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現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」第2話・不条理な要求

現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」第2話・不条理な要求
現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第2話・不条理な要求

「29歳のオトナが、17歳のコドモと
付き合ってもいいわけ?」
誠一を待ち伏せしていた恋人の兄は、
蔑むような冷たい目を向けて、
そんなことを問いかけてきた。

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「そうだ、何か話があったんじゃないのか?」
「ああ、うん、澪と別れてもらおうと思って」
 一瞬にして、誠一の愛想笑いは凍り付いた。あまりにも軽い口調だったので、何かの冗談ではないかと思ったが、彼には少しの笑みも見られなかった。それどころか静かに挑むような目を向けている。
「……随分はっきりと言ってくれるな」
「まわりくどいのは好きじゃないから」
「とりあえず理由を聞かせてもらおうか」
 誠一は出来うる限り冷静に尋ねた。本人に内緒でこんなことを頼みにくるなど卑怯であり、腹立たしく思ったが、感情的になるのは大人としての態度ではない。彼が間違った行動をとっているのなら、自分が諭さねばならないだろう。そう思っていたのだが——。
「29歳のオトナが、17歳のコドモと付き合ってもいいわけ?」
「うっ……」
 言葉を詰まらせた誠一に、遥は冷ややかに畳み掛ける。
「付き合い始めたのは16になりたての頃だったよね?」
「あ、ああ……まあ……」
「マズいんじゃないの?」
 澪とよく似た顔立ちの遥から、蔑むような眼差しを向けられて、誠一は体中から冷や汗が噴き出した。
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