恋愛ファンタジー小説「ピンクローズ - Pink Rose -」
第30話・15歳の花嫁
「二人で逃げよう!」
様々な困難を乗り越えてようやく迎えた結婚式の日に、
そう言って花嫁姿のレイチェルに手を伸ばしたのは、
彼女の隣家に住む少年、レオナルドだった。
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「レイチェル、行こう!!」
「行こうって……どこへ?」
レイチェルがきょとんとして聞き返すと、レオナルドは強引に彼女の手を掴んだ。
「どこか遠いところへ行って二人で暮らそう! 親が勝手に決めただけの結婚なんてすることない!! こんな腹黒で最低なやつとじゃ、幸せになんかなれないよ!!!」
彼は真剣だった。
それゆえにレイチェルは戸惑っていた。あまりにも突拍子もないことを言われ、そしてその思いの強さを目の当たりにして、どうしたらいいのかわからないという心情がありありと感じられた。彼女は心苦しそうにレオナルドを見つめると、蒼の瞳を揺らしながら、薄紅を引いた小さな唇を開いて言う。
「ごめんなさい、私、サイファと結婚するから……」
「聞いただろう? もう帰れ」
サイファは少年の手首を掴んで彼女から引き離そうとする。
だが、レオナルドは従わなかった。触れることさえ許さないといわんばかりに、思いきりサイファの手をはねのけると、一歩下がって上目遣いでキッと睨みつける。
「こんなの無理やり言わされてるだけだ。本心じゃない。レイチェルはおまえなんかと結婚したくないんだ。レイチェルのことが好きだったら自由にしてやれよ!!」
レオナルドの言葉はすべて思い込みの産物にすぎない。レイチェルがこんな相談をするはずはないのだ。そのことはわかっている。しかし、サイファの心には、確実に深く突き刺さるものがあった。
「わかったようなことを言うな」
感情を押し殺した声でそう言うと、レオナルドの小さな肩に手を掛け、ゆっくりと背後の扉に押しつけた。怯えた色が覗く双眸を、まじろぎもせずに凝視する。
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▼ピンクローズ - Pink Rose -
http://celest.serio.jp/celest/novel_pinkrose.html
第30話・15歳の花嫁
「二人で逃げよう!」
様々な困難を乗り越えてようやく迎えた結婚式の日に、
そう言って花嫁姿のレイチェルに手を伸ばしたのは、
彼女の隣家に住む少年、レオナルドだった。
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「レイチェル、行こう!!」
「行こうって……どこへ?」
レイチェルがきょとんとして聞き返すと、レオナルドは強引に彼女の手を掴んだ。
「どこか遠いところへ行って二人で暮らそう! 親が勝手に決めただけの結婚なんてすることない!! こんな腹黒で最低なやつとじゃ、幸せになんかなれないよ!!!」
彼は真剣だった。
それゆえにレイチェルは戸惑っていた。あまりにも突拍子もないことを言われ、そしてその思いの強さを目の当たりにして、どうしたらいいのかわからないという心情がありありと感じられた。彼女は心苦しそうにレオナルドを見つめると、蒼の瞳を揺らしながら、薄紅を引いた小さな唇を開いて言う。
「ごめんなさい、私、サイファと結婚するから……」
「聞いただろう? もう帰れ」
サイファは少年の手首を掴んで彼女から引き離そうとする。
だが、レオナルドは従わなかった。触れることさえ許さないといわんばかりに、思いきりサイファの手をはねのけると、一歩下がって上目遣いでキッと睨みつける。
「こんなの無理やり言わされてるだけだ。本心じゃない。レイチェルはおまえなんかと結婚したくないんだ。レイチェルのことが好きだったら自由にしてやれよ!!」
レオナルドの言葉はすべて思い込みの産物にすぎない。レイチェルがこんな相談をするはずはないのだ。そのことはわかっている。しかし、サイファの心には、確実に深く突き刺さるものがあった。
「わかったようなことを言うな」
感情を押し殺した声でそう言うと、レオナルドの小さな肩に手を掛け、ゆっくりと背後の扉に押しつけた。怯えた色が覗く双眸を、まじろぎもせずに凝視する。
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