ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」
番外編・明日に咲く花 - 陽の当たる場所(最終話)
たくさんの人が見捨てずにいてくれたから、
いま、私はここにいる——。
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重厚な両開きの扉が大きく開け放たれていた。
そこから射し込む白い陽光は、中央の赤い絨毯を鮮やかに照らしている。
ジョシュとユールベルは、その突き当たりにある祭壇の前に並んで立っていた。二人とも神聖な雰囲気に呑まれ、やや緊張ぎみの表情を見せている。足下にはステンドグラスの光が落ち、純白のドレスの裾を、幻想的な彩りで染め上げていた。
赤絨毯の両側に並んだ木製の長椅子には、ジョシュの関係者である彼の両親と、ユールベルの関係者であるサイファ、レイチェル、アンソニーが、それぞれ左右に分かれて座っていた。サイファたちはにこやかに見守っているが、ジョシュの両親はどちらも緊張しているようで、必要以上に姿勢を正し、ガチガチにこわばった表情で正面を見つめている。
神父は誓いの言葉を読み上げ始めた。
「ジョシュ=パーカー、あなたはいまこの女性と結婚し、神の定めに従って夫婦となろうとしています。あなたはその健やかなときも、病めるときも、豊かなるときも、貧しきときも、この女性を愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、そのいのちの限りともに生きることを誓いますか」
「……誓います」
ジョシュは少し掠れた声で答えた。
神父はユールベルに視線を移し、読み上げる。
「ユールベル=アンネ=ラグランジェ、あなたはいま——」
その言葉を聞きながら、ユールベルは、これまでのことを走馬燈のように脳裏によみがえらせていた。自暴自棄になっていた自分が、ここまで辿り着くことができたのは、ジョシュはもちろんのこと、サイファやラウル、ターニャ、レオナルド、ジーク、アンジェリカ、サイラス、アンソニー、その他たくさんの人たちが見捨てずにいてくれたからだろう。思い返すのも怖いくらい迷惑も掛けた。だからといって、ここで身を引いたところで何にもならない。感謝と謝罪の気持ちを胸に、怖がらず……いや、怖がりつつも、前を向いて進んでいこうと決めたのだから。
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http://celest.serio.jp/celest/novel_kakato.html
番外編・明日に咲く花 - 陽の当たる場所(最終話)
たくさんの人が見捨てずにいてくれたから、
いま、私はここにいる——。
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重厚な両開きの扉が大きく開け放たれていた。
そこから射し込む白い陽光は、中央の赤い絨毯を鮮やかに照らしている。
ジョシュとユールベルは、その突き当たりにある祭壇の前に並んで立っていた。二人とも神聖な雰囲気に呑まれ、やや緊張ぎみの表情を見せている。足下にはステンドグラスの光が落ち、純白のドレスの裾を、幻想的な彩りで染め上げていた。
赤絨毯の両側に並んだ木製の長椅子には、ジョシュの関係者である彼の両親と、ユールベルの関係者であるサイファ、レイチェル、アンソニーが、それぞれ左右に分かれて座っていた。サイファたちはにこやかに見守っているが、ジョシュの両親はどちらも緊張しているようで、必要以上に姿勢を正し、ガチガチにこわばった表情で正面を見つめている。
神父は誓いの言葉を読み上げ始めた。
「ジョシュ=パーカー、あなたはいまこの女性と結婚し、神の定めに従って夫婦となろうとしています。あなたはその健やかなときも、病めるときも、豊かなるときも、貧しきときも、この女性を愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、そのいのちの限りともに生きることを誓いますか」
「……誓います」
ジョシュは少し掠れた声で答えた。
神父はユールベルに視線を移し、読み上げる。
「ユールベル=アンネ=ラグランジェ、あなたはいま——」
その言葉を聞きながら、ユールベルは、これまでのことを走馬燈のように脳裏によみがえらせていた。自暴自棄になっていた自分が、ここまで辿り着くことができたのは、ジョシュはもちろんのこと、サイファやラウル、ターニャ、レオナルド、ジーク、アンジェリカ、サイラス、アンソニー、その他たくさんの人たちが見捨てずにいてくれたからだろう。思い返すのも怖いくらい迷惑も掛けた。だからといって、ここで身を引いたところで何にもならない。感謝と謝罪の気持ちを胸に、怖がらず……いや、怖がりつつも、前を向いて進んでいこうと決めたのだから。
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