No.1001602

真・恋姫†無双-白き旅人- 第二十章

月千一夜さん

二十章です

いよいよ、みんな動き出します


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2019-08-12 01:10:13 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2369   閲覧ユーザー数:2232

「な、なんで孫策がここにおるんじゃぁぁぁああああ七乃ぉぉぉぉおおおお!!!」

 

「そそそそ、そんなの私が聞きたいですよぉぉぉおお!!!!」

 

 

響く

とにかく響く、高く震えたままの声

その発信源である二人の少女は、泣きながら抱き合って、やはり大きく体を震わしているのだった

 

そんな二人の向い

まさに、“鬼のような形相”で睨み付ける人物が一人

 

“孫策”、真名を雪蓮である

 

彼女の体からは、“小覇王”の名に恥じぬほどの“殺気”が漂っていた

そんな彼女の気にあてられ、二人の少女は唯々泣くだけであった

 

 

「さて、どうして貴女達がここにいるのか説明してもらいましょうか?

“張勲”、“袁術”」

 

 

“チャキ”と、何時の間にやら剣を抜き、その切っ先を二人に向ける雪蓮

それに対し、その切っ先を向けられた2人

張勲と袁術は、“ひぃっ”と声をあげ益々体を震わすのだった

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ!!

私たちは、孫策さんとの約束はちゃんと守ってますぅ!!!」

 

「そそそ、そうなのじゃ!!!

妾たちは、呉には一歩も踏み入れていないのじゃぁぁぁあああ!!!!」

 

 

それでも尚、このように言葉を発することが出来たのは

このまま黙っていれば、自分達の命が危ないと、そう思ったからであろう

そのまま、徐々に後ずさっていく2人

 

しかし・・・

 

 

 

「きゃ、きゃぁっ!!?」

 

 

 

そんな二人は気付いていなかった

なんと2人は気づかぬうちに、あの断崖絶壁の方へと移動していたのだ

というか、これは雪蓮が二人を逃さぬ様、意図的に誘導した結果だったのだが

とうの二人は、そのことに気付くはずもなく

逃げ場のない今の状況に、もう“死んだんじゃね、コレ?”という顔をしていた

 

 

「あらあら、そんなに逃げることないじゃない♪」

 

「「っ!!!!??」」

 

 

と、ニヤニヤしながら近づく雪蓮

同時に大げさに震え、離れようとする2人

しかし、すぐ後ろは断崖絶壁

二人はその落ちるギリギリまで下がり、体を寄せ合い震えていた

 

 

「ちょ、お嬢様、押さないで下さいよっ!?」

 

「な、七乃こそ、押すでないっ!」

 

「・・・ぅっ」

 

 

と、まぁ色々とギリギリな2人

そんな二人の会話を聞き、ピクリと反応をした人物がいた

 

 

 

 

「お・・・すな・・・・・・?」

 

 

 

 

華雄だ

その変化に、雛里は気づき首を傾げていた

 

 

「ほらほら、どうしちゃったの?

逃げなくていいのかしら~?」

 

 

対して、それに気づかない雪蓮は徐々に二人との距離を詰めていく

二人は、涙を流しながらガクガク震えていた

 

 

「ちょちょちょ、お嬢様!!!

駄目ですって、だから押さないでくださいってば!!」

 

「じゃじゃじゃじゃから、押しているのは、七乃の方じゃろ!!!?

もう、押すのは止すんじゃ!!!

いいか、絶対に押さないでほしいのじゃ!!!」

 

「そ、それはこっちの台詞です!!!!

いいですか!!?

絶対に、絶対に押さないでくださいよっ!!!?」

 

「ぅぅ・・・!」

 

 

 

相変わらず、同じような言葉を繰り返す2人

そして・・・どんどんと、表情が変わっていく華雄

雛里は、“まさか”と声を出しかける

 

その、瞬間・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に、任せろぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「か、華雄さぁぁぁあああああああああああん!!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮の真横を風の如く通り過ぎ

震える二人の体を力いっぱい押そうとする、“芸人”の姿が

 

其処には、確かにあった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

二十章 広がるぜ、荊州!!!!~だから、押すなって言ったのに・・・!!!!~

 

 

 

 

「だ、だから・・・なんでアンタは、すぐに、押そうとするの・・・?」

 

