現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第21話・囚われの少女
研究所の地下室には、赤い瞳の少女が監禁されていた。
母親が、何らかの実験のために使用していたらしい。
澪はまだ幼いその少女を救出しようとするが、そこに、
澪をしつこく付けまわしていたバイク男が現れ——。
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「目を開けろ!!」
体を動かそうとすると背中がズキリと痛んだ。瞼を震わせながら、ゆっくりと目を開く。澪を覗き込んで切羽詰まった声を上げていたのは、フルフェイスのヘルメットをかぶった男だった。見えているのはシールドを上げた目元だけである。しかし、澪はそれだけで誰だか認識できた。
「バイク男……?」
「この子はどこにいる?!」
まだ薄目でぼんやりとしている澪に、一枚の写真を突きつけて詰問する。それは、ここに監禁されていた少女の顔写真だった。次第に頭がクリアになり、状況を思い出していく。スチール机に置かれた写真と記録、小さな少女の怯えた表情、父親の諦めたような態度、自分たちがここへ来た目的、そして、ひとりここで倒れていた理由——ハッとして、弾かれるように絨毯敷きの床から飛び起きる。
ベッドの上に、少女の姿はなかった。開かれた手枷だけが残っている。
「お母さま……」
姿は一瞬しか見えなかったが、あれは間違いなく母親の美咲である。スタンガンを使ってまでどうして——いまだに背中が痛むのを感じながら、ゆっくりと目を伏せて考え込む。が、バイク男は容赦なく肩を掴んで詰め寄ってきた。
「橘美咲が連れて行ったんだな?!」
「た、多分……ていうか、あなた何なの?」
澪は眉をひそめて疑問をぶつける。しかし、彼の耳には届いてさえいないようだ。掴んだ澪の肩を揺さぶりながら、怖いくらいの勢いで必死に問いただす。
「橘美咲はどこへ行った?! 答えろっ!!」
「そんなの、私が聞きたいよ……」
悄然とした気持ちが声に表れる。バイク男はギリと奥歯を食いしばった。
「来い!!」
「あっ」
抵抗する間もなく、澪の両手首に金属製の手錠が掛けられた。
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http://celest.serio.jp/celest/novel_tokyo.html
第21話・囚われの少女
研究所の地下室には、赤い瞳の少女が監禁されていた。
母親が、何らかの実験のために使用していたらしい。
澪はまだ幼いその少女を救出しようとするが、そこに、
澪をしつこく付けまわしていたバイク男が現れ——。
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「目を開けろ!!」
体を動かそうとすると背中がズキリと痛んだ。瞼を震わせながら、ゆっくりと目を開く。澪を覗き込んで切羽詰まった声を上げていたのは、フルフェイスのヘルメットをかぶった男だった。見えているのはシールドを上げた目元だけである。しかし、澪はそれだけで誰だか認識できた。
「バイク男……?」
「この子はどこにいる?!」
まだ薄目でぼんやりとしている澪に、一枚の写真を突きつけて詰問する。それは、ここに監禁されていた少女の顔写真だった。次第に頭がクリアになり、状況を思い出していく。スチール机に置かれた写真と記録、小さな少女の怯えた表情、父親の諦めたような態度、自分たちがここへ来た目的、そして、ひとりここで倒れていた理由——ハッとして、弾かれるように絨毯敷きの床から飛び起きる。
ベッドの上に、少女の姿はなかった。開かれた手枷だけが残っている。
「お母さま……」
姿は一瞬しか見えなかったが、あれは間違いなく母親の美咲である。スタンガンを使ってまでどうして——いまだに背中が痛むのを感じながら、ゆっくりと目を伏せて考え込む。が、バイク男は容赦なく肩を掴んで詰め寄ってきた。
「橘美咲が連れて行ったんだな?!」
「た、多分……ていうか、あなた何なの?」
澪は眉をひそめて疑問をぶつける。しかし、彼の耳には届いてさえいないようだ。掴んだ澪の肩を揺さぶりながら、怖いくらいの勢いで必死に問いただす。
「橘美咲はどこへ行った?! 答えろっ!!」
「そんなの、私が聞きたいよ……」
悄然とした気持ちが声に表れる。バイク男はギリと奥歯を食いしばった。
「来い!!」
「あっ」
抵抗する間もなく、澪の両手首に金属製の手錠が掛けられた。
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