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「東京ラビリンス」第45話・家族にはなれなくても

「東京ラビリンス」第45話・家族にはなれなくても
現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第45話・家族にはなれなくても

「家族ごっこはもう終わりにしよう」
血の繋がらない父である大地が、急にそんなことを言い出す。
十七年間、ずっと家族だと思っていたのは自分だけだった。
澪の中で何かがガラガラと音を立てて崩れた。

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「僕はともかく、澪と遥はこんなことを忘れて幸せになるべきだ。いっそ橘から離れた方がいいのかもしれないね。父も僕と同じで常軌を逸したところがあるし、何をさせられるかわかったもんじゃない。未成年の今ならいろんな意味で間に合うよ」
「嫌です。私はお父さまとお母さまの娘です」
 澪は迷わず強気に言い返した。自分たちの行く末を案じての提案であることは理解している。それでも、何か突き放されたように感じて胸が苦しい。欲しかったのはこんな言葉ではない。しかし、彼は淡々と冷ややかな言葉を重ねていく。
「僕は澪の父親ではないよ」
「私にとってはお父さまです」
「そう思いたいだけだろう」
「いけませんか」
「もう少し柔軟に生きた方がいいね」
 ここまでくると、いくら鈍感な澪でも気付かざるを得なかった。彼は自分たちを切り捨てたいのかもしれない、と——。唇を噛んだ澪に、大地は表情を動かすことなく追い討ちを掛ける。
「僕と澪に血の繋がりがないのは事実なんだ」
「でも……、十七年間、私たちは家族でした」
「僕はそう思ってなかったけどね」
 澪の中で何かがガラガラと音を立てて崩れた。ブラウスの胸元を掴んでうつむく。
「家族だって、娘だって……言ってくれたじゃないですか」
「そういう設定だったからだよ。家族ごっこはもう終わりにしよう」
「自分たちの都合で勝手に作ったくせに、身勝手にも程があります」
「そうだね」
 どう言っても、どう責めても、彼にはまるで響かないようだ。澪はゆっくりと手を下ろした。
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