恋愛ファンタジー小説「ピンクローズ - Pink Rose -」
番外編・指定席
僕を許してほしい、必ず、君を幸せにするから——。
サイファは歪んだ気持ちをひた隠しにしながら、
彼女を抱く手に再び力をこめると、
その額にそっと口づけを落とした。
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きっと君は知らないだろう、僕がどれほど怖れているのかを——。
「ねえ、レイチェル、僕たちが結婚するまであとどのくらい?」
「私が16歳になったらすぐだから、あと4年くらいだと思うわ」
レイチェルは何の疑いもなく自分の運命を受け入れている。しかし、もしいつか反発するようになってしまったら、他の誰かを好きになってしまったら——そのことを考えると、冷たい手で心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖を感じる。
たとえ彼女が誰に恋いこがれようと、サイファの婚約者であるという事実は覆らない。互いの気持ちはどうであれ、ラグランジェ家として決定されたことなのだ。
だが、それではあまりにも悲しすぎる。
だから、幼い頃からずっと、彼女が自分だけに目を向けるように仕向けてきた。明確に意識してそうしたつもりはないが、なるべく他人と交流させないようにするなど、結果的にはそういう行動をとっているのだ。外の世界など何も知らなくていい、という歪んだ気持ちは、心のどこかに確かに存在している。
僕を許してほしい、必ず、君を幸せにするから——。
サイファは彼女を抱く手に再び力をこめると、その額にそっと口づけを落とした。
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http://celest.serio.jp/celest/novel_pinkrose.html
番外編・指定席
僕を許してほしい、必ず、君を幸せにするから——。
サイファは歪んだ気持ちをひた隠しにしながら、
彼女を抱く手に再び力をこめると、
その額にそっと口づけを落とした。
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きっと君は知らないだろう、僕がどれほど怖れているのかを——。
「ねえ、レイチェル、僕たちが結婚するまであとどのくらい?」
「私が16歳になったらすぐだから、あと4年くらいだと思うわ」
レイチェルは何の疑いもなく自分の運命を受け入れている。しかし、もしいつか反発するようになってしまったら、他の誰かを好きになってしまったら——そのことを考えると、冷たい手で心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖を感じる。
たとえ彼女が誰に恋いこがれようと、サイファの婚約者であるという事実は覆らない。互いの気持ちはどうであれ、ラグランジェ家として決定されたことなのだ。
だが、それではあまりにも悲しすぎる。
だから、幼い頃からずっと、彼女が自分だけに目を向けるように仕向けてきた。明確に意識してそうしたつもりはないが、なるべく他人と交流させないようにするなど、結果的にはそういう行動をとっているのだ。外の世界など何も知らなくていい、という歪んだ気持ちは、心のどこかに確かに存在している。
僕を許してほしい、必ず、君を幸せにするから——。
サイファは彼女を抱く手に再び力をこめると、その額にそっと口づけを落とした。
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