「す・・・スマン・・・」

 

 

というのが、雪蓮と華雄の会話である

そんな二人の今の体勢は、何ともギリギリなものであった

 

あの崖から上半身を乗り出し、その手にはそれぞれ二人の少女のまさに“命”を握っていたのだから

 

 

 

「あ、あわわわわわわ・・・」

 

「ひ、ひぃぃぃいいい・・・」

 

 

 

というのは、その命を握られた2人

袁術と張勲の会話(?)である

二人の体は今、それぞれ雪蓮と華雄により、何とか支えられていた

張勲はあまりのショックに、どこぞの“あわわ”の口癖がうつっており

袁術は、“眼下に広がる木々に水分を与えていた”

 

 

 

 

 

 

 

 

木「おぉ・・・快なりっ・・・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

・・・さて、まぁ

 

いつまでもこの姿勢のままでは危険である

華雄と雪蓮は、とりあえず二人の体を引き上げることにしたのだった

 

 

「あら、手が滑っちゃった♪」

 

「ぴぃぃっぃいぃぃいいいい!!!??」

 

 

・・・まぁ、少し遊んでいた人物もいたようだが

 

ともあれ、2人は無事に引き上げられ

今は、乱れた息を整える為座り込んでいる

 

 

「はぁはぁ・・・助かったのじゃ」

 

「は、はいぃ・・・」

 

 

と、そんな彼女たちの様子に笑うのは雪蓮だ

“あら、そうかしら?”と、剣を突き付ける始末

その行動に、2人はまた顔を真っ青にし焦るのだった

 

 

「な~んてね、冗談よ冗談♪」

 

「じょ、冗談には見えなかったのじゃ」

 

 

袁術の言葉に、張勲は無言で頷く

雪蓮は、そんな二人に“本当だってば”とまた笑う

 

 

「あんなの、昔の話じゃない

乱世も終わって、もう随分と経つのよ・・・とっくに、忘れちゃったわ」

 

 

と、雪蓮

それから、袁術に向いスッと手を差し伸べた

 

 

「ほら、いつまでも座り込んでないで立ちなさいよ」

 

「う、うむ・・・」

 

 

その手を、やや警戒していた袁術だったが

しかしやがて、恐る恐るといった感じでその手を掴み

其の場から、立ち上がったのだった

 

 

「あ、ありがとなのじゃ」

 

「いえいえ」

 

 

まぁ、元はといえば雪蓮のせいなのだが

それでも、袁術は気づかぬままに礼を言っていた

そんな彼女の言葉に、雪蓮は笑いを堪えている

 

 

「それにしても・・・」

 

 

と、そのまま

雪蓮が、静かに振り向いた先

其処には、膝を抱え座り込む華雄の姿があった

 

 

「アンタは重症ねぇ・・・」

 

「う、うぅ・・・」

 

 

雪蓮の言葉

華雄は表情を歪ませ、大きく溜め息を吐き出すのだった

 

 

「あぁ、どうしてしまったというのだ

私としたことが、あのような行動を繰り返してしまうなんて・・・」

 

「いや、まぁ・・・ねぇ?」

 

「確実に、一刀さんのせいですよね・・・?」

 

 

雛里の言葉に、雪蓮は苦笑い

まったくもって彼女の言う通りなのだが、このままではいけないのだろう

“さて、どうするか”と二人が考えていた

 

その時だった

 

 

 

「・・・む?」

 

 

ピクリと、体を震わしたのは華雄だ

彼女はそれからゆっくりと立ち上がり、当たりをキョロキョロと見渡す

 

 

「華雄、どうしたの?」

 

「いや、今・・・何か、声が聞こえたような気がしたんだが」

 

 

華雄の言葉

雪蓮は、耳を澄ませる

と、彼女は“あっ”と小さく声を漏らすのだった

 

 

「本当だわ・・・」

 

「な、なんじゃなんじゃ」

 

 

“いったい、どうしたのじゃ?”と、震える袁術

そんな彼女を除く、皆の視線は自然と一か所に集まっていた

 

 

 

 

「誰か・・・“こっちへ近づいてきている”」

 

 

 

 

其処は、奇しくも先ほど袁術と張勲が現れた方向であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

 

「やっほぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

「や、やっほぉぉぉ・・・」

 

「やっほぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「や、やっほぅ・・・」

 

「ひぃぃぃぃいいいいひゃっほぉぉぉぉっぉおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

「ゃっほぉぉぉぉおお・・・いや、いやいやいや」

 

 

さて、場所は変わり

此処は山の中、木々のざわめくまさにけもの道

其処を歩くのは、張遼こと霞と、偶然出会った“登山家・馬謖”だった

そんな二人の行動は、一言でまさに“奇行”であった

故に、我慢出来なくなったのか霞は頭をおさえ口を開くのであった

 

 

「いやいや、なんで?

