ファンタジー小説「遠くの光に踵を上げて」
番外編・明日に咲く花 - 理由
彼女の配属先は新人としては異例の特別研究チームだった。
ジョシュには立ち入ることさえ許されないところである。
そのためずっと会うことが出来ずにいたが、
ある日、食堂で彼女を見かけ——。
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昼休憩の時間になり、ジョシュはひとりで食堂に向かった。スパゲティとサラダの載ったプレートを持ち、あたりをぐるりと見まわして、残り少ない空席を見つけようとする。同時にユールベルの姿も探すが、それは習慣のようなものであり、もはやほとんど期待はしていなかった。
しかし、その日——ついに見つけた。
一瞬、我が目を疑ったが、見間違いであるはずがない。顔はよく見えないものの、腰近くまである緩いウェーブを描いた金の髪も、後頭部で結ばれた白い包帯も、間違いなく彼女のものである。ジョシュはそのテーブルの前に立つと、少し緊張しながら、窓際にひとりで座っている彼女に声を掛けた。
「ここ、いいか?」
ユールベルは驚いたように顔を上げた。呆然としながらも、小さくこくりと頷く。
ジョシュは冷静を装って席に着いた。
「元気でやってるか?」
「ええ」
「そうか、良かった」
素っ気ないくらいの短い会話を交わすと、ジョシュはフォークを手に取り、黙々とスパゲティを食べ始めた。しかし、半分ほど口にしたところで手を止めると、そっと彼女に目を向けて尋ねる。
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http://celest.serio.jp/celest/novel_kakato.html
番外編・明日に咲く花 - 理由
彼女の配属先は新人としては異例の特別研究チームだった。
ジョシュには立ち入ることさえ許されないところである。
そのためずっと会うことが出来ずにいたが、
ある日、食堂で彼女を見かけ——。
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昼休憩の時間になり、ジョシュはひとりで食堂に向かった。スパゲティとサラダの載ったプレートを持ち、あたりをぐるりと見まわして、残り少ない空席を見つけようとする。同時にユールベルの姿も探すが、それは習慣のようなものであり、もはやほとんど期待はしていなかった。
しかし、その日——ついに見つけた。
一瞬、我が目を疑ったが、見間違いであるはずがない。顔はよく見えないものの、腰近くまである緩いウェーブを描いた金の髪も、後頭部で結ばれた白い包帯も、間違いなく彼女のものである。ジョシュはそのテーブルの前に立つと、少し緊張しながら、窓際にひとりで座っている彼女に声を掛けた。
「ここ、いいか?」
ユールベルは驚いたように顔を上げた。呆然としながらも、小さくこくりと頷く。
ジョシュは冷静を装って席に着いた。
「元気でやってるか?」
「ええ」
「そうか、良かった」
素っ気ないくらいの短い会話を交わすと、ジョシュはフォークを手に取り、黙々とスパゲティを食べ始めた。しかし、半分ほど口にしたところで手を止めると、そっと彼女に目を向けて尋ねる。
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