ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」
番外編・自転車
「私も自転車に乗ってみたいんだけど」
そんなアンジェリカの頼みに、ジークは声を
弾ませて「乗れよ」と後ろの荷台を指し示した。
しかし、アンジェリカはなぜか首を横に振った。
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「ジークが自転車に乗れるなんて知らなかった」
「これでも俺は二輪整備士の息子なんだけどな」
「そうだったの?」
「あれ? 言ってなかったか?」
「うん……」
アンジェリカの受け答えは、どこか上の空だった。その目はひたすら自転車に注がれている。自分ではなく自転車にばかり気を取られていることに、ジークは苦笑したが、それでも何かに夢中になっている彼女を見ていると自然と顔が綻んでくる。
「ジーク、いま、忙しい?」
ようやく顔を上げたアンジェリカは、大きな漆黒の瞳で、じっとジークを見つめて尋ねた。それはジークが尋ねたかったことでもあり、気持ちは同じなのだと嬉しくなる。
「いや、暇を持て余してたところ。どこか行くか?」
「私も、自転車に乗ってみたいんだけど……」
「ああ、乗れよ」
声を弾ませてそう言うと、ジークは後ろの荷台を親指で指し示した。いつか彼女と二人乗りできたらと思っていたので、願ったり叶ったりである。二人で風を切って走るところを想像し、早くも胸が高鳴ってきた。
しかし、アンジェリカはなぜか首を横に振った。
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http://celest.serio.jp/celest/novel_kakato.html
番外編・自転車
「私も自転車に乗ってみたいんだけど」
そんなアンジェリカの頼みに、ジークは声を
弾ませて「乗れよ」と後ろの荷台を指し示した。
しかし、アンジェリカはなぜか首を横に振った。
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「ジークが自転車に乗れるなんて知らなかった」
「これでも俺は二輪整備士の息子なんだけどな」
「そうだったの?」
「あれ? 言ってなかったか?」
「うん……」
アンジェリカの受け答えは、どこか上の空だった。その目はひたすら自転車に注がれている。自分ではなく自転車にばかり気を取られていることに、ジークは苦笑したが、それでも何かに夢中になっている彼女を見ていると自然と顔が綻んでくる。
「ジーク、いま、忙しい?」
ようやく顔を上げたアンジェリカは、大きな漆黒の瞳で、じっとジークを見つめて尋ねた。それはジークが尋ねたかったことでもあり、気持ちは同じなのだと嬉しくなる。
「いや、暇を持て余してたところ。どこか行くか?」
「私も、自転車に乗ってみたいんだけど……」
「ああ、乗れよ」
声を弾ませてそう言うと、ジークは後ろの荷台を親指で指し示した。いつか彼女と二人乗りできたらと思っていたので、願ったり叶ったりである。二人で風を切って走るところを想像し、早くも胸が高鳴ってきた。
しかし、アンジェリカはなぜか首を横に振った。
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