なんでなん?

なんでこんな、変な叫び声あげながら歩いてるん?

ほんで、なんでアンタはテンションあがっとるん?」

 

「何言ってるんですか、張遼将軍!!

こうして山々に“挨拶”しながら歩くことによって、はぐれてしまったという人を探しているんです!!

ほら、続けてください!!

こう、お腹の中から力いっぱい・・・ひぃぃぃぃはぁぁぁあああああああああああ!!!!!!」

 

「かわっとるやん!!!!

もう、“やっほぉ”残ってへんで!!!??」

 

 

“ああ、疲れる”

霞がそう思ったことを、誰が責められるだろうか?

 

 

 

「はぁ・・・こんなんで、ホンマに大丈夫なんか?」

 

 

 

さて、この二人

あれから霞は、“仲間が山ではぐれ、しかも自分も迷子になってしまった”と説明

どうしたらいいだろうかと、相談したのだ

すると馬謖は、“任せて下さい”と力強く一喝

 

そして・・・現在に至る、というわけである

 

彼女が、“この山は、私の庭みたいなもんです”という強気の発言をしたものだから安心していた霞だったが

しかしまぁ、こんな感じでは不安にもなってしまう

げんに、もう何やら雲行きが怪しいのだ

“あぁ、こらアカンかなぁ”と、彼女はもう何度目になるかわからない溜め息を吐き出すのだった

 

 

 

「にしても・・・此処は何処なんや?」

 

 

“なぁ、馬謖?”と霞

すると、彼女は叫ぶのをピタリと止めてしまう

“どうしたんや?”と、霞は声をあげた

 

 

「・・・」

 

 

しかし、反応はない

続く、沈黙

しかしやがて、霞は“おい、まさか・・・”と恐る恐る口を開いた

 

 

 

 

 

 

「お前、まさか・・・道に迷っt(ry」

 

「いいいいいいいいぃぃぃぃいいいやっほおぉぉぉぉぉおおおおおうううううううううう!!!!!!!!!!」

 

「図星かいいいぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この瞬間

一人だった迷子は、2人に増えていたのだった

 

 

 

 

「なんで!?

なんで迷っとるん!!?

お前、庭言うとったやんか!!!??」

 

「ち、違いますぅ!!

迷ったっていうか、彷徨ったっていうか!!!」

 

「それ、迷ってるぅぅぅうう!!!

確実に、迷っとるやんか!!!!」

 

 

霞は、それはもう力いっぱい叫んだ

それから思う

 

“あぁ、やっぱり今回もダメだったよ”と・・・

 

 

 

 

「だ、だいじょうぶですよ張遼将軍!!

ホラ、力いっぱい叫べば山は答えてくれますって!!!

いきますよ・・・やっほぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「は、はは・・・さよか」

 

 

“んなわけあるかい”と、霞は苦笑い

そもそも、何故叫ぶのか霞には理解出来ていなかった

 

と、そんな中・・・

 

 

 

「あ、あれ・・・?」

 

「ん?」

 

 

馬謖が急に叫ぶのを止め、素っ頓狂な声をあげたのだ

“どないした?”と霞

その言葉に、馬謖は“それが・・・”と口を開いた

 

 

「何か、向こうの方から・・・誰かの声が聞こえた気がして

というか、悲鳴?

こう、“ぴぃぃぃぃいいい”みたいな・・・」

 

「なんやて?」

 

 

と、見つめた先

霞は、“ハッ”となった

 

 

「なんか、ここ・・・さっき、通った道に似とる気が・・・」

 

 

“いや、間違いない”と、彼女は息を呑んだ

“さっき”というのは、霞が皆とはぐれる前のことである

 

ということは、この先は・・・

 

 

 

 

 

「ついて来い、馬謖!」

 

「は、はいっ!」

 

 

駆ける、2人

進むにつれ、霞の足取りは軽くなっていった

 

やがて、微かに開けた場所が見えてきた

“やっぱ、さっきの場所や”と霞は笑い

さらに加速する

もう、目指す場所は目の前だ

 

 

「おぉぉぉい!!

