための出発点となりマス。
じゃ、ハイこれ。NAMACO端末とNAMACOカードデス】
電話は、口からカードを私の目の前に吐き、その後に端末を出した。
「NAMACO」と書いてある……なんの会社なのだろうか。
【この先で必要なンデ、なくさないようお願いしますよ! ポリュープ!
それデハ……メトロに乗って出発進行~!!!】
しばらくすると、私の前に電車が来た。
全く訳が分からないが、行動しなければ意味はない。
私とアタリメ司令は約束の地――地上に向かうため、その電車に乗るのであった。
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このOcto Storyの主人公「ポリュープ」は、男女を特定していません。
なので、ボーイでもガールでも構いません。