瑞原唯子 さんのニュースレター

サイト 瑞原唯子 さん

「東京ラビリンス」第14話・裏取引

「東京ラビリンス」第14話・裏取引
現代ファンタジー小説「東京ラビリンス」
第14話・裏取引

黙認の代わりに協力を。
交わされた裏取引に従い、澪たち怪盗ファントムは、
ある大物政治家の闇献金の証拠を盗み出す。
しかし、そこには信じがたい名前が挙がっていた——。

-------------------
「遅かったな。待ちくたびれたぞ」
 学校から帰るとすぐ、澪と遥は剛三の書斎に呼び出された。てっきり怪盗ファントムの打ち合わせだと思ったのだが、扉を開けると、二人の見知らぬ男性が執務机の前に立っていた。二人とも折り目正しいスーツを身につけており、一人は剛三と同年代、もう一人は悠人と同じくらいの年頃に見える。澪が戸惑いつつも軽く会釈すると、年配の方の男性は、にっこりと人当たりの良い笑みを浮かべた。
「紹介しよう」
 そう言って、剛三は立ち上がった。
「こちらは警察庁長官の楠昭彦さん、そして、警察庁警備局公安課の溝端彰さんだ」
「けっ……?!」
 大声を上げそうになり、澪は慌てて指先で口を押さえる。まさか正体を知られたのだろうか? 逮捕しに来たのだろうか? 橘家も会社も何もかもおしまいなのだろうか? 絶望的な考えが、次々と脳裏を駆け巡っていく。
 その横で、遥は冷静に首をひねった。
「楠って、もしかして……」
「そう、よく気付いたな。さすがは遥」
 剛三は嬉しそうに声を弾ませる。
「楠長官は、悠人の父君だ」
「えっ……ええーーー?!!」
 澪は有らん限りの声を上げてのけぞった。
-------------------

http://celest.serio.jp/celest/novel_tokyo.html