みんなーーーーーーー!!!」

 

 

瞬間・・・

 

 

 

 

 

 

「必殺、“袁術ちゃんバリアーーーーーーーーーーーーーーーーーー”!!!!」

 

「ぴぃぃぃいいい!!!???」

 

「まだここにおっとうぶぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!???」

 

 

 

 

彼女の顔面に飛び込んできたのは、金髪の小さな少女だった

ぶつかった瞬間、何故か“足元が濡れてしまった”ことを

 

彼女は、不思議に思う暇すら与えられなかったとか・・・

 

 

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「遅いな・・・」

 

 

所変わり、ここは一軒の小さな家の中

質素で簡素な造りの、何処にでもありそうな家だ

 

其処に、馬良と司馬懿はいるのだった

 

 

「ていうか、いいのか?

俺が、此処にいてもさ?」

 

 

そう言ったのは、司馬懿だ

話を聞けば、此処は馬良の妹の家らしい

しかし、司馬懿は全くの他人である

彼の言葉は、もっともだった

 

しかし、そんな彼に対し馬良は“気にすんな”と笑う

 

 

「此処は、“私の家でもあるんだ”

それにあんた、どうせ行くあてもないんだろ?

仲間を探すにしても、もう夜だしな

今から探すのは、止しといたほうがいいってのはアンタもわかってるだろ?

だったら、今日は此処に泊めてやるから

仲間は、明日探しな」

 

「いや、助かるけどさ

それにしたって、知らない男を泊めるのは・・・普通、もっと抵抗があるもんじゃないか?」

 

 

司馬懿の言葉

馬良は、クッと笑いを零す

 

 

「これでも、人を見る目はあるつもりさね

アンタは絶対に、そんなことをしないだろ?」

 

「いや、まぁ・・・そうだけどさ」

 

「なら、いいじゃないか」

 

 

“遠慮すんなよ”と馬良

これは敵わないと、司馬懿も笑った

 

 

「それにしても、心配だね

馬良の妹さん、まだ帰ってこないな」

 

「あ~、そうだな

ま、仕方ないか

アイツ・・・山に登るのが大好きなクセに、“極度の方向音痴”だからな」

 

「それは・・・」

 

 

“大丈夫なのか?”と、司馬懿は息を呑んだ

なんか、登山家として致命的な部分に弱点を持っているようだ

馬良は、“だから、馬鹿っていったろ?”と笑っている

 

 

「ま、そのうち帰ってくるだろ

のんびり、気長に待ってようや」

 

「ま、馬良が言うんなら・・・大丈夫なんだよね」

 

 

“なら、遠慮なく”と司馬懿

そんな彼の姿を見ながら、馬良は“そういえば”と口を開く

 

 

「アンタ、司馬懿さ・・・なんで旅してんのか知らないけど

随分と、“時期が悪い時に荊州に入ったな”」

 

 

馬良の言葉

司馬懿は、“え・・・?”と声を漏らした

 

 

「それ、どういう意味なんだ?」

 

 

そう言って、司馬懿が見つめる先

馬良は、眉を顰め腕を組んだ

 

 

「そのまんまの意味さ

ただでさえ悪かった“荊州の情勢”が、この時期は“さらに悪くなるんだよ”」

 

「さらに、悪くなる・・・?」

 

 

言って、司馬懿は息を呑む

そんな彼の様子に気付かぬまま、彼女は話を続けるのだった

 

 

 

 

 

 

「なんせ、もうすぐ“呉蜀・合同荊州会談”が始まるからねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

“呉蜀・合同荊州会談”

 

この言葉を聞いた瞬間

司馬懿は、馬良に聞かれぬ様

 

 

“来たか・・・”と、小さく呟くのだった

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

さて、また舞台は変わる

 

時期にして、司馬懿たちがバラバラになってしまう数日前のこと

場所は、洛陽の城門前

其処には、魏国の名だたる人物たちが集まっていた

それらを率いるのは無論、魏王こと華琳である

 

 

