現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第51話・いつか素敵な
「澪、結婚しよう」
父親から暴行を受けた澪を守るため、誠一はその意志を固める。
事を荒立てず未成年の彼女を守るにはそれが最善だと考えたのだ。
しかし、彼女は——。
-------------------
「澪、結婚しよう」
「……え? ええぇっ?!」
あまりにも唐突すぎて、一瞬、何を言われたのか理解できなかった。驚きのあまり腕をつっぱって体を離し、まじまじと彼の顔を見つめる。何かの冗談ではないかと思ったのだが、彼はいたって真剣な面持ちをしていた。どうやら聞き違いというわけでもなさそうだ。
「そうすれば俺が家族として澪を守ってやれる。澪の父親は認めないかもしれないが、橘会長なら何とかしてくれるはずだ。澪さえ良ければ今すぐにでも頼んでくる。だから、俺と結婚することを了承してくれ」
まっすぐ瞳を覗き込んで真摯に訴えてくる。澪は胸が熱くなるのを感じて目を細めた。
「嬉しい……すごく嬉しいけど……でも……」
顔をうつむけて奥歯に物が挟まったように言い淀む。それでも誠一は急かすことなく次の言葉を待っていた。こんなふうに待たれると余計に言いづらいが、だからといっていつまでも押し黙っているわけにもいかず、申し訳なさを感じながらおずおずと上目遣いで言葉を継ぐ。
「それじゃあ、夫婦っていうより親子みたいだし……」
-------------------
http://celest.serio.jp/celest/novel_tokyo.html
第51話・いつか素敵な
「澪、結婚しよう」
父親から暴行を受けた澪を守るため、誠一はその意志を固める。
事を荒立てず未成年の彼女を守るにはそれが最善だと考えたのだ。
しかし、彼女は——。
-------------------
「澪、結婚しよう」
「……え? ええぇっ?!」
あまりにも唐突すぎて、一瞬、何を言われたのか理解できなかった。驚きのあまり腕をつっぱって体を離し、まじまじと彼の顔を見つめる。何かの冗談ではないかと思ったのだが、彼はいたって真剣な面持ちをしていた。どうやら聞き違いというわけでもなさそうだ。
「そうすれば俺が家族として澪を守ってやれる。澪の父親は認めないかもしれないが、橘会長なら何とかしてくれるはずだ。澪さえ良ければ今すぐにでも頼んでくる。だから、俺と結婚することを了承してくれ」
まっすぐ瞳を覗き込んで真摯に訴えてくる。澪は胸が熱くなるのを感じて目を細めた。
「嬉しい……すごく嬉しいけど……でも……」
顔をうつむけて奥歯に物が挟まったように言い淀む。それでも誠一は急かすことなく次の言葉を待っていた。こんなふうに待たれると余計に言いづらいが、だからといっていつまでも押し黙っているわけにもいかず、申し訳なさを感じながらおずおずと上目遣いで言葉を継ぐ。
「それじゃあ、夫婦っていうより親子みたいだし……」
-------------------
http://celest.serio.jp/celest/novel_tokyo.html