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ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」番外編・明日に咲く花 - 瀬踏

ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」番外編・明日に咲く花 - 瀬踏
ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」
番外編・明日に咲く花 - 瀬踏

襲われかけていたところを助けたお礼ということで、
ジョシュはユールベルの部屋に招待された。
しかし、心躍らせる彼の前に現れたのは、
上半身裸で首にタオルを掛けた男だった。

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 ユールベルが入っていったのは、まだ真新しいマンションだった。建物自体はそれほど大きくないが、落ち着いた上品な造りで、そこはかとなく高級感が漂っている。彼女はエントランスを通り抜け、階段を上ると、突き当たりの扉を重たそうに開いた。
「あれ? 早かったね」
「迎えに行っただけだから」
 中からユールベルに声を掛けたのは、上半身裸で首にタオルを掛けた男だった。鮮やかな金の髪からは水滴が滴っている。どうやら風呂上がりのようだ。彼はユールベルの後ろにいたジョシュとサイラスにちらりと目を向ける。
「その人たち?」
「ええ」
 確認するような短い質問に、ユールベルは中に入りながら肯定の答えを返した。それを聞いた彼は、タオルで前髪を掻き上げ、眩いばかりの笑顔を二人に向ける。
「いらっしゃい、今日はゆっくりしていって」
 そんな歓迎の言葉を口にすると、スタスタと部屋の中へと入っていった。
「……えっと、誰?」
 呆然として固まっていたサイラスは、ようやく口を開き、男の消えていった方を指さしながらユールベルに尋ねた。それはジョシュが聞きたかったことでもある。まさかとは思うが——。
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▼遠くの光に踵を上げて
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