「それじゃあ、留守を頼むわよ“風”」

 

「はい~、お任せください」

 

 

華琳の言葉

返事をするのは、程昱こと風である

 

 

「お兄さんによろしくなのですよ~」

 

「ふふ、任せなさい」

 

 

そう言って、華琳は笑った

 

あの手紙

一刀からの手紙を貰ってからの彼女の行動は早かった

僅か数日で、自らが留守でも国が動くよう準備したのである

普通は不可能なことだと、国内の文官たちは声を揃えて言ったという

恐るべしは、やはり覇王ということだろう

 

そして、いよいよ出発というわけだ

向うのは荊州

未だ混迷の続く場所であり、華琳も気になっている場所だったのだが

この場所を指定するあたり、何か理由があるのだろうと

彼女は、“笑うのだった”

 

ついてくるのは、魏の重臣たちと約千人の兵である

対して、留守番をするのは風と・・・

 

 

 

「それから、稟を頼んだわよ」

 

「・・・はい~」

 

 

 

郭嘉こと、稟であった

 

 

 

「医者の話では、しばらくは“安静にするように”とのことですが・・・」

 

「“原因はまだわからない”、と?」

 

「はい、そのようなのですよ」

 

 

“そう・・・”と、華琳は表情を微かに歪める

風もまた、同じように表情を歪めた

 

それは、荊州への出発が次の日と迫った時のことであった

 

稟が、倒れたのだ

それはあまりにも突然で、みな揃って大いに焦ったものである

倒れた本人もまた、“ワケがわからない”という表情をしていた

ひとまず病室まで運ばれたのだが、今度は熱が出て、おまけに吐き気までするとのこと

それから程なくして医者が呼ばれたのだが・・・原因は“不明”

ひとまずは安静にし、様子を見るようだ

 

当然、稟は荊州にいけず

“あらかじめ留守だと決まっていた風”が、彼女の看病もすることとなったのだ

 

 

 

「何かあったら、すぐにお知らせしますので

華琳様は、どうか気兼ねなく荊州へと向かってください」

 

「わかったわ

任せたわね、風」

 

 

“御意”と、風

それから、華琳はその瞳を風の隣へとうつす

 

そこには白い衣服に身を包んだ、一人の小さな少女の姿があった

彼女はその少女を見つめ、軽く笑みを浮かべる

 

 

「貴方にも期待しているわ

私たちが留守の間、存分にその腕を振るいなさい・・・“馬鈞”」

 

「お任せくださいっ!」

 

 

なんと・・・其処にいたのは、馬鈞だったのだ

華琳の言葉に、彼女、いや“彼”は元気よく返事をし笑った

 

 

「僕の働きが、この国の役にたった暁には・・・」

 

「ええ

約束通り、“一刀との会談の場を設けてあげるわ”」

 

 

“やったぁ♪”と馬鈞

その姿に笑みを零し、それから彼女はもう一度風を見つめる

それから、振り返った先

自らに従う者達を見つめ、力強く叫ぶのだった

 

 

 

「これより、荊州へと向かう!

全軍、進軍!!」

 

 

 

“御意”と、大きな声が響き渡った

向うのは荊州

その背を見つめ、風は・・・深く、“溜め息”をつくのだった

 

 

「まったく、大変なのですよ・・・」

 

 

それから、懐から取り出したのは

一枚の手紙だった

 

 

「お兄さんはいったい・・・なにを、するつもりなんでしょうかね~」

 

 

それを見つめ、小さく呟く風

その紙は、見慣れていた・・・だが、とても“懐かしい字”で書かれていた

 

 

「“呉蜀・合同荊州会談”の時期を狙ったかのような、華琳様への手紙

そして・・・この、“はじめから予知していたかのような手紙”」

 

 

見つめる先

その手紙には、こう書かれていた

 

 

 

 

 

 

“君達にしか、頼めない

稟と共に、時を待て”

 

 

 

 

 

 

「さてさて・・・いったい、どうなることやら~」

 

 

 

呟き、溜め息を吐き出した風

予感がすると、彼女は思った

 

それがはたして、“良い予感”なのか“悪い予感”なのか

 

それは、彼女にもわからなかったのである・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

★あとがき★

 

20話と相成ります

既存のお話は、もうすぐ全て載せられるでしょうか

 

 


 
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