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ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」番外編・明日に咲く花 - 怯懦

ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」番外編・明日に咲く花 - 怯懦
ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」
番外編・明日に咲く花 - 怯懦

一度は縮まったかに思えたジョシュとの距離だったが、
それは幻想だったのだろうか。彼に避けられている——
だが、ユールベルにはその理由がわからない。
彼女は意を決してサイラスに相談する。

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「最初にジョシュが冷たい態度をとっていた理由ならわかるよ」
「えっ……?」
 思いもしなかったサイラスの言葉に、ユールベルは目を見開いて聞き返した。
「ジョシュはね、ラグランジェ家が嫌いなんだ。多分、理由はそれだけだと思うよ」
 サイラスは柔らかく微笑んで言う。
「でもどうして? ラグランジェ家が嫌いって……」
「さあ、どうしてかな。ジョシュは真面目だから、柔軟な対応をするサイファに反発しているというのはあるだろうね。それに、何かと優遇されているラグランジェ家の人間を見て、やりきれない思いを持っているのかも」
 ユールベルは何も言えずにうつむいた。それを見て、サイラスは慌てて付け加える。
「ユールベルが責任を感じることはないんだよ」
「私、わかったわ……」
 ユールベルは呟くように言った。
 サイラスはきょとんと瞬きをして覗き込む。
「わかったって、何が?」
「私もおじさまの口添えで研究所に入ることになったもの。ジョシュの嫌いなラグランジェ家の人間そのものだわ。でも、あの事件のことで少し同情してしまって、どっちつかずの態度になっているのね」
 ユールベルはうつむいたままで言う。それがもっとも辻褄の合う答えだと思った。今までモヤモヤしていたものがストンと腑に落ちた気がした。
 しかし、サイラスは納得していないようだった。
「うーん……本当は冷たい態度をとっていたことを後悔しているけれど、素直にそれを言いだせないって可能性の方が高いと思うよ。ジョシュだってユールベルが研究所に入るだけの実力があることはわかってるはずだし、いつまでもそんな言いがかりみたいな理由で嫌ったりしないんじゃないかな」
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▼遠くの光に踵を上げて
http://celest.serio.jp/celest/novel_kakato.html