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ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」番外編・明日に咲く花 - 依頼

ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」番外編・明日に咲く花 - 依頼
ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」
番外編・明日に咲く花 - 依頼

ラウルの医務室へとやってきたサイファは、唐突に
「恋愛コミュニケーション講座」の講師を依頼をする。
一見、ふざけているようにしか思えないが、その真意は——。

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「何だと……?」
 ラウルはカルテを整理する手を止めて振り向くと、顔いっぱいに疑念を広げ、思いきり眉をひそめて聞き返した。しかし、患者用の丸椅子に座るサイファは、対照的に満面の笑みを浮かべて答える。
「だから講師を頼みたいんだよ。ラグランジェ家の若者を集めて講座を開くんだ。題して『ラウルの恋愛コミュニケーション講座』」
「ふざけるな」
 ラウルはこめかみに青筋を立てて一蹴した。
 それでもサイファは少しも動じることなく、にっこりと笑顔を浮かべたままで言う。
「大真面目だよ。ラウルにも話しただろう? ラグランジェ家も一族の者以外との婚姻を認めることにしたと。通達したのはラグランジェ家の人間にだけだが、もう随分と世間に広まってしまったようでね。ラグランジェ家に入ってその力を得ようとする者が動き出しているんだ」
 確かにそういう動きがあってもおかしくはない、とラウルは思う。ラグランジェの名には良くも悪くも強大な影響力がある。ある種の権力といってもいい。実力のない人間ほど手に入れたがるものだ。サイファも当然ながら想定はしていただろう。だが——。
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▼遠くの光に踵を上げて
http://celest.serio.jp/celest/novel_kakato.html