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「東京ラビリンス」第61話・手荒い祝福

「東京ラビリンス」第61話・手荒い祝福
現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第61話・手荒い祝福

「さぁて、何から聞こうかな」
結婚を報告すると、綾乃と真子から質問攻めにされた。
ただ、綾乃は結婚相手のことが気に入らないらしく、
いちいち棘のある辛辣な物言いをしてくる。
彼女にもこの結婚を祝福してほしいのに——。

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「さぁて、何から聞こうかな」
 綾乃は頬杖をつき、獲物を狙う狩人のようなまなざしで澪を見据え、逃さないとばかりにニッと口の端を上げた。その隣では真子がニコニコと柔らかく微笑んでいる。二人の表情はまるで違うが、澪から話を聞き出したいという目的は一致しているのだろう。
 向かいの澪は、膝に手を置いたまま体をこわばらせた。
 澪たち三人の前にはそれぞれケーキと紅茶が置かれている。お祝いということで、澪の分については綾乃と真子がおごってくれるらしい。もちろん気持ちは素直に嬉しいが、それ以上の代償を求められることになりそうで少し怖い。
 綾乃はうっすらと湯気の立つ紅茶を口に運び、一息ついてから尋ねる。
「相手、本当にあのパンツ男?」
「うん……そうだけど……」
 すっかりパンツ男という呼称が定着してしまったようで、澪としては何ともいえない微妙な気持ちになる。
「ねえ、パンツとか言うのもうやめようよ」
「よりによってなんでパンツ男かねぇ」
 澪の話を聞いているのかいないのか、綾乃は見るからに不満げな面持ちで独りごちるように難癖をつける。パンツ男という呼称をあらためる気はまるでないようだ。紙ナプキンの上に置かれた小さめのフォークを手に取り、ケーキに突き刺しながら言う。
「名家の御曹司でもないんでしょ?」
「あ、全然そういうのじゃないよ」
「刑事だっけ?」
「……うん、まあ」
 今はもう刑事ではないが、警察には勤めているので似たようなものだろうと言葉を濁す。自分でもあまり違いがわからないので説明が難しく、また異動の経緯を追及されても答えに困るため、いっそ最初から言わない方が賢明だと思ったのだ。
 綾乃は口にケーキを放り込んで咀嚼しながら、フォークの先端を澪に向ける。
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