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「東京ラビリンス」第16話・親子

「東京ラビリンス」第16話・親子
現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第16話・親子

「女で間違いないようだな」
残虐な笑みを瞳に宿した内藤は、
太腿から付け根へ指を這わせると、
ひどく下卑た声で言う。
澪は涙をにじませながらも、声が漏れないよう、
仮面の下できつく唇を噛みしめた。

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 内藤がゆったりと近づいてきた。
「まさか、これほど簡単に捕らえられるとはな。他にもいくつか罠を準備してあったが、少々買い被りすぎだったのかもしれん」
 吊された怪盗ファントムを見上げながら、顎に手を添え、いかにも愉しそうに声を弾ませる。そして、残虐な笑みを瞳に宿すと、粘り気のある眼差しをいやらしく這わせていく。澪の全身にゾクリと悪寒が走った。
「一部では性別不明と言われているが」
「……っ!!」
 内藤の無骨な指が、網越しに澪の太腿に触れた。口から飛び出しそうになった悲鳴を何とか呑み込む。しかし、それで終わりではなかった。ゆっくりともったいつけるように、もしくはじっくりと味わうように、太腿をなぞりながら付け根の方へと滑らせていく。澪は涙目で唇を噛みしめながら、身をよじり、見つからないよう密かに内ポケットを探った。
「女で間違いないようだな」
 ひどく下卑た声が耳に届く。
「すぐに警察に引き渡すのは惜しい。顔はまだわからんが、体はなかなか良さそうだからな。少し楽しませてもらってからでも遅くはないだろう。拘束具も用意して……」
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▼東京ラビリンス
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